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乳癌手術前の催眠療法により、痛み、不快感、費用が軽減される

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乳癌手術前の催眠療法により、痛み、不快感、費用が軽減される

Hypnosis Before Breast-Cancer Surgery Reduces Pain, Discomfort, and Cost
(Posted: 09/12/2007) Journal of the National Cancer Institute誌2007年9月5日号によると、乳癌の手術を受ける女性のうち、手術室に入室する前に催眠療法を受けた女性は、受けなかった女性に比べ、手術中の麻酔薬や鎮痛剤の減量、および手術後の痛み、嘔気、倦怠感、不快感などの報告が減少した。


キーワード 乳癌、催眠、支持療法、補完代替医療

要約 
乳癌の手術中の患者で、手術室に入る前に催眠セッションを受けた場合、麻酔薬や鎮痛薬の必要量が少なく、催眠を受けなかった患者に比べて、手術後の痛み、嘔気、疲労感や不快感が少ないという報告があります。手術全体にかかる費用も催眠を受けた患者の場合は、著しく抑えらました。

出典 Journal of the National Cancer Institute誌2007年9月5日号(ジャーナル要旨参照)

背景

診断や治療のための乳癌手術は、痛み、嘔気、疲労感などの副作用を起す可能性があります。鎮痛剤などの既存の薬剤は症状の軽減を助けますが、その薬剤による副作用の可能性がある上に、手術費用を押し上げるかもしれません。

研究者は、薬剤以外で手術の副作用の軽減を助ける方法を発見することに取り組んできました。現在臨床試験が行われている方法の1つは、対象者が提案を積極的に受け入れ、リラクゼ一ションを引き出す催眠療法です。

本臨床試験は、乳癌手術前の短時間催眠セッションが麻酔剤や鎮痛剤の必要性を抑え、術後におこる副作用を軽減するかどうかを検証するために行われました。

臨床試験

ニューヨーク市Mount Sinai Medical Centerの研究者達は、診断のための外科的乳房生検、あるいは乳癌治療のために乳腺腫瘍摘出手術をうける予定になっている200人の患者を登録しました。研究者達は、登録者を無作為に催眠療法群とコントロール(催眠無し)群とに割り付けました。グループ間で2種類の手術を均等に分布させるために、生検を受けることになっている患者は、乳腺腫瘍摘出手術を受けることになっている患者とは別々に無作為化されました。

催眠療法群の患者は手術1時間前に15分間の催眠セッションを受けました。医学的な催眠療法の施行を訓練された心理士は、リラクゼーション、楽しいことを考えること、痛み、嘔気、疲労感の軽減を提案し、同様に術後に自己催眠を指導する処方箋を用いました。コントロール群の患者は、手術中の1時間内の15分間に心理士と話をしたり、精神面でのサポートを受けたりしました。

全ての患者は、手術中にプロポフォールとミダゾラム(麻酔薬)や、フェンタニル、リドカイン(鎮痛薬)の投与を受けました。患者はまた、必要に応じて鎮痛薬の追加投与を受けました。

退院する前に、患者は痛みの強さ、痛みによる不快感、疲労感、嘔気、身体的な不快感、感情の動揺について報告しました。研究者らは、術中および術後の麻酔薬と鎮痛薬の量、手術時間、手術や薬剤の費用、医療関係者が要した時間の結果をまとめました。

患者はどのグループに割り付けられているかがわかっていたので、研究者らは結果のバイアスを避けるために下記のような注意を払いました。

・同じ心理士が両方のグループを担当すること

・催眠セッションと、コントロールのセッションは、グループの割り付けを知らない麻酔医や外科医から離れた個室で行われること

・使用された麻酔薬のデータはコンピュータからのもので、医療関係者の記録からではないこと

・心理士は、術後の患者の報告データを集めないこと。かわりにグループの割り付けを知らない研究アシスタントが、患者に痛みや不快感の有無を確かめること。

結果
手術中にそれぞれの患者に必要な量に調節して投与した結果、催眠療法群の患者のプロポフォールやリドカインの投与量は、コントロール群の患者に比べて著しく減少しました。フェンタニルおよびミダゾラムの投与量については、大きな差はありませんでした。グループ間の術後の鎮痛薬使用量についても差はありませんでしたが、催眠療法群の患者は、コントロール群の患者に比べて、痛みの強さ、痛みによる不快感、嘔気、疲労感、不快感、感情の動揺について著しい軽減がありました。

また、催眠療法群の患者は、コントロール群の患者に比べて、平均10.5分の手術時間の短縮がみられました。研究者らは、なぜこのような結果になったかを言うことはできませんでした。ただこの差は統計的有意であり費用軽減の結果となったと報告をしました。平均して、手術費用は催眠療法群の患者で1人につき約770ドルの削減となりました。

制限事項

本臨床検査の制限事項の1つは、患者は任意で催眠セッションまたはコントロールのセッションのいずれかに参加したため、割り付けがあらかじめわかっていたことです。臨床試験における患者と研究者の双方が最終的なグループの割り付けを知らない場合を二重盲検臨床試験と呼び、結果収集においてバイアスを避ける最良の方法と考えられています。

しかし、本臨床試験の研究者らは、どの患者が催眠を受けたかを知らない医療関係者が結果を集めるということに十分に注意をしました。著者は、事前の注意により研究者や医療関係者がグループの割り付けに気付いていた可能性は非常に少ないと確信しています。

また、この臨床試験での催眠は特別に訓練を受けた心理士が施行したもので、全ての病院でこの治療が受けられるわけではありません。他の医療関係者が同様の催眠セッションを、効果的に習得できるかどうかをもっと研究することが必要です、と著者は語っています。

この臨床試験は、なぜ催眠療法グループが手術時間の短縮につながったのかの明確な答えを出す目的のために計画されていませんでした。「催眠療法群の患者の手術時間短縮は、手術の準備を容易にできたこと、落ち着かせることが出来たこと、あるいは患者への薬剤投与に時間がかからなかったことによって引き起こされた可能があります。」と、著者は述べています。「しかし、これらの要因をまだ調査するまでには至っていません。そのため、これらの可能性は推測の域を出ません。」

コメント

「全体として、この結果は、乳癌の手術後の患者の痛み、嘔気、疲労感、不快感、感情の動揺をコントロールするのに、従来の薬物病理学アプローチによる方法に追加して、この催眠療法による介入が簡易で効果的な手段であることを裏付けるものです。」と、著者はいいます。「現在の簡易催眠による介入は、重い症状とかさむ費用を同時に軽減することのできる数少ない治療的介入です。」

「もし、催眠などの方法を施行することより苦痛を軽減し、また同時に患者の治療にかかる費用を抑えることができれば二重の利点のある方法だと思います。」と語るのは米国国立癌研究所(NCI)、癌細胞生物学部門のプログラムディレクター、Sonia Jakowlew 博士です。「患者を助け、医師も助かるのです。」

催眠療法による介入のどの部分が特に効果的なのかを調査し、苦痛や不快感のコントロールが、長時間効果があるかどうかを調べ、違うタイプの癌や違う地域背景の患者において催眠療法を実施するといった、さらなる研究が必要です、と著者は述べています。「研究者らは、この臨床試験を繰り返し、この知見が一貫したものであるかどうかを観察してみなければなりません。」と、NCIの癌補完代替医学部門ディレクターであるJeffrey White医師は見解を支持しています。

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Sugiura 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修

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