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放射線療法によって小細胞肺癌患者(SCLC)の脳転移が予防可能である

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放射線療法によって小細胞肺癌患者(SCLC)の脳転移が予防可能である

Radiotherapy Can Prevent Spread of Small-Cell Lung Cancer to the Brain
(Posted: 06/20/2007 Reviewed:08/21/2007) シカゴで行われた2007年ASCO年次総会での報告によると、化学療法に奏効した進行小細胞肺癌(SCLC)患者に、頭部への放射線照射を行うことで、腫瘍の脳転移リスクが約3分の2に低下した。


要約
化学療法に奏効した進行性小細胞肺癌(SCLC)患者に、頭部への放射線照射を行うことで、腫瘍の脳転移リスクが約3分の2に低下し、患者の生存を伸ばすこととなります。これらの知見によって、この患者群の治療基準が変わることでしょう。

出典 2007年6月2日にシカゴで開催されたASCO(米国癌治療学会)年次総会(ASCO)(会議抄録参照

背景
肺癌は男女共に、癌死因の第1位です。アメリカ合衆国では、小細胞肺癌(SCLC)が肺癌の15%を占めています。小細胞肺癌は成長が速く、身体のいたるところに広範囲に転移する傾向があります。診断の時点で、小細胞肺癌(SCLS)の約3分の2の患者は胸腔を超えて転移しています。

小細胞肺癌が脳に拡がる、すなわち脳転移がよく認められます。患者の20%が診断の段階で脳へ癌が転移しており、2年後には50%あまりの患者で脳転移がみられます。現在有効な治療で、脳転移を有する小細胞肺癌(SCLC)患者の生存期間の中央値は、6ヶ月から1年です。

1990年初期に発行された研究によると、頭部に対する放射線療法(予防的全脳照射、PCI) は癌が脳転移する危険性を軽減し、化学療法によって癌が消滅した初期段階の小細胞肺癌(SCLC)患者の生存率を改善しました。しかし、進行性小細胞肺癌の患者には、PCIは行われていません。

試験
2001年5月に開始した試験では286名の小細胞肺癌(SCLS)患者が参加しました。参加した患者全員はすでに化学療法での治療を受けていました。化学療法に奏効し、癌は縮小しましたが、75%の患者は依然として肺に癌があり、70%の患者では脳転移はまだ起きていませんでしたが、他の臓器へは癌が転移していました。

患者は無作為にPCI治療と追加治療なし(対照群)に割り当てられました。PCI群に割り当てられた患者は、発現した脳転移治療に使用される量と同程度の放射線量で治療を受けました。

試験責任医師はオランダのアムステルダムのVU大学医療センターのBen Slotman医学博士(試験プロトコル要旨参照

結果
1年後、PCI治療を受けた患者のうち、対照群の40.4%と比較して、14.6%が脳転移の徴候を発現しました。さらに、対照群の13.3%と比較してPCI群は27.1%の患者が1年後も生存していました。

PCIは頭痛、嘔気、嘔吐、だるさなどを含む、いくつかの副作用を起こしましたが、大半の有害事象は軽度でした。生活の質はPCI群、対象群共に同等でした。PCIは患者の認識能力(考えて判断する能力)に悪影響を及ぼしたのは10%以下であった、とデトロイトにあるウェイン州立大学カーマノス癌研究所のAndrew T. Turrisi医師がASCO会議のディスカッションで言及しました。

コメント
この試験結果によると、化学療法に奏効した進行性小細胞患者はPCI治療を通常的に提案されるべきである、とASCOの記者会見でSlotman試験責任医師は結論付けました。

試験の知見は恐らく「すぐ」に進行性小細胞肺癌患者の治療基準を変えるであろう、と記者会見の司会を行ったヒューストのテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのRoy L. Herbst医学博士は付け加えました。

NCIの癌治療評価プログラム(Cancer Therapy Evaluation Program)のJanet E. Dancey医師は同意しました。「PCIの効果は非常に大きい。」と、Dancey医師は述べました。「比較的わずかの副作用しか認められておらず、これらの副作用は治療管理が可能で、患者の生活の質に明らかな影響を与えていない。」

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下和田 篤子 訳
平 栄 監修(放射線腫瘍医)

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