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2010/09/21号◆特集記事「標準的化学療法を受ける小児の心臓を保護する薬」

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2010/09/21号◆特集記事「標準的化学療法を受ける小児の心臓を保護する薬」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年9月21日号(Volume 7 / Number 18)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

標準的化学療法を受ける小児の心臓を保護する薬

ドキソルビシンなどのアントラサイクリン系抗癌剤により生じる酸化性障害から心筋細胞を保護する薬Dexrazoxane(デクスラゾキサン)が、ハイリスクの急性リンパ性白血病(ALL)の治療を受ける小児において、長期心筋毒性の発生率を有意に減少させた。

重要なことに、doxrazoxaneはアントラサイクリン系化学療法の有効性を減弱しなかった。本試験の小児における再発および二次癌の発症リスクは、この保護薬の服用の有無に関わらず同程度であった。NCIの癌生存者オフィスから一部支援を受けた本試験の結果は9月16日、Lancet Oncology誌電子版に掲載された。

「私たちの目標は、小児癌における治療の成功を定義するパラダイムを変えていくことでした」と試験責任医師で、マイアミ大学ミラー医学部 (Leonard M. Miller School of Medicine)のDr. Steven Lipshultz氏は述べた。「最大限まで高めたい腫瘍学的効果と、最小限にとどめたい毒性や晩期性副作用とのバランスをとる必要があります」。

米国では、癌の治療中の小児の半数以上が、癌の種類によらずアントラサイクリン系薬剤を含む化学療法を受けている。「第一世代の小児癌生存者から学んだのは、統計学的に有意な数の子供たちが、治療による晩期性副作用を発生していることです。そのうち最も頻度が高くみられるものが心臓への障害で、経時的に進行します」とLipshultz氏は説明した。アントラサイクリン系薬剤で治療を受けた小児は、この薬剤治療を受けなかった小児と比べ、治療から30年が経過した時点での心疾患による死亡リスクは3倍以上となる。

Dexrazoxaneが晩期性心障害の発生を軽減するのに役立つことを検証するため、Lipshultz氏らは、Dr. Stephen Sallan氏が率いるダナファーバー癌研究所の小児ALLコンソーシアムと共同で、1996年から2000年まで、205人のハイリスクALLの小児をランダム化試験の対象とした。米国、カナダ、そしてプエルトリコの9つの病院から選ばれた小児患者は高容量のドキソルビシン(体表面積m2あたり300mg)による単独投与か、dexrazoxane投与後のドキソルビシン併用療法かのどちらかを10回受けた。

治療の後、研究者らは小児患者を追跡し、心エコーを用いて心臓の構造と機能を計測し、同じ病院の健康な児285人から得たデータに基づき、年齢別予測値と比較した。結果を記録する医師らには、試験が発表された時点で15年が経過した追跡調査の間、受け持った小児患者がどの治療を割り当てられたかについて知らされないままであった。

ドキソルビシンの単剤治療を受けた66人と、ドキソルビシンとdexrazoxaneの併用治療を受けた68人の小児患者は、治療後少なくとも1回の心エコー検査を受けた。5年の追跡調査の結果、ドキソルビシン単剤治療を受けた子供では、対照群の健康な小児のデータと比較し、いくつかの心機能の計測値において明らかに異常が認められた。一方で、dexrazoxaneとの併用治療を受けた小児患者では健康な小児との間に有意差は認められなかった。

性別で解析した場合、この保護効果が観察されたのは女児においてのみである。しかしNCI小児癌支部長であるDr. Crystal Mackall氏は説明した。「この試験は大規模試験ではなかったために、保護効果に僅差があったとしても検出できるほどの力はありません。障害が取り立てて大きくなかったために、この試験では男児におけるdexrazoxaneの保護効果は見逃された可能性があります」。以前の試験では、女性の心臓は男性よりもアントラサイクリンによる障害を受けやすい可能性が示唆されている。

この試験は単一疾患において一つの治療プロトコルを使用した小規模なものだったため、研究者らは今後の共同研究における課題を探索する試みを始めており、その中にはあらかじめ予定された臨床経過の長期観察が含まれていると、Lipshulz氏は述べた。

現在進んでいる試験でのさらに長期の追跡調査により、心臓の構造に対する無症候性障害の予防が、臨床的な心機能障害の予防につながるのかを確かめる必要があるとNCIの癌治療評価プログラムの小児癌専門医であるDr. Malcolm Smith氏は述べた。

現在のところMackall氏はこの試験を高く評価している。「私たちはdexrazoxaneが心臓を短期的には保護することは知っていました。NCIでは現在まで20年に渡り同剤を使用してきましたが、長期的に心臓を保護することができるのかを示したランダム化試験は今までありませんでした」とMackall氏は述べた。「Dexrazoxaneについて、腫瘍学界は、治療の効果を減らす可能性や、二次性癌などの懸念を抱いてきました。しかし、今回の試験ではこれらの問題は起きていません」と同氏は続けた。「これは心臓を保護することが腫瘍を保護することにはならないという、もう一つのエビデンスです」。

—Sharon Reynolds

本トピックに関する詳細は、「心臓:癌標的治療の予期せぬ犠牲」および「癌治療による心機能障害の予測に役立つタンパク質」を参照ください。

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岡田 章代 訳
井上 進常(小児腫瘍科/首都医校教員)監修

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