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卵巣機能抑制剤によって乳癌の再発が予防できる

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卵巣機能抑制剤によって乳癌の再発が予防できる

Ovary-Suppressing Drugs Can Prevent Return of Breast Cancer
(Posted: 06/25/2007) Lancet誌2007年5月19日号によると、閉経前のホルモン感受性陽性乳癌女性において、卵巣機能を止める(体の主なエストロゲン産生原を断つ)薬剤をタモキシフェンや化学療法、またはその両方と併用することで、再発率および再発後の死亡率を低下させる。


要約
閉経前のホルモン感受性乳癌女性において、卵巣機能を停止する、すなわち体内の主要なエストロゲン源を遮断する薬剤は、タモキシフェンや化学療法またはその両方に追加すると再発率および再発後の死亡率が低下します。

出典 Lancet誌2007年5月19日(ジャーナル要旨参照)

背景
通常、乳癌の女性は外科手術後、再発のリスクを低減するため追加療法または補助療法を受けます。ホルモンであるエストロゲン、プロゲステロンのいずれか、またはその両方に反応して腫瘍が増殖した(ホルモン受容性腫瘍)若い女性の唯一の選択肢は、卵巣機能を停止(卵巣機能を抑制)する薬剤による治療です。閉経前女性では卵巣で体内のエストロゲンのほとんどが生成されます。

LHRH作用薬と呼ばれる薬剤は、卵巣の抑制を誘発するのに使用できます。(LHRHはluteinizing-hormone-releasing hormone:黄体形成ホルモン放出ホルモンの略で、男性および女性の性ホルモンを制御するホルモンの一種です。)LHRH 作用薬は、再発のリスク低減を示したエビデンスのため多くの乳癌患者が使用する抗エストロゲン剤のタモキシフェンとは作用が異なります。

研究者たちが数多くの試験を実施し閉経前の乳癌患者へのLHRH作用薬の効果を評価してきましたが、どの試験も薬剤が再発を遅延または阻止したり、患者の生存期間を延長することを証明できませんでした。

ここで記載している試験は、研究者たちが多くの試験から得たデータを合わせて、その合わせた試験結果をまとめるメタアナリシスです。この方法は、複数の試験がそれぞれ異なる結果を示した際に、研究の疑問への回答を得るために使用されるものです。今回の試験で、国際的研究者グループが、閉経前の乳癌女性にこのような薬剤治療が有効かどうか最終的に確認するためにLHRH 作用薬試験のメタアナリシスを実施しました。

試験
研究者たちは、16のLHRH作用薬の臨床試験に参加した12,000人近くの閉経前の女性のデータを組み合わせました。本臨床試験は、米国、日本およびヨーロッパの6か国で1987年から2001年にかけて実施されました。

患者の年齢の中央値は約43歳です。多くの患者が早期乳癌でした。外科手術後の唯一の追加治療としてLHRH作用薬を使用した女性は少数でした。大半の女性が、タモキシフェンか化学療法のいずれか、またはその両方に追加してLHRH作用薬を使用しました。LHRH作用薬の治療期間は18か月から5年と差がありました。これら臨床試験全体での追跡調査期間の中央値は約7年でした。

合計9,022名(75.8%)の女性はホルモン感受性腫瘍でした。この群の90%がエストロゲン増殖性腫瘍で、残りはプロゲステロンによるものでした。

メタ分析の主任研究者は、英国のロンドン大学の疫学者であるJack Cuzick医学博士です。

結果
全体的に見て、タモキシフェンや化学療法またはその両方にLHRH作用薬を追加すると、再発率が12.7%減少し、再発後の死亡率が15.1%減少しました。

制限事項
今日、タモキシフェンは、ホルモン感受性腫瘍の女性の標準的な追加治療と考えられていますが、メタ分析に加わったどの臨床試験でも標準治療として使用されていませんでしたと、メリーランド州ボルティモアのジョンズホプキンス大学腫瘍学教授で、シカゴで開催された2007年米国臨床腫瘍学会総会で研究結果を協議し、メタアナリシスの共著者であるNancy E. Davidson医師は語りました。

Davidson医師はまた、化学療法を受けたメタアナリシスに登録された女性の多くが、今やほとんど使用されていない治療法であるシクロホスファミド、メトトレキセートおよびフルオロウラシル(CMF)の治療を受けていたと指摘しました。化学療法を受ける乳癌患者の多くは、現在、臨床試験でCMFよりも効果があると明らかになっているドキソルビシン(アドリアマイシン®)、エピルビシン(エレンス®)、パクリタキセル (タキソール®)およびドセタキセル(タキソテール®)などの薬剤で治療を受けています。

追加の制限事項は、LHRH作用薬の使用期間が、ある臨床試験ではたったの18か月という短期間であり、他の臨床試験では5年もの長期間であったということであると、Davidson医師は述べました。「最適なLHRH療法の期間は不明です。」と、Davidson医師は語りました。

コメント
これらの注意事項がある上で、「LHRH 作用薬は、ホルモン感受性腫瘍患者に使用すると明らかに効果がある。」と、Davidson医師は締めくくりました。

米国の癌専門医たちは通常、閉経前の乳癌患者の治療にLHRH作用薬を使用していないと、米国国立癌研究所のCenter for Cancer Research (癌研究センター)の内科腫瘍医、Jennifer Eng-Wong医師は語りました。しかし、閉経前のホルモン感受性乳癌の女性は、化学療法併用の有無にかかわらずタモキシフェンで治療を受けていたでしょう。

外科手術および放射線治療も、閉経前の女性の卵巣機能を阻害するために使用される場合があると、Eng-Wong医師は語りました。卵巣抑制を誘発するためにLHRH作用薬を使用するうえで考えられる利点は、この薬剤の服用を患者が止めた場合に卵巣機能が回復し女性が妊娠できる可能性があることである、とEng-Wong医師は付け加えました。反対に、卵巣機能を抑制するために外科手術または放射線治療を利用すると回復が不可能となり早期閉経をもたらします。

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ポメラニアン 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修

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