ハーセプチンと分子標的薬の併用がHER2陽性転移性乳癌に対して良好な効果を示す/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

ハーセプチンと分子標的薬の併用がHER2陽性転移性乳癌に対して良好な効果を示す/MDアンダーソンがんセンター

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ハーセプチンと分子標的薬の併用がHER2陽性転移性乳癌に対して良好な効果を示す/MDアンダーソンがんセンター

併用療法が対象女性の3分の1 超に有用性をもたらす
MDアンダーソンがんセンター
2011年7月8日

HER2陽性転移性乳癌に対する治療に主に使用されるハーセプチンに、アフィニトールを併用することによって、これまでのハーセプチン主体の治療に抵抗性を有する女性患者に奏効が認められる場合があることがわかった。これは、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者主導の研究によるもので、Journal of Clinical Oncology誌で発表された。

第1、2相試験において、癌に対して異なる役割を担う分子標的治療薬の併用が、進行癌患者に有効な個別化治療を可能にすることを示した。このレジメンは、本試験の対象女性の34%に有用性をもたらすものである。

乳癌腫瘍の約4分の1がHER2陽性であり、HER2(ヒト上皮成長因子受容体2型)タンパクが過剰に発現している。この乳癌のタイプは、悪性度が高く難治性の場合が多い。

「ハーセプチン(トラスツズマブ)は、患者の多くによく奏効するものの、進行癌患者の約30%においては、化学療法の併用をもってしても、奏効を示さない
と乳癌腫瘍内科助教授で、本試験の筆頭著者あるPK Morrow医師は説明する。 「HER2陽性転移性乳癌は、初期段階にハーセプチンで奏効を示した場合でも、いずれは標準的なハーセプチン主体の治療で癌の進行をみることとなる。

ハーセプチンに対する耐性は、PI3K/mTOR経路などの発癌経路が活性化することと関連が認められる。腫瘍抑制因子として働くタンパク質PTENは、P13Kと相反する作用を有するが、PTENの欠損状態では、mTOR経路が活性化していると考えられる。アフィニトール(エベロリムス)はmTOR経路を阻害することによって、耐性を克服する。

研究成果を臨床応用へ

「上記2剤の併用は、HER2陽性転移性乳癌患者に対して、化学療法を行わないという選択肢をもたらすものである
とMorrow医師は見解を述べる。「同疾患患者のほとんどは、複数の化学療法レジメンの治療歴がある現状にもかかわらず、本レジメンは、多くの患者に対して、さらなる臨床的有益性と低い毒性を示した。」

MDアンダーソンにおける前臨床試験では、mTORを阻害することにより、HER2陽性でPTEN欠損マウスの乳癌に対するハーセプチンの感受性が高くなった。これに基づく本研究は、MDアンダーソンとダナファーバー癌研究所の合同で、米国国立癌研究所による乳癌のSPORE(Specialized Program of Research Excellence:優良研究特化プログラム)に参加しており、その助成金の資金援助を受けた。

「本研究は乳癌治療にとって重要であり、個別化癌治療の確立に向けて、癌経路の解明によりきわめて重要な一歩を踏み出したといえる。
とMDアンダーソン乳癌腫瘍内科教授で責任著者であるFrancisco J. Esteva医学博士は述べた。「5年以上にわたる研究の成果が実を結んだものであり、基礎研究および動物実験から始まり、その研究成果を臨床応用に発展させた優れた実例である。」

展望を開くアプローチ

2010年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会において、MDアンダーソンとダナファーバー癌研究所で同時に実施している2件の試験が、部分的に発表された。ハーセプチン主体の治療で癌の進行をみるHER2陽性転移性乳癌女性患者47例に、ハーセプチンを3週間毎、アフィニトールを毎日投与した。対象女性の約半数に、2回以上の化学療法レジメン治療歴があった。

本併用療法は、15%の患者に部分奏効を、19%の患者に持続的な病勢の安定をもたらし、34%の臨床的有効率が認められた。無増悪生存期間中央値は4カ月であった。この治療に関して、忍容性は良好であり、倦怠感、感染症および口腔粘膜炎などの副作用は、管理可能なものであった。

PTEN欠損の患者では、全生存率がより低かったが、無増悪生存期間に影響は認められなかった。これはPTEN欠損が、癌増殖を促進させる経路の活性化を可能にすることを示唆するものである。しかし、PI3K変異は、無増悪生存や全生存に有意な影響を及ぼさなかった。PTEN欠損やPI3K変異が、無増悪生存に影響を及ぼさないという本知見は、アフィニトールの追加投与が、mTORを阻害することにより、腫瘍の進行を抑制する可能性を示唆するものである。

MDアンダーソンの研究者らは、ハーセプチンとアフィニトール、さらに化学療法薬ビノレルビンのレジメンを用いる無作為化多施設共同臨床試験BOLERO-3を実施するために、HER2陽性乳癌患者を募集している。

本試験に携わった研究者は以下の通りである。
Joe Ensor, Ph.D., Daniel Booser, M.D., Julia Moore, R.N., B.S.N., Peter Flores, Yan Xiong, Ph.D., Siyuan Zhang, M.D., Ph.D., Aysegul Sahin, M.D., Rodolfo Nuñez, M.D.,  Gabriel Hortobagyi, M.D., and Dihua Yu, M.D., Ph.D. at MD Anderson; Gerburg Wulf, M.D. and Jeanna Coviello at Beth Israel Deaconess Medical Center; Ian Krop, M.D., Ph.D. and Eric Winer, M.D. at Dana-Farber Cancer Institute; and David Kindelberger, M.D. at Brigham and Women’s Hospital.

本試験は、MDアンダーソンとダナファーバー癌研究所の合同実施による米国国立癌研究所のSPORE助成金をはじめ、Novartis Pharmaceuticals社とエイボン財団の資金援助を受けた。

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酒井 伸茂 訳
上野 直人 (乳癌、幹細胞移植・細胞療法)
M.D.アンダーソンがんセンター教授
監修
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原文

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