2010/10/05号◆クローズアップ「免疫系により小児癌を攻撃」 | 海外がん医療情報リファレンス

2010/10/05号◆クローズアップ「免疫系により小児癌を攻撃」

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2010/10/05号◆クローズアップ「免疫系により小児癌を攻撃」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年10月5日号(Volume 7 / Number 19)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ クローズアップ ◇◆◇

免疫系により小児癌を攻撃


2009年春に神経芽細胞腫の患児のためのランダム化臨床試験を率いていたDr. Alice Yu氏は、試験のモニタリングを行っていた統計学者から電話を受けた。試験では患者の免疫細胞を刺激して癌細胞を攻撃させる実験的治療について検討していた。この治療法はYu氏が開発して、カリフォルニア大学サンディエゴ医療センターで20年以上にわたり推進し続けている手法である。

「電話は吉報か、行き詰まりかのいずれかであることを知っていました」とYu氏は回想する—電話は吉報であった。中間解析は明らかな有用性を示していた。2年後に生存して病気が現れていなかったのは、免疫療法と標準治療を受けた患者で66%であったのに対し、標準治療のみの患者は46%であった。

この知見New England Journal of Medicine(NEJM)誌9月30日号で報告され、研究者らは、新たに神経芽細胞腫と診断され、再発リスクが高く、初期の標準治療に反応した小児で免疫療法がその生存率を改善する、と結論づけた。

神経芽細胞腫は生後1年以内に診断される癌のなかで最も頻度が高い癌である。この病気は交感神経系の発生中の細胞内で生じ、首、胸、腹の腫瘍に至ることが多く、高リスク患者では診断時に転移を伴うこともある。米国では毎年約700人が新しく神経芽細胞腫と診断され、ほぼ半数の患者は高リスク型で、治癒の可能性は30%度である(中〜低リスクの患者では50〜90%)。

「この臨床試験はこの恐ろしい病気に対する大きな進歩となりました」と、小児腫瘍グループ(COG:臨床試験協同団体)の同僚らと226人の患者の試験を実施したYu氏は述べた。昨年の中間解析の後、研究者らはランダム化を中止して、すべての適格患者に免疫療法が行われるようにした。

アイデアの検証

1980年代後半にYu氏が概念の検証を開始して以来、変更を加えつつ多くの免疫療法が検討されてきた。現在の治療ではch14.18と呼ばれるモノクローナル抗体を使用するが、これが神経芽細胞腫細胞表面のGD2という脂質に結合する。この方法により免疫細胞が癌を攻撃できるようになる。

免疫療法を受けた小児は既に化学療法、放射線治療、幹細胞移植による初期治療に反応していた。癌細胞の死滅作用を増強するために、研究者らは抗体を2つの免疫刺激剤サイトカインGM-CSFとインターロイキン2(IL-2)と共に投与した。

「治療により最大の抗腫瘍効果を得るために、癌細胞を殺すことができる免疫細胞をできるだけ多く活性化させたいと思いました」と共著者であるDr. Paul Sondel氏(ウィスコンシン大学マディソン校)は述べた。「免疫療法は明らかな利益を提供しますが、これはまだ完全な解決法ではありません。治療に適格な患児の40%が再発して死亡していますので、さらに改善しなければなりません」。

なぜ一部の患児が2年以内に再発し、他の患児再発しないのかを解明するために、研究者らは患者の腫瘍と免疫応答について研究し、反応の生物学的マーカーと治療をより効果的にする解決法を見つけたいと願っている。

もう一つの課題は、抗体やサイトカインにより引き起こされる痛みなど、免疫療法の副作用を軽減することである。「副作用は強いのですが、われわれは痛みに対処する方法を習得しましたので、激しい痛みを伴わずに安全に治療をすることができます」とYu氏は述べ、より毒性の低い免疫療法を開発中であると指摘した。

継続と協力による成果


Ch14.18抗体は今な神経芽細胞腫の治療薬として開発中であるという事実は、Yu氏とCOG臨床試験団体の研究者らとの継続と協力の証である。初期の臨床試験のために抗体を製造していた小さい製薬会社は2回も大会社に買収され、2回目には抗体の製造が中止された。

転機は、Yu氏がワシントンD.C.に飛んだ1996年に訪れた。この時、旅行カバンには初期の臨床試験の患者から得たX線写真と病理プレパラートが詰まっていた。専門家委員会はこの証拠を検討し、抗体を用いる免疫療法の開発の継続をNCIが支援するように勧告した。

「わたしは委員会の決定にとても感謝しています。なぜなら、そうでなければこの抗体は死んでしまっていたでしょう」とYu氏は述べた。COG臨床試験団体の第3相臨床試験のためにどの製薬会社もch14.18を製造しようとしなかったとき、NCIが試験のためにこの薬剤の製造を開始したのである。

「この試験の成功の大半は、基礎を築き、サイトカインの併用により抗体の効果をより強くできることを示したYu氏やSondel氏ら研究者の功績です」と、NCIの癌治療評価プログラム(CTEP)のDr. Malcolm Smith氏は述べた。

この抗体の歴史も小児癌などまれな疾患に対して、より効果的な治療法を開発するうえでNCIが果たすことができる独自の役割を示していると、Smith氏は付け加えた。NCIは発見段階から治療の有効性を証明する第3相試験まで研究を支援し、その後、治療に適格な患者すべてに十分いきわたるように抗体の製造を増やしたと彼は述べる。

シルバースプリング(メリーランド州)に拠点を置くUnited Therapeutics社がch14.18の製造を引き継ぎ、神経芽細胞腫の高リスク患者の治療に使用するためにFDAの承認獲得の責任を担う予定である。

成功までの25年

Dr. Ralph A. Reisfeld氏は1985年に免疫療法の標的になる可能性のあるGD2を特定したが、臨床でその概念を証明するのにほぼ25年かかった。しかし研究者らは、今回の臨床試験が今では他の癌の治療の一部として、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブなどのモノクローナル抗体とサイトカインの併用を試験するモデルとなりうると指摘する。

「われわれの結果に基づけば、大きな腫瘍の残っていない適切な患者でこれらのモノクローナル抗体をGM-CSFやIL-2と併用して試験することは理にかなっていると思います」とSondel氏は述べた。今回の試験の反応者のほとんどは、徹底した一次治療の後で寛解の状態、あるいは癌がほとんど見られない状態にあった。

「答えを得るのに25年かかりましたが、神経芽細胞腫はまれな疾患で、答えを得られたことは素晴らしいことです」と、Sondel氏は指摘した。彼は、成功は主にCOGの試験医師間の協力とNCIの支援と関与のおかげだとした。

ここに至るまでの多くの困難にもかかわらず、初期の臨床試験で患者の改善を見た後、Yu氏は常にこの方法を信じていた。「初期の試験の患者の一部は死亡すると思われてきましたが、彼らは今も生きているのです」と述べた。「2歳の時にテネシーから私の診察を受けにやってきた患者は、今22歳です」。

— Edward R. Winstead

「試験的治療により神経芽細胞腫患者の生存期間が延長」も参照

その他の学術誌報告:神経芽細胞腫の低リスク患者で薬剤の減量が有効再発リスクが中程度の患者で、かなり低い用量と短い投与期間での化学療法が神経芽細胞腫において、より強力な治療と同じ効果を示したと、研究者らは先週のNew England Journal of Medicine誌に報告した。前向き非ランダム化臨床試験の患者は、低用量の化学療法を受け、以前は使用されていた放射線療法を受けなかった。目標は、化学療法の用量を減量し期間を短縮し、生物学に基づく治療法により90%を超える3年間の推定全生存率が維持できるかどうかを判定することであった。試験で患者の3年間の平均全生存率は96%であった。「化学療法の用量を劇的に減らし放射線療法を排除することにより、これらの患者で優れた生存率を維持することができました」と、共著者でフィラデルフィア小児病院とペンシルベニア大学医学部のDr. John Maris氏は述べた。

Maris氏によると、この臨床試験とYu氏の試験を合わせ、研究者は治療法の作成の際は患者のリスクレベルを考慮する必要があると考えられる。中程度のリスクのグループでは、目標は用量を減らし、毒性を発現させずに治癒に達することであった。しかし、高リスク患者ではすでに標準治療の毒性が耐えられる最大レベルに達しているため、その目標はより標的を絞った方法を用いることであった。

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榎 真由 訳
寺島 慶太(小児科/テキサス小児病院)監修

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