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アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用で進行悪性腹膜中皮腫に臨床的意義のある奏効

治療選択肢がわずかしかない希少がんの臨床試験で客観的奏効率40%を達成

進行した悪性腹膜中皮腫患者を対象にした第2相試験がテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの主導で行われた。悪性腹膜中皮腫は、腹腔の内側を覆う組織(腹膜)に生じるまれながんである。試験ではアテゾリズマブ(販売名:テセントリク)とベバシズマブ(販売名:アバスチン)による併用療法の良好な忍容性が明らかになり、客観的奏効率が40%に達した。この効果は、患者のPD-L1発現の有無および遺伝子変異の数にかかわらず認められた。

この試験結果は、先に化学療法を実施しても腫瘍の進行を認める患者または化学療法に耐えられない患者に対して両薬剤による併用療法が安全かつ有効であることを示すものである。消化管腫瘍内科准教授Kanwal Raghav医師および同助教Daniel Halperin医師主導のもと実施した本試験が、2021年7月14日にCancer Discovery誌で発表された。

悪性腹膜中皮腫(MPeM)は、まれだが悪性度の高いがんとして知られている。生存期間が短いことがこれまでに報告されており、治療選択肢は限られる。腹膜がんは症状が見過ごされることが極めて多く、たいていは進行期になって診断される。治療しなければ、平均余命は多くの場合1年に満たない。

「腹膜中皮腫患者さんには、多くの解決すべき課題が存在します。この試験は、待ち望まれている治療の選択肢を確立し、このまれな疾患に関する研究の促進に取り組む姿勢を示すものです」とRaghav医師は話す。

悪性腹膜中皮腫患者を対象とした初の試験

米国では年間推定300~500人が悪性腹膜中皮腫(MPeM)と診断される。悪性腹膜中皮腫は、胸腔の内側を覆う組織(胸膜)に生じる胸膜中皮腫とは大きな違いがある。にもかかわらず、通常、胸膜中皮腫と同様の治療が行われる。悪性腹膜中皮腫は胸膜中皮腫に比べて発症率が極めて低く、研究が進んでおらず、アスベスト曝露との関連性が低い。女性に好発し、比較的若年時に発症する。多くは進行した状態で診断される。

治療戦略は一様ではないが、可能な限り腫瘍量を減量する手術や、腹腔内温熱化学療法(HIPEC)、または術後早期の腹腔内化学療法(EPIC)などが一般的に行われる。通常、悪性腹膜中皮腫患者の治療は、悪性胸膜中皮腫に対して推奨される治療法に準じて行われるが、胸膜中皮腫に対する化学療法を検討した大半の試験では悪性腹膜中皮腫患者は参加者から除外されている。

全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)はいずれの中皮腫に対してもプラチナ製剤による化学療法を一次治療として推奨しているが、進行悪性腹膜中皮腫に対して一次治療後に疾患進行を認めた場合の治療戦略は確立しておらず、また米国食品医薬品局の承認を受けている治療法も皆無である。

今回の単施設試験は、さまざまな進行期のがん種を対象にアテゾリズマブとベバシズマブの併用療法を評価する多コホートバスケット試験である。アテゾリズマブは、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる免疫療法薬の一種であり、PD-L1を標的とする。ベバシズマブは、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を阻害することで新生血管の成長を抑制する分子標的薬である。この発表では、悪性腹膜中皮腫コホートに登録した患者20人のデータが報告された。年齢の中央値は63歳であり、60%を女性が占めた。患者による自己報告では参加者の75%がアスベストの曝露歴がないと回答した。人種別では80%が白人、10%がヒスパニック系、5%が黒人、5%がその他であった。

次の治療開始までの期間は、本試験への登録前に標準化学療法を受けた患者では8.3カ月であったのに対し、本試験でのアテゾリズマブとベバシズマブの併用療法では17.6カ月であった。この併用療法の奏効期間の中央値は12.8カ月であった。

1年時点での無増悪生存率および全生存率はそれぞれ61%および85%であった。この治療の忍容性は良好で、本治療で多く認められた有害事象は高血圧および貧血であった。

「この治療法を用いた患者さんには、従来の治療で予想される転帰を上回る結果が得られました。本試験のデータは、この治療法が理にかなった選択肢であること、また、希少がんに対する臨床試験が生存期間を延長するために重要であることを改めて教えてくれます」とRaghav医師は話す。

バイオマーカー解析

治療前と治療期間中の生検データを統合することで、希少がんに対する、バイオマーカーを手法としたトランスレーショナル研究に基づく手法の実施可能性および価値が確立された。本併用療法による治療効果は、その他のがんにおいて臨床的に確立された免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測するバイオマーカーとは相関しないことが両時点の生検から実証された。

バイオマーカー解析では、生物学的悪性度の高いがんである上皮間葉転換(EMT)に関連する遺伝子の発現がみられる患者は、がんの悪性度が高く、治療抵抗性を示し、奏効率が低いことが確認された。

本試験治療への反応を予測する腫瘍環境を定義するために、採取可能な患者15人の検体を用いて、投与前に腫瘍環境を構成する免疫細胞のサブセットを調べた。血管内皮細胞増殖因子を阻害することにより、免疫抑制的に作用する腫瘍環境を改変し、免疫チェックポイント阻害薬の効果が増強されることを見出した。

「この治療で得られた反応はとても励みになります。さらに研究を重ね、この治療法が悪性腹膜中皮腫の患者さんにとってより優れた治療選択肢となることを期待しています」とRaghav医師は語る。「臨床試験にすすんで参加してくださる患者さんに感謝します。私たちは患者さんを通して希少がんについての知識を深めることができるのです」。

前述の試験結果を検証し、本試験で検討した薬剤併用療法が悪性腹膜中皮腫患者に対する一次治療となり得るか、または同患者の術後転帰を改善できるかについて判断するには、本試験よりも多数の患者を対象とした試験が必要である。

この研究にご尽力・ご指導いただいた統括著者であるGauri Varadhachary医師に著者全員から敬意を表す。Varadhachary氏は2021年6月5日に逝去した。

共著者および開示事項の全リストはこちらから閲覧できる。本研究は、F. Hoffmann-La Roche社/Genentech社および米国国立がん研究所(P30CA016672)の支援を受けて実施した。

翻訳伊藤美奈子

監修田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)

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