2011/08/09号◆クローズアップ「乳癌検診個別化の新たな指針」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/08/09号◆クローズアップ「乳癌検診個別化の新たな指針」

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2011/08/09号◆クローズアップ「乳癌検診個別化の新たな指針」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年8月09日号(Volume 8 / Number 16)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇ クローズアップ ◇◆◇

乳癌検診個別化の新たな指針

2009年11月に発表された米国予防医療作業部会(USPSTF)の乳癌検診に関する推奨の最新改訂は、多くの女性と担当医の間に混乱を巻き起こした。

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この推奨に加えられた最も重要な変更は、小さいものであったが影響は大きかった。40歳以上のすべての女性に定期的なマンモグラフィを実施するのではなく、50歳未満の検診は「個別に判断し、患者の状況を考慮すべきである」とされた。

「推奨は、50歳未満の女性はマンモグラフィ検診を受診すべきではないという意味に広く解釈されましたが、それは委員会の意図とは異なっており、あまりよい方策とはいえません」とアリゾナ州立大学の生物医学情報学の教授で、2009年の発表時にUSPSTFの副委員長であったDr. Diana Petitti氏はいう。「残念なことに、40代の女性に『定期的なマンモグラフィ検診を推奨しない』という文言が強調されてしまいました」。

「医師や女性たちには、個々人のリスク因子を総合的に判断して方針を決めるよう強調してきました」とPetitti氏は説明する。このアプローチをとる上で以前から障害となってきたのが、個々の患者の乳癌リスク予測に利用できる指針がないことである。

個人のリスク因子の影響

先月Annals of Internal Medicine誌に発表された研究では、ミネソタ州パークニコレット医療サービス(Park Nicollet Health Services)のDr. John Schousboe氏率いる研究者グループが、既知のリスク要因に基づいてグループ分けした女性に対するマンモグラフィ検診の健康上の利益と費用対効果を調査した。その結果、乳腺密度は、早期の検診から利益を得る可能性のある人を示す重大な指標であることがわかった。

「われわれは、[USPSTFのガイドラインを]単に改定するに留まらず、現在わかっている事実に基づいて個人のリスク評価を行う方法に関する指針を策定しようとしました」とSchousboe氏はいう。

Schousboe氏らは、SEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)データベースから年齢別の乳癌発症率および死亡率データ、乳癌サーベイランス・コンソーシアムのマンモグラフィ検診で検出された乳癌および偽陽性結果のデータを収集した。乳癌サーベイランス・コンソーシアムは、NCIの癌制御・人口学部門(DCCPS)が15年以上にわたって資金提供をしているプロジェクトである。また、Schousboe氏らは、スウェーデンのデータベースから乳癌診断後のQOLの変化に関するデータも取り入れた。

Schousboe氏らはこの情報から、40~49歳、50~59歳、60~69歳、70~79歳の女性に、毎年、2年ごと(2年に1度)、3年ごと、4年ごとにマンモグラフィ検診を実施する場合の健康上の利益と生涯コストを調べるモデルを構築した。各年齢グループ内で、乳腺密度、乳房生検の受診歴、乳癌の家族歴という既知のリスク要因に基づいて予測を改良した。乳腺密度は、放射線科医によって乳房画像報告データベースシステム(BI-RADS:Breast Imaging Reporting and Data System)を用いた臨床診療で報告されている。BI-RADSでは、女性の乳腺組織を最も密度の低い1から最も密度の高い4までの4つのカテゴリに分類する。

40~49歳の女性で、乳腺密度が低く(BI-RADSのカテゴリ1または2)、他のリスク因子がない場合、2年ごとのマンモグラフィ検診の費用対効果は高くない。これに対し、40~49歳の女性で、乳腺密度が高い(BI-RADSカテゴリ3~4)か平均的(BI-RADSカテゴリ2)で、乳癌の家族歴と乳房生検の受診歴がある場合、2年ごとのマンモグラフィ検診は費用対効果は高い。

乳腺密度は比較的年齢の高い女性のリスクにも影響を及ぼすことを新たな知見は示唆した。50~59歳および60~69歳の女性では、BI-RADSのカテゴリ2、3または4の場合に2年ごとのマンモグラフィ検診の費用対効果は高かったが、カテゴリ1で他のリスク因子がない場合に費用対効果は高くなかった。このグループの女性には3~4年おきにマンモグラフィを受診することをSchousboe氏らは提案している。

費用対効果は、医師や女性たちがリスクグループ間での検診の健康上の利益を比較するために役立つとDCCPSの応用研究プログラムの副主任であるDr. Rachel Ballard-Barbash氏は述べる。「予防の領域では、大人数をふるいにかけて、実際にリスクのある比較的少数の人を見つけ出す必要があります。

「生存年数を1年延長させるために非常に高額の費用がかかる場合、総合的な利益は相対的に低く、マイナスの効果が相対的に高いといえます。1人が利益を得るためにあまりにも多くの人をスクリーニングしなければならないことによって、コストが高くなるのです」とBallard-Barbash氏はまとめた。

個人のリスクを知るには

Annals of Internal Medicine誌の研究の著者らは、40歳で実施する初回マンモグラフィ検診に基づいて将来の検診を決定することを主張している。「女性は40歳でマンモグラフィを受診し、乳腺密度が平均または低く、他の乳癌リスク要因がない場合は50歳で再度スクリーニング(乳腺密度の再評価を含む)を実施し、そこから定期的な検診を開始します」。

「自分のリスクを知ることはとても重要です。乳腺密度が有用である理由は、家族歴など他のリスク要因に該当する人が比較的少数だからです。しかし、乳腺密度の高い人は母集団の半数に上り、40~49歳の女性では半数を超えます」とSchousboe氏はいう。

「最適な検診方針を決定するために乳腺密度を用いることが可能であるとの知見は刺激的な結果である。なぜなら、バイオマーカー開発やリスクの監視、およびリスクに基づく乳癌検診に今後利用できるかもしれない生物学的メカニズムが存在することを示唆しているからである」ロンバルディ総合がんセンターのDr. Jeanne Mandelblatt氏らは付随の論評で述べている。

乳腺密度の背景にある生物学的なメカニズムは十分解明されていないが、Petitti氏は次のように述べる。「これらは重要な今後の課題ではありますが、[リスクに基づく個別化]開始のための十分な情報は揃ったと考えています。しかし、医師がこの種の情報を伝えることができるかどうかは別の問題です」。

「プライマリケア医に課された時間的な制約が、この伝達を困難にしている」とSchousboe氏は論評している。女性の医療歴に記録されたリスク情報に基づいて自動的に検診を促す通知を出せるような電子医療記録があれば、過度の仕事を抱える医師の助けになるかもしれないとつけ加えた。

個別化癌検診の今後の展望

Dr. Ballard-Barbash氏によると、全米のいくつかの研究者グループが、乳癌のリスクをスコアに変換できるよう個人情報と家族歴を把握する短い質問票を開発している。

さらに、PROSPR(Population-Based Research Optimizing Screening through Personalized Regimens)と呼ばれるNCIの新しいプログラムでは、既知のリスク要因に基づいて、乳癌、大腸癌、子宮頸癌の検診を個人に合わせて改良する方法を研究する。

個別のリスクに基づいて検診の推奨を改定していくという考え方は、他の医療分野では以前から標準となっているとBallard-Barbash氏は説明する。たとえば循環器疾患では、定期的な心疾患検診から利益を受けるであろう高リスク患者を特定するために、フラミンガム・リスクスコアなどのガイドラインが用いられている。「乳癌ではまだ定量的な度数が設定できていません」とBallard-Barbash氏は述べている。

Schousboe氏らの研究と今後PROSPRから生じる研究は、「非常に大規模な女性の集団から収集したデータに基づくもので、まさにわれわれが必要としている研究なのです。「[その種の研究は]どの生物学的特性がリスクに影響を及ぼすのか、特定のタイプの検診から利益を享受する女性としない女性を判別するリスクプロファイルをどのように突き止めるかを明らかにする試みです」とBallard-Barbash氏は結論づけている。

 

—Sharon Reynolds

関連記事:「高い乳腺密度は、癌リスクの増加と高悪性度腫瘍に関連する
 

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月橋 純子 訳
上野 直人(乳癌、幹細胞移植・細胞療法/MDアンダーソンがんセンター) 監修
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