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FDAがアテゾリズマブを非小細胞肺がんの術後免疫療法として初承認

  • 2021年11月13日
  • 発信元:米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

米国食品医薬品局(FDA)は、免疫療法薬アテゾリズマブ (テセントリク)を、非小細胞肺がん(NSCLC)患者の一部に対する手術および化学療法後の追加(術後)治療として承認した。

この承認は、免疫療法が肺がん患者の術後療法として認められた最初のケースである。

10月15日に承認されたのは、ステージII~IIIAのNSCLCで、がんが「局所的」、すなわち腫瘍の周辺のみに転移している患者が対象である。さらに、患者の腫瘍細胞においてPD-L1というタンパク質の発現率が1%以上であることを条件とし、FDAが承認した検査で判定される。FDAは、アテゾリズマブによる術後治療の候補となる患者を特定するコンパニオン診断検査としてベンタナPD-L1(AP263)も承認した。

この承認は、手術で腫瘍を摘出した1,000人以上のNSCLC患者を対象としたIMpower010臨床試験の結果に基づいている。本試験では、患者全員が術後化学療法を受けた後、アテゾリズマブ投与群と最良の支持療法群に無作為に割り付けられた。

アテゾリズマブ投与群では、支持療法群に比べて、死亡、がんの再発、新たな肺がんの発生のない期間(無病生存期間)が約7カ月長かった

この傾向は、腫瘍のPD-L1レベルが上昇していた患者でより顕著であった、と研究者らは9月20日付の Lancet誌で報告した。PD-L1は、アテゾリズマブを含む免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる免疫療法薬の使用の指針となるバイオマーカーで、最も広く用いられている。

本研究の著者らは、早期NSCLC患者の一部に対して、手術および術後化学療法の後にアテゾリズマブを投与することが「有望な治療選択肢」であると述べている。

本研究を主導したバルセロナのVall d’Hebron 大学病院のEnriqueta Felip医学博士は、「本研究は、早期NSCLC患者に対する免疫療法の有用性を示した最初の第3相臨床試験です」と述べている。

本試験は、アテゾリズマブのメーカーであるホフマン・ラ・ロシュ社の資金提供を受けた。

マウントサイナイのティッシュがん研究所胸部腫瘍センター長であるFred Hirsch医学博士は、「このすばらしい試験は、早期肺がん患者に術後化学療法を行った後に術後免疫療法を行うことの意義を明確に示しています」と述べている。

FDAの承認が発表される前のインタビューで、本研究には関与していないHirsch博士は、「今回の知見が迅速に臨床現場に変化をもたらすことを断言しておきます」と付け加えた。

肺がんにおける「重要な一歩」

患者は、手術などの一次治療後にがんが再発するリスクを減らすため、術後治療を受ける。術後治療には、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、標的療法などがある。例えば、早期NSCLC患者の多くは、手術後に術後化学療法を受ける。しかし、多くの患者は、最終的にがんを再発している。

IMpower 010試験は、手術後のNSCLCに対する術後治療として免疫チェックポイント阻害剤を評価するいくつかの第3相臨床試験のうちの1つである。NCIが資金提供しているALCHEMIST試験(ANVILとも呼ばれる)ではニボルマブ(オプジーボ)の術後療法、PEARLS試験ではペンブロリズマブ(キイトルーダ)の術後療法が評価されている。

IMpower010試験は、これらの試験の中で最初に結果が報告されたものであり、「重要な一歩です」と、マサチューセッツ総合病院のJustin Gainor医師はFDAの承認が発表される前にLancet誌に掲載された論説で述べている。

アテゾリズマブをはじめとするいくつかの免疫チェックポイント阻害剤は、すでに転移性NSCLC患者の初期治療薬として承認されている

IMpower010試験の結果

IMpower010試験の参加者は、ステージIB~IIIAの肺がんであった。しかし、FDA承認の根拠となったLancet誌で報告されたデータでは、主にステージII~IIIAの患者に焦点を当てている。

これらの患者は、腫瘍が局所的に転移しているだけで、体内の遠隔部位には転移していない。例えばステージIIIAでは、原発腫瘍と同じ側の胸部のリンパ節に転移している。

本試験では、ほとんどの患者が予定通り標準的な術後化学療法を受けた。その後、アテゾリズマブ投与群に割り付けられた患者は、3週間ごとに最大1年間、アテゾリズマブを投与された。

中央値で約3年間の追跡調査の結果、アテゾリズマブ投与群では、最良の支持療法群よりも多くの患者が生存しており、がんの再発や新たな原発性NSCLCの発症が認められなかった。

免疫療法による3年無病生存率は、腫瘍細胞におけるPD-L1発現率が1%以上の患者だけを対象とした場合、さらに高くなった。これは免疫チェックポイント阻害剤に関する他の多くの研究とも一致しており、腫瘍細胞においてPD-L1を発現している進行がん患者では、PD-L1を発現していない患者よりも治療効果が高い傾向にあることを示している。

PD-L1の発現レベルに関係なく、ステージII~IIIAのすべての患者をまとめて検討したところ、無病生存期間の中央値は、アテゾリズマブ投与群で42.3カ月、支持療法群で35.3カ月となり、無病生存イベント(がんの再発や新たな原発性肺がんの発見など)のリスクが21%減少した。

腫瘍細胞におけるPD-L1発現率が1%以上の患者(本試験全体では患者の半数を若干上回る)については、無病生存期間の中央値が、支持療法群では35.3カ月だったが、アテゾリズマブ投与群では、がんが悪化した患者が少なすぎたため、まだ到達していない。これは、無病生存イベントのリスクが34%減少したことを意味している。

また、腫瘍細胞においてPD-L1発現率が50%以上の患者について特に調べたところ、このような患者でアテゾリズマブの効果が最も大きくなることがわかった。このグループでは、アテゾリズマブ 投与群で無病生存イベントが発生する可能性が60%近く低くなった。

肺がんの術後化学療法や手術の後にアテゾリズマブを使用することで患者の生存が延長されるかどうかを示すには、より長期の追跡調査が必要であると、研究者らは述べている。

本試験では、アテゾリズマブのこれまで知られていなかった副作用は発見されなかった。最も多くみられたアテゾリズマブ関連の副作用は、甲状腺機能低下症、皮膚のかゆみ、発疹などであった。

全体として、アテゾリズマブ投与群で報告された副作用の件数は、他の群よりも多かった。アテゾリズマブ投与群の患者の約18%が副作用のために服用を中止し、8人の患者が治療が原因で死亡したと報告されている。

新たな治療法の確立に向けて

アテゾリズマブの術後治療は、適切なNSCLC患者に対する新たな標準治療となるべきであるとGainor医師は論説で述べている。IMpower010試験の限界として、アテゾリズマブの術後療法を受けていない患者よりも生存を延長されるかどうかはまだ判断できないと指摘した。

しかし、NSCLC患者を対象とした他の研究では、疾患の制御を延長することは 「臨床的に意味がある」ことが示唆されていると続けた。このような知見とIMpower010の結果は、適切なNSCLC患者にアテゾリズマブの術後療法を使用することを支持するものであると結論付けた。

ジョージタウン・ロンバルディ総合がんセンターの胸部腫瘍科長であるStephen Liu医師も同意見で、この研究結果は 「臨床現場に変化をもたらす」とTwitterに、先月投稿した。

しかし、Liu医師は、どのような患者が術後免疫療法から最も恩恵を受ける可能性があるのかを明らかにするには、さらなる研究が必要であると強調した。

Hirsch博士は、これまでのデータから、腫瘍が高レベルのPD-L1を発現している患者に最も効果的であることが示唆されていると指摘している。

「IMpower010試験は、肺がんの術後治療に免疫療法を用いる道筋をつけるものです」とHirsch博士は述べている。

翻訳会津麻美

監修川上正敬(肺癌・分子生物学/東京大学医学部附属病院 呼吸器内科)

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