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2010/10/05号◆特別リポート「マンモグラフィと乳癌死亡率に関する新たな2つの研究データが示される」

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2010/10/05号◆特別リポート「マンモグラフィと乳癌死亡率に関する新たな2つの研究データが示される」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年10月5日号(Volume 7 / Number 19)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇

マンモグラフィと乳癌死亡率に関する新たな2つの研究データが示される

北欧での2つの試験結果が公表され、異なる年齢層において定期的なマンモグラフィ検診は乳癌による死亡リスクをどの程度減らすことが可能であるかの新たな情報が示された。しかし両試験とも観察研究であったために試験の限界が結果の解釈に影響を及ぼし、乳癌死亡率を減らすというマンモグラフィの利益の程度をめぐる論争を解決しうるものではないだろうと注意を促している。

両試験は、乳癌検診プログラムが郡毎に徐々に広がっていったスウェーデンとノルウェーで定期的なマンモグラフィの有効性を調査するものであった。スウェーデンの試験は、定期的なマンモグラフィ検診が40〜49歳の女性の乳癌死に及ぼす影響に厳密に焦点を当てた一方で、ノルウェーの試験は、高齢者層におけるマンモグラフィの死亡率改善の解析と乳癌の認知度の変化と長い時間をかけた治療の改善を広く考慮したものであった。(詳細については下部の囲み記事参照のこと)これらの試験の結論は異なるものであった。スウェーデンの試験は、定期的なマンモグラフィ検診により若年女性の乳癌死亡者数が大幅に減少したことを示しており、ノルウェーの試験は50〜69歳の女性群において乳癌死亡率減少が極めて少なかったことを示している。

2つの試験は異なる年齢層を調査し、そして全く異なる結果ではあるが、「どちらの試験も乳癌検診を行うことで乳癌により死亡する女性がより少なくなることを示している」と、NCIの癌制御・人口学部門のDr. Stephen Taplin氏は述べた。そして、マンモグラフィ検査により死亡率を減らすことが可能であることは知られているが、「何が変化してきているかと言うと、利益の大きさが年齢層によって異なる可能性があり、そしてまた治療の進歩による貢献という認識が加わったことである」と続けた。

若年層に対する調査

SCRYと呼ばれるスウェーデンの試験では、40〜49歳の女性において、検診群の女性は非検診群の女性と比べて乳癌死が29%減少したとの結論に達した。乳癌の死亡を一人減らすか遅らせるために約1,250人の女性が癌検診を受けなければならなかったと、この試験の筆頭著者であるDr. Hakan Jonsson氏はワシントンDCで開催された米国臨床腫瘍学会2010年乳癌シンポジウムで報告した。この試験結果は9月29日付のCancer誌電子版にも掲載された。

「本報告は、この年齢層におけるマンモグラフィによる検診による利益を明確に示している」と、米国癌協会の内科担当副会長であるDr. Len Lichtenfeld氏が自身のブログに記した。しかし同時に、本試験により何が正しくて何が疑わしいのか、そしてどの疑問が解決されてどの疑問が未解決であるかについて専門家による慎重な検討がされていることも認めた。

NIHの疾病予防副部長のDr. Barry Kramer氏によると、このデータの解析方法は、マンモグラフィの死亡率改善が過大評価に繋がる可能性があるとのことである。定期的な乳癌検診を実施していない郡と実施している郡の女性の乳癌死亡者数の過剰な人数を計算するために、研究者らは、それぞれの郡の全乳癌死亡率を比較するのではなく、(主にマンモグラフィにより)乳癌と診断された女性に起きた乳癌による死亡のみを比較したとKramer氏は指摘した。マンモグラフィは非致死的癌を検出できるため、「彼らの解析は、検診に関連する過剰診断を考慮していない可能性がある」とKramer氏は説明した。「これは小さな問題ではない。検診に有利に働くと考えられる重要なバイアスである」。

定期的な検診導入前の郡における乳癌死の相違分析、および検診が実施されるかどうかに影響を及ぼすと思われる社会経済や郡における資源の相違の調整を行わないなどの方法論的な問題もマンモグラフィに関連する死亡率改善を水増しする可能性があるとKramer氏は続けた。

40〜49歳の年齢層の女性に対して定期的なマンモグラフィ検診を実施すべきかどうかについて多くの議論が続いている。2009年11月、米国予防医療作業部会(USPSTF)は、50〜74歳女性は2年毎の乳房X線撮影による検診を推奨する最新ガイドラインを公表した。しかし特別調査委員会は、平均的な乳癌リスクを持つ40〜49歳の女性に対する定期的なマンモグラフィ検診を支持せず、若年女性の絶対リスク減少率は高齢女性に比べて少なく、そして若年女性においては偽陽性の結果がより大きな懸念となると指摘した。代わって、同作業部会は、この年齢層の女性に対するマンモグラフィ検診に関する決定は、「個人により患者の状況を考慮すべきである」との推奨を行った。アメリカ癌協会(ACS)や全米総合癌情報ネットワーク(NCCN)などいくつかの癌関連団体は、40〜49歳女性に対する年1回のマンモグラフィ検診の推奨を続けている。

この年齢層の多くの女性は、「マンモグラフィ検診を受けるかどうかに関する明白な推奨を望んでいます」と、ノースショア大学健康システム(イリノイ州)のDr. Jennifer Obel氏は試験結果の記者会見の席で述べ、「重要な点は、40歳からの全女性は、検診の潜在的な利益と不利益および何が自分に最適であるかを理解するためにマンモグラフィについて主治医と話をするべきであると思います」と続けた。

高齢者に対する精査

一方、オスロ大学病院(ノルウェー)のDr. Matte Kalager氏らは、50〜69歳女性に対する定期的なマンモグラフィにより、乳癌死は減少するが数値は期待よりも少なかったことを明らかにした。この結果は、9月23日付けのNew England Journal of Medicine誌電子版に掲載された。

主に1980年代後半から1990年代前半にかけて行われた臨床試験に基づき、この年齢層における定期的なマンモグラフィと関連する死亡率減少は25%に達すると見積もっていた。しかしこのノルウェーの試験で、検診プログラムの実施による乳癌死亡率減少は10%であることが明らかとなった。検診プログラムを実施しなかった郡でさえ、同期間における乳癌の死亡率はさらに18%低下した。この減少の要因は、乳癌の認知度がより高まり、そして術後補助化学療法などの治療が向上したためであると筆者らは推論した。

Taplin氏は、治療が死亡率改善に関係している可能性があることに同意した。ノルウェーでの検診プログラムの一環として、集学的乳癌管理チームが各郡に設けられるようになった。「組織的支援が死亡率減少に貢献した可能性があるという事実も、乳癌管理チームが必要であることを示唆するものであり、米国においてもこのようなアプローチを検証する必要がある」とTaplin氏は述べた。

ノルウェーの試験では、スウェーデンの試験で見られたいくつかの方法論的問題点を回避したとKramer氏は述べた。Kalager氏のチームは、人口に基づく乳癌死亡率を用い、そして定期的なマンモグラフィの実施前後の各郡における死亡率を比較した。これらの特性は、「データに証拠力と妥当性を加えた」とKramer氏は述べた。

ノルウェー試験の結果から示唆されるのは、「マンモグラフィ検診は、現在より過去においてより効果的であったとうことは非常に説得力がある」ということであると、ダートマス医科大学のDr. H. Gilbert Welch氏が付随論文に記した。「現在、女性が乳房にしこりを見つけてより早く病院に来るようになれば、検診の利益はより少なくなる。臨床的に見つかった乳癌(つまり検診以外の方法で見つかった腫瘍)の治療が向上したため、検診の利益はより少なくなります」。

ノルウェーの試験では診断後の平均追跡調査期間は2.2年であり、これにより確定的な結論を下すことは困難であると、Taplin氏は警告し、検診が死亡率に及ぼす影響をより明確に把握するために、長期の追跡調査が必要であると指摘した。

マンモグラフィを評価するための現行対策の一環として、NCIは米国地域社会の実質上の背景における乳癌(大腸癌と子宮頸癌も同様に)の検診プロセスを改善する方法を評価するために、「個別レジメンを介した、人口に基づく検診最適化調査(Population-based Research Optimizing Screening through Personalized Regimens: PROSPR)」と呼ばれる新たな戦略を開発中であるとTaplin氏は説明した。「多くの人を救うと同時に、多くの人を失っている。従って、検診技術、治療方法、介護の調整の改善を目指してより努力を継続しなければなりません」。

—Carmen Phillips

試験の詳細996年、ノルウェーでは50〜69歳女性を対象とした郡ごとによる乳癌検診プログラムが始まり広まっていった。女性は2年毎の乳房X線撮影を受けることができ、定期的検診が実施される前に専用の学際的乳癌管理チームが各郡に設立された。ノルウェーの検診試験には、1986〜2005年の間に乳癌と診断された女性4万人以上が含まれていた。参加女性は4つのグループに属していた。つまり、1996〜2005年に検診プログラム導入済み郡の女性、1996〜2005年に検診プログラムがまだ導入待ちであった郡の女性、および2つの歴史的対照群として1986〜2005年に同じ郡に住む女性であった。2つの「現行プログラム」のグループと比較をすることが、研究者らに、乳癌の死亡率減少に関連している可能性のある治療や認識などの経時的な変化要因による混乱の回避を認めた。そして歴史的対照群を用いることで、乳癌による死亡率といった郡間により異なる要因を調整し、各郡において同等の追跡調査を実現した。平均追跡調査期間は診断後2年少々であり、最長はほぼ9年であった。

歴史的対照群に相当する女性と比較すると、現行検診群女性の乳癌死亡率は28%の相対的減少であった(歴史的対照群の乳癌死亡者数は10万人年あたり25.3人であるのに対して検診群では10万人年あたり18.1人で、その差は10万人年あたり死亡者数7.2人である)。しかしながら、検診未導入群の女性の乳癌による死亡率も歴史的対照群と比較すると大幅に減少していた。この場合は、死亡率において18%の相対的減少であった(10万人年あたり26.0人対21.2人の死亡者数で、その差は10万人年で4.8人)。

結果として著者らは、唯一「全体の群間差は[10万人年あたり2.4人の死亡者数]、単独検診プログラムに起因している可能性があり、これは死亡率全体の推定減少率の3分の1を意味する(7.2人中2.4人)」との結論を下した。言い換えれば、検診プログラムにより乳癌死亡率が絶対値として10%減少するという結果であった。

スウェーデンの試験は、定期的なマンモグラフィが実施された郡(試験群)と定期的なマンモグラフィが実施されていない郡(対照群)に住む40〜49歳の乳癌と診断された女性を直接比較する点が異なっていた。1986年初頭、50〜69歳の女性に対して定期的なマンモグラフィの案内通知は義務付けられたが、若年女性については任意であった。

スウェーデンの試験が実施されている1986〜2005年の間に、100万人以上の女性のデータが分析された。平均的追跡期間は14年以上であった。乳癌による死亡者数は、試験群(730万人年中)803人、対照群(880万人年)では1,238人であった。実際に検診を行った女性の乳癌死亡率は29%減少し、そして検診の案内を受けた女性に限定した解析の場合には26%の減少であった。

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Nogawa 訳
辻村 信一(獣医学/農学博士、メディカルライター)監修

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