2010/10/05号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2010/10/05号◆癌研究ハイライト

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2010/10/05号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年10月5日号(Volume 7 / Number 19)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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癌研究ハイライト

・乳癌の女性に安全な、侵襲性のより低いリンパ節手術
・資金の少ない状況ではHPV検診+治療の方法が子宮頚癌の前駆病変を予防
・進行癌の黒人患者は終末期に望まない延命治療を受ける傾向がある
・消化管間質性腫瘍(GIST)の解明への糸口が遺伝子研究で見つかる

乳癌の女性に安全な、侵襲性のより低いリンパ節手術

乳癌患者に外科手術を実施した、これまでの大規模ランダム化臨床試験では、センチネルリンパ節(SLN)生検で癌細胞が検出されず、腋窩リンパ節郭清術(ALND)を実施しなかった女性は、ALNDを実施した女性と治療後8年経過時の全生存期間は同等であった。この臨床試験の結果は、9月20日付のLancet Oncology誌電子版で報告された。

バーモント大学のDr. David Krag氏率いる研究者らは、1999年から2004年間に5,611人の女性を臨床試験NSABP B-32に登録した。この臨床試験は、SLN生検で陰性が認められた女性の生存期間が、SLN生検で陰性が認められた後にALNDを実施した女性と同じであるかどうかを検証するためにデザインされた。ALNDは、より侵襲性の高い手技であり、リンパ浮腫や神経障害などの副作用のリスクが高くなる。試験対象となる女性を、SLN郭清術+ALND群(第1群)、または、センチネルリンパ節で癌細胞が検出された場合にのみSLN郭清術後にALNDを実施する群(第2群)に無作為に割り当てた。

合計3,986人の患者で、センチネルリンパ節に明らかな癌細胞は認められなかった。8年の経過観察後、癌の局所再発が認められた女性は、第2群で49人であったのに対し、第1群では54人であった。手術部位に最も近いリンパ節(所属リンパ節)で癌が再発した女性は、第2群で14人であったのに対し、第1群では8人であった。全生存期間が推定8年の女性は、第1群で91.8%、第2群で90.3%であり、統計的有意差は認められなかった。

英国ケンブリッジ大学のDr. John Benson氏は付随論説で、この臨床試験では、80%を超える女性の腫瘍が小さかったため(直径2cm以下)、再発のリスクが低くなりやすいと説明している。そのため、Benson氏は、「SLN生検の妥当性、安全性および効果に関し、この臨床試験の結論はこの集団については正しいが、通常はSLN生検を受ける、より大きな腫瘍または多巣性の腫瘍のある患者に必ずしも当てはまるとは限らない」と注意を促している。

資金の少ない状況ではHPV検診+治療の方法が子宮頚癌の前駆病変を予防

リスクの高いヒトパピローマウイルス(HPV)DNA検査で陽性結果が出た後、または子宮頚部の視診により前癌病変が検出された後すぐに凍結療法による治療を受けた女性では、すぐに治療を受けなかった女性よりも、悪性度の高い子宮頚癌前駆病変が大幅かつ統計的に有意に減少したことが、コロンビア大学の研究者らによって最近報告された。このランダム化スクリーニング臨床試験の長期結果は、9月30日付のJournal of the National Cancer Institute誌電子版で報告された。

Dr. Thomas Wright, Jr.氏率いる研究チームは、35〜65歳の南アフリカ人女性6,637人の追跡調査を実施した。女性全員の子宮頚部から採取した検体に、リスクの高いHPVのDNAが存在するかどうかを検査した。また、全員に対して子宮頚部の視診も行った後、次の3つの試験群のいずれかに無作為に割り付けた。1)DNA検査+治療群。この群では、DNA検査でHPV陽性が認められた女性にすぐに凍結療法を行った。2)視診+治療群。この群では、前駆病変が認められた女性にすぐに凍結療法を行った。3)対照群。この群では、さらなる評価および治療を6カ月遅らせた。全員に対して6カ月後にコルポスコピーと生検を施行し、試験登録時にHPV陽性または視診で陽性だった女性全員を含む一部の女性を36カ月間経過観察した。

36カ月後、子宮頚部病変の進行(CIN+2:子宮頚部上皮内腫瘍グレード2)に対する累積リスクは、DNA検査+治療群の女性では、対照群の女性より73%低かった。病変進行のリスクは、視診群では対照群と比較して32%低下した。

「これらの結果は、定期的な間隔で女性に再検診を行うことが難しく、費用もかかる場合に、資金の少ない状況に対して凍結療法が長期的に重要な意味を持つ可能性があることを示している」と研究者らは書いている。

研究者らは、対照群の女性と比較して、検診+治療を実施した2群の女性では、HIV感染率が増加したことも認めた。しかし、この感染率の増加は統計的に有意ではなかった。著者は、HIV感染の発症率が高い状況で実施された検診+治療プログラムでは、この関連性を注意深く評価するように助言している。

NCIの癌疫学・遺伝学部門のDr. Julia Gage氏およびDr. Philip Castle氏は付随論説で、HPVワクチンは存在するが、ワクチンが子宮頚癌の発症率に全世界的な影響を及ぼすようになるまでには数十年かかり、世界の一部の地域では、検診+治療というアプローチが子宮頚癌予防の貴重なツールとなるであろうと述べている。

「より簡単で、より確かな技術で女性の検診を行い、検診で陽性と認められた女性をすぐに治療すれば、集団内の子宮頚癌の発症率を低下させることができる」とCastle氏は言う。「これは、予防プログラムのための資金が限られている発展途上国で必要となるアプローチである」。

進行癌の黒人患者は終末期に望まない延命治療を受ける傾向がある

進行癌を持つ黒人患者と比べて、白人患者は終末期医療を受ける際に自らの価値観を反映できる優位性があるようだと、前向き縦断的コホート試験を行った著者らは結論している。米国北東部とテキサス州の多数の病院で行われたこの試験の結果は、Archives of Internal Medicine誌9月27日号に掲載された。

黒人患者は白人患者と同じくらい頻繁に終末期の問題について担当医と話し合っていたが、延命処置をしない(do-not-resuscitate:DNR)意思表示をしない傾向があることを研究者らは明らかにした。さらに、DNRの意思表示をした患者でも、しなかった患者と同程度に終末期延命医療を受ける傾向があった。

2002〜2007年の間、ダナ・ファーバー癌研究所のDr.Jennifer W. Mack氏らは、Coping with Cancer Study試験に参加している71人の黒人患者、261人の白人患者と面接を行った。全ての患者は癌転移があり、化学療法が効かなくなっており、この試験期間中に全員が亡くなった。

面接を通じて研究者らは、終末期の問題についての患者と担当医の話し合いの程度、末期癌であることの認識、DNRを望むかどうか、死に際して痛みや不快感を伴いうる延命治療と緩和ケア(痛みと不快感の軽減)のどちらを望むかについて確認した。死に際して実際どのような処置が行われたかは診療記録や医療提供者への問い合わせによって調査した。

患者と医師のコミュニケーションを超えた問題、例えば治療の継続性や医療提供者側にある患者が望むものに対する先入観によって、患者の希望から実際の終末期医療への変換が人種により異なることが説明できると研究者らは述べた。「これらの問題は、引き続き進行中の研究のテーマであり、終末期の患者を診療する医師は優先して考えるべきである」と結論した。

消化管間質性腫瘍(GIST)の解明への糸口が遺伝子研究で見つかる

消化管間質性腫瘍(GIST)のいくつかのタイプの進展に関わる可能性があるETV1という遺伝子が発見された。まだ予備的な研究だが、これらの発見によりETV1はこの疾患の診断マーカーになる可能性があり、治療の標的にできる可能性が示唆された。スローンケタリング記念がんセンター(MSKCC)のDr. Charles Sawyers氏とロックフェラー大学のDr.C.David氏らはこの発見をNature誌電子版10月3日号で報告した。

この遺伝子は、GISTに特異的な遺伝子発現データセットを調査中に見つかった。ETV1は3つのデータセットで発現していた11の遺伝子のうちの1つであり、他の遺伝子の活性を調節する転写因子であるETSファミリーの1つであった。他のETS転写因子の過剰発現が前立腺などの癌と関連していたので、この遺伝子もすぐに注目された。ETV1は調べた全てのGIST腫瘍検体と細胞株、そしてこの腫瘍が原発の可能性がある部位の細胞で高い活性を示した。さらに研究を行い、ETV1はGISTの増殖と進展に不可欠であることが明らかとなった。

さらにこの転写因子は、GISTの進展においてKIT遺伝子産物と協働している可能性が明らかにされた。ほとんどのGISTはKITを活性化する変異を持っているが、これらの変異だけではGISTの発生に十分ではない。共著者でMSKCCのDr. Yu Chen氏によると、この理由はKITの変異はETV1発現レベルが高い時だけ癌発生を促進するからかもしれない。

「これらの発見によりGISTにおけるETV1の癌遺伝子としての役割が確認された」と著者らは結論した。転写因子は「薬剤の標的にならない」と考えられてきたが、最近の研究ではこの考え方に疑問が出始めていると著者らは述べた。

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川瀬 真紀、野長瀬 祥兼 訳
原 文堅(乳腺腫瘍科/四国がんセンター)
九鬼 貴美(腎臓内科) 監修
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