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イブルチニブは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫60歳以下患者の生存を改善

【米国米国国立がん研究所(NCI)プレスリリース】

分子標的薬であるイブルチニブ(販売名:イムブルビカ)を標準的な化学療法レジメンと併用することによって、あるタイプのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の比較的若い患者の生存期間が改善する可能性が、新たなエビデンスによって示唆されている。2021年11月4日にCancer Cell誌に掲載された本結果は、米国国立衛生研究所傘下の米国国立がん研究所(NCI)の研究者が以前実施された第3相臨床試験を新たに解析したものである。

イブルチニブと標準的な化学療法レジメンを組み合わせてもnon-GCB型DLBCLと呼ばれるタイプのDLBCL患者の生存期間は全体的には延びなかったことが、PHOENIX試験という本試験の最初の結果で示されていた。しかし、NCIの研究者と共同研究者が本試験の患者の腫瘍生検サンプルを解析したところ、MCDとN1と呼ばれる特定の遺伝子タイプのnon-GCB型DLBCLの比較的若い患者ではこの治療の組合せに対する反応性が非常に高く、すべての患者が診断から3年後も無病で生存したことが今回示された。

米国国立がん研究所(NCI)がん研究センターのリンパ球系腫瘍部門部長Louis M. Staudt医学博士は「試験は上手くいかなかったとみんな思っていましたが、興味深いことが起こっていました。60歳以下の比較的若い患者だけを見てみると、イブルチニブによる利益は実際にあり、その理由がいまわかりました」と述べた。

non-GCB型DLBCLの比較的若い患者の初回治療として標準的な化学療法にイブルチニブを併用することを医師が考慮すべき根拠をこの新たな解析は示しています」とリンパ球系腫瘍部門の上級研究員で本研究の共著者であるWyndham H. Wilson医学博士は述べた。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は最も一般的なタイプのリンパ腫で、世界中のリンパ腫の症例の40%を占めている。この成長速度の速いがんは血液細胞の一種であるB細胞に起こるものであり、通常はリンパ節で発生し始める。DLBCL患者の通常の治療法は、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、モノクローナル抗体のリツキシマブを含むR-CHOPという化学療法レジメンである。しかし、R-CHOPはすべてのDLBCL患者に有効なわけではない。

イブルチニブはDLBCLの治療として認められた初の分子標的薬である。作用機序は、B細胞の増殖と生存に関与するタンパク質であるブルトン型チロシンキナーゼの活性阻害である。ABC型DLBCLのがん細胞の生存にはこのタンパク質が必要である。DLBCL再発患者を対象として以前実施された第2相臨床試験では、イブルチニブ単剤での治療ではABC型では37%の患者で腫瘍退縮が認められたのに対し、GCB型ではたった5%であった。

その後研究者は、新たにnon-GCB型DLBCLと診断された患者を対象に、イブルチニブをR-CHOP療法と併用する影響を評価するためにPHOENIX試験を開始した。全体的に見ると、イブルチニブをR-CHOP療法と併用しても生存に利益はなかったが、60歳以下の試験参加者に限定して見た場合、利益があることが明らかとなった。60歳超の患者には利益がなかったのは、この組合せに対する忍容性が低いことが多く、治療を早期に中止せざるを得なかったことが理由である可能性が高い。

PHOENIX試験では、non-GCB型DLBCLの比較的若い患者全員にイブルチニブによる利益があったのか、それとも特定の遺伝子タイプの患者により利益があったのかが明らかになっていなかった。この疑問に対する洞察を得るため、研究者は参加者838人中773人の腫瘍サンプルの遺伝子解析を行い、Staudt医師がNCIの同僚であるGeorge Wright博士と開発したLymphGenと呼ばれるアルゴリズムを使用してタイプを決定した。

イブルチニブによる利益のほとんどはABC型DLBCL患者で示され、先行研究と同様であった。ABC型DLBCLは、MCD、N1、BN2、A53の4つの遺伝子タイプに分類できる。60歳以下のMCD型の患者は、イブルチニブとR-CHOPの併用で3年間の無イベント生存率と全生存率が100%であったのに対し、R-CHOP単独では3年間無イベント生存率が48%で3年間全生存率が69.6%であった。N1型の比較的若い患者も、イブルチニブとR-CHOPの併用で3年間の無イベント生存率と全生存率が100%であったのに対し、R-CHOP単独では3年間の無イベント生存率と全生存率が50%であった。

BN2という遺伝子タイプの比較的若い患者では、イブルチニブの併用による利益は認められなかった。しかし、このタイプではR-CHOP単独で全生存率が82%とすでに高かった。

MCD型とN1型のDLBCLで奏効率が非常に高かったのに加え、その他のnon-GCB型DLBCLの比較的若い患者の一部にもイブルチニブによる利益があった。技術的な問題で本研究では特定できなかったA53型がこのカテゴリーに分類されるかを決定するにはさらなる研究が必要である。

市販の試験ではMCDとN1型を特定できないが、non-GCB型DLBCLは普段から特定されているとStaudt医師は指摘した。

「長年の間、これらの患者には化学療法とリツキシマブしか提案できなかったが、イブルチニブと現在の治療法の併用によって比較的若い患者がこの悪性度の高いがんから生き延びる可能性を高められるかもしれないという希望が今はあります」とStaudt医師は述べた。

本研究はNIHとNCIの内部研究プログラムによる支援を受けた。Janssen Research and Development, LLC社がPHOENIX試験の治験依頼者であった。

翻訳錦織大介

監修吉原哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

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