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がんに関するソーシャルメディア上の誤情報への対応

あなたやあなたの大切な人が、がんと診断されました。医師との面談を終え、頭が混乱しています。あなたは参ってしまい、怯えています。

近頃多くの人がするように、あなたもインターネットやソーシャルメディアで情報を得ようとします。科学的に聞こえる記事や、新たな希望をもたらす「医学専門家」による動画を紹介してくれる人もいます。それらはおそらく「すべてが自然で」不快あるいは深刻な副作用のない治療法について説明しているのでしょう。

そのような情報は真実ではないのに、耳障りが良いかもしれませんが、サイトには奇跡的な結果について述べた患者やその家族の体験談が掲載されています。

このような状況はよくあることだと、腫瘍専門医、ヘルスコミュニケーションの専門家、NCIの無料がん情報サービス(CIS)への質問に答える情報専門家は言っています。

「人々は古来より不正確な健康情報を共有してきました」とNCIのヘルスコミュニケーション情報研究部門(HCIRB)のWen-Ying Sylvia Chou医学博士/公衆衛生学修士は述べています。しかし、インターネットやソーシャルメディアの普及により、健康に関する誤った情報を共有したり広めることがはるかに容易になったと同氏は述べています。

実際、最近の研究では、最もよくみられる4種のがんに関して2018年と2019年にソーシャルメディアに投稿され閲覧数が特に多かった記事の3つに1つは誤った、不正確な、または誤解を招くような情報を含んでいたことが明らかになりました。そしてがんに関する誤った情報のほとんどは有害である可能性があります。例えば、立証されていない治療法が、厳密な研究では有益であることが明らかになっている治療法の代わりとして宣伝されていると、新たな研究を主導したハンツマンがん研究所のSkyler Johnson医師は述べています。

さらにJohnson医師のチームは、人々は事実に基づいた情報よりも誤った情報に魅了されやすいことを明らかにしました。2019年にYouTube上の前立腺がんに関する情報を調査したところ、同様の結論が得られました。

「YouTubeに掲載されているコンテンツのかなりの割合で偏った、あるいは誤った情報が含まれている可能性があります」とし、それらの動画は、正確な情報を含む動画よりも再生回数や「いいね」数が多かったと、この研究を主導したニューヨーク大学医学部のStacy Loeb医師は述べています。

例えばある人気動画では、がんを治療するためにハーブを前立腺に注入することを推奨していましたが、これは立証されておらず危険をはらんでいます。ごく最近ではTikTokやInstagramで、前立腺がんに関する同様の誤解を招く情報が、Loeb医師が主導した他の研究によってみつかりました。

「がんに関する誤った情報がソーシャルネットワーク上で蔓延していることは明らかです」とLoeb医師は続けました。医療行為の決定や人々の健康において、オンライン上の誤情報が及ぼす影響のさらなる研究が必要であると加えました。また、この問題に対処するための効果的な戦略が必要であると強調しました。

この問題の解決策は簡単ではありません。しかし、何人かの腫瘍内科医やヘルスコミュニケーションの専門家によると、医療従事者は、連絡手段を開かれたものにし、偏見を持たずに患者の話を聞き、パートナーとしてがんの検診や治療について患者とともに考え、さらなる情報を得るために推奨される情報源を提供することで支援ができるといいます。

誤情報がもたらす潜在的な害

がんに関する誤情報、とりわけ立証されていない治療法の宣伝がためにならないという証言が増加しています。

例えばJohnson医師らが2017年に発表した研究では、従来のがん治療の代わりに代替療法や補完療法を利用したがん患者は、従来のがん治療を受けた人よりも死亡するリスクが高いことが明らかとなりました。

しかし本研究では、人々がそれらの治療法を利用するかを決める際にソーシャルメディアが役割を果たしているかどうかについては特に調査を行いませんでした。

そこでJohnson医師のチームは新たな研究において、乳がん、前立腺がん、大腸がん、肺がんに関する記事のうち、ソーシャルメディアで特によく読まれている200件を調査しました。調査対象となったのは各がん種につき50件の記事で、伝統的非伝統的双方のニュースメディア、個人のブログ、クラウドファンディングサイトから集まったもので、Facebook、Reddit、Twitter、Pinterestなどで共有されました。

各がん種の専門家2名が、各分野の論文のレビューを行いました。その結果、誤情報を含む記事の77%が、「おそらく」または「確実に」有害な情報を含んでいると判断されました。潜在的な有害性としては、提案された治療法の危険な作用、治療可能または治癒可能な状態に対し医療機関の受診が遅れるもしくは受診しないこと、無駄な出費などの経済的被害が挙げられました。

例えば、「大麻オイルを摂取すると、転移した肺がんや進行した乳がんが治る」というような、潜在的に有害な誤情報が一般的に共有されています。

「本研究は、専門家の独立調査委員会を利用して、不正確または虚偽の情報の程度や被害を引き起こす可能性を定量化しようとしたため注目に値する」とChou医師は述べています。「ソーシャルメディア上でがんに関する誤情報に触れることは心配の種であり、より詳細に調査する必要があることを示唆している」と続けています。

例えば、家族歴があるためにがんのリスクが高まっている人は、侵襲性の強いがんの治療を積極に受けている人とは違い、健康に関するメッセージを異なった目線で読み取る可能性があります。「個人のがんの状況によって、誤情報を含む特定のメッセージが心に響きやすいかそうでないか」を判断するために、さまざまな集団を調査することが重要であると、HCIRBの責任者であるRobin Vanderpool医師、医学博士は述べています。

専門家ではない人々がソーシャルメディア上の特定の主張をどう評価するかをみることも重要である、と同氏は述べています。また動画や声のトーン、さらには画像の配色なども、人々の情報処理方法に強い影響を与える可能性があると指摘しています。

「われわれは現在、誤情報や被害を予測する記事の特徴を特定するために、その記事の発生場所、執筆者、また主張のタイプなど、深く掘り下げて研究しています」とJohnson医師は述べました。同氏のチームはまた、がん患者が記事の内容の正否をどう判断しているのか調査し、また誤情報の影響を受けやすい集団を特定するための追跡調査も行っています。

最終的には「患者が遭遇した誤情報を克服する手助けするための」方法を開発したいと述べました。

共感と敬意をもって患者の話を聞く

がんを診断、治療する医師は、長い間誤情報と向き合ってきました。誤った情報によって、患者が疑念やためらいを持ったり、立証済みの治療法を怖がる場合があると、乳がんの治療を専門とするスタンフォード大学の腫瘍内科医であるLidia Schapira医師は述べています。このような状況では、共感と敬意をもって人々の懸念に耳を傾けることが重要であると彼女は強調しています。

Schapira医師は、まず「質問をし、話を聞き、判断を下さない」ことから始めます。そこから交渉の機会をみつけようとします。「例えば、私なら患者にそのような治療を受けた場合と受けなかった場合の結果を想像してもらい、治癒の達成、生活の質の向上といった目的や共通基盤とのずれが生じないようにします」。

このような会話は、「すべてが目的を目指したものであり、目的とは患者にとって最善のものです」と彼女は続けました。そして、多くの場合、複数にわたる会話の場が必要になると述べました。

放射線腫瘍医のJohnson医師は、患者がソーシャルメディアで目にした可能性のあるがん情報について、医師に相談するよう勧めています。医師は、「誤情報が出回っていることを認識し、患者は誤情報について医療従事者と気軽に話し合うよう教えなければなりません」と述べました。

「ソーシャルメディアでみたことについてオープンに話し合い、その場合は何が推奨されるか、根拠に基づくがん情報を共有することが非常に重要です」とLoeb医師は同意しました。

NCIや米国臨床腫瘍学会のような組織は、患者やその家族のために専門家がレビューしたがんに関する情報を提供しています。科学的根拠に基づく信頼できる情報源としての役割を果たすことで、誤情報に向き合うことができるとSchapira医師は述べました。また、多くの患者支援団体もまた、専門家のレビューを受けた信頼できるがん情報を提供しているといいます。

「誤った情報ではなく優良な情報を提供しそれにアクセスさせることの主な利点の一つは、患者とその家族が医師とより有益な話し合いをするための力を得ることである」とSchapira医師は指摘しました。

医師と患者が協力してがん治療を決定することが理想的であるとLoeb医師は述べています。

これには、「所定の手順や治療法に対する利点、リスク、代替案を話し合うことに加え、患者の希望を考察すること」が含まれていると彼女は述べた。共有された意思決定として知られるこのようなアプローチは、「複数の選択肢があり、何が最良の選択肢かわからない場合」に特に重要であるとLoeb医師は指摘しました。

情報の評価の手助けをする

国民にがんに関する情報を提供している人々は、このようなテーマの多くに共感しました。

「標準的な治療法以外の選択肢を探している進行したがん患者から多くの質問を受けます」とがん情報サービスの管理専門家であるLaura Rankin氏は述べました。彼らはハーブ療法や高用量のビタミン剤など、立証されていない治療法をインターネットで読んだり、友人や親戚から聞いたのかも知れません。

「彼らは、これらの治療法が確実にがんを治療する方法だと考えています。また質問に関することが、有効性が立証されておらず、ためにならない可能性もあることを理解していません」とRankin氏は述べました。

CISの重要な目標の1つは、「オンラインで見つけた情報が信頼できるものか評価する方法を人々に理解してもらうこと」だと、元がん専門看護師でCISの監督の助手であるDeborah Pearson氏は述べた。CISが開発に協力したNCIのウェブサイトの「信頼できるリソースの使用」ページは、「人々がより多くの情報を得て情報を消費できるよう、多くの基準を提供しています」とRankin氏は述べました。

CISに問い合わせがあった場合、「われわれはその人の出身がどこで、何に突き動かされているのかを理解しようとします」特に治療の選択肢が限られている場合は、「絶望的で弱気になっているかもしれません」とPearson 氏は述べました

CISの職員は、情報を提供するだけでなく、主治医とどう話せばよいかを考える手助けもします。

「腫瘍内科医が多忙な場合、看護師やかかりつけ医に相談できるかどうかを尋ねます」とCISの上席であるLauren Tarry氏は述べました。「栄養補助食品の中には、患者の治療と相互作用するものもあるので、何かを摂取する前には必ず主治医に相談することが大切です」と同氏は述べました。

「信頼できる医療従事者を持つことは重要です」とPearson氏は述べました。

ソーシャルメディアを上手に使う

ソーシャルメディアは、がんの誤情報を解決する手段の一つにもなり得るとLoeb医師は述べました。

「医師や他の専門家が、根拠に基づいた健康情報を共有するためにオンラインで積極的に活動し、最新の科学的知見がこれらの大きなネットワークを通じて国民に届くようにすることが重要です」と彼女は述べました。

Loeb医師はツイッターで活動しており、また職能団体や財団と協力し、患者向けのソーシャルメディアコンテンツの優先順位付け、計画、レビューを行っていました。同氏は、前立腺がん財団と共同で、ツイッターを使ったジャーナルクラブを立ち上げました。ハッシュタグは「#ProstateJC」で、その分野の新しい研究について科学者が議論する場となっています。

そしてそれは、「患者や一般国民だけでなく、幅広い専門知識を持つ国際的な専門家にも開かれた、新たな研究に関する科学的な議論を発展させるのに役立っています」と述べました。

さらに「主要な医学会議のすべてに、現在ソーシャルメディアで専用のハッシュタグが付けられています。これは、患者や国民が、最新の研究内容を追跡するのに最適な方法です」とLoeb医師は指摘しました。

また、医学会や学術誌、およびNCIのような組織もソーシャルメディアで活動しており、信頼できる情報源となっています。

研究と行動のための機会

COVID-19などその他健康の話題に関する誤情報は言うまでもなく、ソーシャルメディアとがんの誤情報については多くの疑問が残っています。

例えば、「がん治療を受けないまたは終了していな両親が、子どものヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチン接種を見あわせる、がん検診を受けないなど、ソーシャルメディアを通じたがんの誤情報が健康に与える影響についても、さらに多くの研究が必要です」とVanderpool医師は述べました。

ソーシャルメディア上の誤情報の起源と、それを共有する理由を知ることは、誤情報の拡散を抑制するためにも重要であるとChou医師は述べました。例えば「利益目的だったり混乱を引き起こそうとしているグループがいるのではないか 」と。

オンラインで健康情報にアクセスできることは重要であり、患者が治療に積極的に取り組むための力となる、と専門家らは同意しました。しかし、あまりにも多くの情報がオンラインで入手できるようになったため、何が本当か嘘かを判断する負担が消費者個人にさらにのしかかっている、とChou医師は述べています。さらに、「ソーシャルメディアのプラットフォームが開発、普及させているアルゴリズムは、各々がソーシャルメディア上で目にしそうな情報に影響を与えています」と同氏は指摘しました。

「われわれは、複数の方法、複数の段階での誤情報と戦う必要があります」とChou氏は続けます。

医療従事者、研究機関、医療機関、政府機関、テクノロジー企業、ソーシャルメディア企業など、すべての人が責任を持ち、この問題に対処する役割を果たす必要があると同氏は述べています。また、個人がより批判的に情報を処理する手助けをするために、「われわれは幼稚園から大学までのカリキュラムの中で、教育とヘルスリテラシーの機会について考える必要があります」と述べました。

「われわれは誰かに良い情報を与えればそれが助けになり、状況が改善すると思い込んでいます。しかしわれわれは非常に騒がしい環境で生活していることを認識する必要があります」同氏は続けました。「すでに歯止めは外れているので、われわれはそれに対処しなければなりません」。

翻訳原 久美子

監修勝俣範之(腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)

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