2011/08/09号◆癌研究ハイライト・「携帯電話の使用は、小児や若年者の癌リスクを高めない」「マンモグラフィ読影のコンピュータシステムは、癌検出の向上に繋がらない」「高い乳腺密度は、癌リスクの増加と高悪性度腫瘍に関連する」「遺伝子研究により非ホジキンリンパ腫治療に糸口」「頭頸部扁平上皮癌の複雑な遺伝特性が明らかに」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/08/09号◆癌研究ハイライト・「携帯電話の使用は、小児や若年者の癌リスクを高めない」「マンモグラフィ読影のコンピュータシステムは、癌検出の向上に繋がらない」「高い乳腺密度は、癌リスクの増加と高悪性度腫瘍に関連する」「遺伝子研究により非ホジキンリンパ腫治療に糸口」「頭頸部扁平上皮癌の複雑な遺伝特性が明らかに」

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2011/08/09号◆癌研究ハイライト・「携帯電話の使用は、小児や若年者の癌リスクを高めない」「マンモグラフィ読影のコンピュータシステムは、癌検出の向上に繋がらない」「高い乳腺密度は、癌リスクの増加と高悪性度腫瘍に関連する」「遺伝子研究により非ホジキンリンパ腫治療に糸口」「頭頸部扁平上皮癌の複雑な遺伝特性が明らかに」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年8月09日号(Volume 8 / Number 16)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・携帯電話の使用は、小児や若年者の癌リスクを高めない
・マンモグラフィ読影のコンピュータシステムは、癌検出の向上に繋がらない
・高い乳腺密度は、癌リスクの増加と高悪性度腫瘍に関連する
・遺伝子研究による非ホジキンリンパ腫治療の糸口
・頭頸部扁平上皮癌の複雑な遺伝特性が明らかに

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携帯電話の使用は、小児や若年者の癌リスクを高めない

7月27日付Journal of the National Cancer Institute (JCNI)誌電子版に掲載された報告によると、ヨーロッパの4カ国において実施された、小児および若年者を対象とした携帯電話の使用に関する初めての研究で、脳腫瘍のリスク増加は認められなかったことが明らかになった。

デンマーク、スウェーデン、ノルウェーとスイスの研究者らは、2004~2008年に脳腫瘍と診断された7~19歳の小児および若年者を対象とした、多施設症例対照研究を実施した。スイス熱帯公衆衛生研究所(バーゼル市)のDr. Denis Aydin氏率いる研究者らは、脳腫瘍患者352人、健康な対照者646人とその家族らに聞き取り調査を行った。

研究者らは、日常的に携帯電話を使用した子供は、非使用者より脳腫瘍と診断される可能性が高いという統計学上の有意性はなかったと報告した。加えて、5年以上携帯電話を使用していた子供の脳腫瘍の発症リスクも統計学上有意性はなかった。また、通常、携帯電話でもっとも高値の放射線(電磁波)曝露を受ける部分においても、脳腫瘍のリスク増加が認められなかった。

一部の子供については、携帯電話会社からのデータを得ることもできた。これらの子供では、家族が携帯電話を利用し始めてから脳腫瘍のリスクが増大したが、携帯電話会社に記録されていた携帯電話使用の頻度と関連は認められなかったという。

以前の疫学調査で、成人では、携帯電話の使用と脳腫瘍の相対的なリスク増加は認められていない。今回の調査は、小児や若年者の発達段階にある脳や神経システムは、潜在的に携帯電話の使用による健康被害をより受けやすいかもしれないという懸念に対処したものであった。

「脳腫瘍の傾向と携帯電話の使用の監視を継続する」と、NCIの癌疫学・遺伝学部門のチーフであるDr. Martha Linet氏は述べた。「他の現在進行中の研究には、米国毒性プログラムによるげっ歯類に対する携帯電話周波数の曝露の大規模調査、ヨーロッパ5カ国における携帯電話使用者25万人を対象とする前向き研究、脳腫瘍と診断された10~24歳の青年2,000人と同数の対照者を比較する13カ国における症例対照研究などがある」。

関連記事:「携帯電話と癌リスク–Dr. Martha Linet氏との対話

マンモグラフィ読影のコンピュータシステムは、癌検出の向上に繋がらない

マンモグラフィ上の疑わしい箇所を鑑別する放射線科医を補助するために、高価なコンピュータシステムが作られ広く利用されているが、乳癌の検出には役に立たないかもしれないことが、新たな研究で示唆された。カリフォルニア大学デービス校のDr. Joshua J. Fenton氏が率いたこの研究の結果は、7月27日付Journal of the National Cancer Institute(JNCI)誌電子版に掲載された。

米国内のコンピュータ支援診断(CAD)の成績を判定するための初めての大規模臨床試験の結果、この技術は浸潤性乳癌検出の改善にはつながらなかった。この知見は、1998~2006年に乳癌サーベイランス・コンソーシアムの参加施設に入院した女性約684,000人および160万以上の乳房写真のデータを基にしたものであった。

CADシステムは、米国内で行われるほとんどのマンモグラフィ検診の読影で役立っているが、メディケア公的保険に対する直接の費用は年間30万ドルを超えていると筆者らは指摘した。米国食品医薬品局は、限られたデータに基づき1998年にこのCAD技術を承認し、メディケアはその直後より支払いを開始した。

2007年に、住民を対象とした集団ベースの解析研究の中間結果が発表された。当時は、CADを使用した場合の偽陽性率は、CADを使わずに放射線科医によるマンモグラフィの読影の偽陽性率より有意に高いことが明らかとなった。

最新の解析データは、2007年の中間報告で評価されたデータのほぼ2倍であったが、結論は基本的に同じであった。JNCI誌の編集者の要約によると、マンモグラフィ検診の読影にCADを使用することの健康に対する恩恵は、「未だ明確でなく、そして、このデータは、一連の費用は潜在的利益を上回るかもしれないことを示唆している」。

CAD技術が一般的である理由は、一つにはマンモグラフィ装置にCADが組み込まれているためであり、これは米国内で増加しつつある。さらに別な理由として、メディケア診療報酬からの奨励金があると、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDr. Donald Berry氏は付随論説で指摘した。

研究者と装置の製造会社は、システム改良のための研究をするべきであると、Berry氏は続けた。「しかし、これは試験的設定で起きるべきことであって、有益よりも有害であるかもしれない技術を何百万人もの女性に実施すべきではない。その一方で、経済的な動機は、CADシステム利用の増加をあおるかもしれない」。

関連記事:「マンモグラム調査によりCAD(コンピュータ読影支援システム)を評価

高い乳腺密度は、癌リスクの増加と高悪性度腫瘍に関連する

閉経後の女性を対象とした研究により、乳腺密度(乳腺濃度ともいう)が高いと乳癌リスクが高いこと、さらに、高悪性度の腫瘍を発症する傾向があることも明らかとなった。この知見は、7月27日付Journal of the National Cancer Institute誌電子版に掲載された。

脂肪が少なく乳腺と結合組織が多い高濃度の乳腺組織は、乳癌のリスク要因として知られている。そして、高濃度乳腺組織のマンモグラフィ読影は、より難しいことが多い。しかし、乳腺密度の高い女性に特有の乳癌が発症するかどうかは明らかではない。

ハーバード医科大学の研究者らは、1989~2004年の間に乳癌に罹患した1,042人と健康な対照者1,794人の看護師健康調査のデータを解析した。乳癌患者群の平均乳腺密度は対照群より高かった。乳腺密度が一番高い女性は、乳腺密度が一番低い女性より癌を発症する可能性が3倍以上高かった。

乳腺密度の高さは、非浸潤性腫瘍と非常に強い関連があった。さらに、乳腺密度は、より大きな腫瘍や、高グレードおよびエストロゲン受容体陰性といった悪性度が高い傾向の腫瘍とも関連していた。著者らは、研究上のいくつかの制限を指摘した。もっとも重要なことは、この知見は閉経後女性にのみ適応されるかもしれないことである。

付随論説で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDr. Karla Kerlikowske氏とフレッドハッチンソンがん研究センターのDr. Amanda Phipps氏は、「マスキング効果」(高濃度乳腺組織では、マンモグラフィによる微小腫瘍の検出が妨げられる効果)が、今回認められた高濃度乳腺組織と、大きく悪性度が高い腫瘍との関連性の原因であるかもしれないと示唆した。

さらに両氏は、発現している上皮および間質細胞の数との相互作用のために、高濃度乳腺組織において腫瘍が多く発生するのかもしれないと提唱した。

この結果は、「予後不良と予測される特徴の腫瘍を含め、生物学的に多様なさまざまな乳癌タイプにおいて、乳腺密度は重要なリスク因子である」ことを示唆していると、論説者は記している。「乳癌のすべてのタイプ、特にエストロゲン受容体陰性において乳腺密度との関連性の大きさを考慮すれば、全てのタイプの腫瘍で乳腺密度をリスク予測因子に含めるべきである」と結論づけた。

関連記事:「マンモグラフィの乳腺密度と癌リスク

遺伝子研究により非ホジキンリンパ腫治療に糸口

クロマチンの正常なDNAパッケージング(クロモソーム内のタンパク質-DNA複合体形成機構)を破壊する遺伝子変異がある種の非ホジキンリンパ腫(NHL)に共通して認められ、その疾患群における病因となっている可能性が、新たな研究により示唆された。その研究は、クロマチンリモデリングと呼ばれる過程におけるDNAパッケージングの適切な制御が、癌では崩壊している可能性を示唆する近年増えつつある研究報告を支持するものであった。

7月27日付Nature誌電子版のBC (ブリティッシュ・コロンビア)癌協会(バンクーバー)のDr. Marco Marra氏とその共同研究者らの報告によると、これらの変異に関する知見にもとづいて非ホジキンリンパ腫の治療戦略を立てることが可能であることが述べられた。

NHLの生物学的機構をさらに明らかにするため、彼らは2種のもっとも一般的なNHLであるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者13人および濾胞性リンパ腫患者1人を対象にゲノム塩基配列解析を実施した。またさらにNHL患者113人の遺伝子変異を調査した結果、癌の発症に関与する可能性のある再発性突然変異を有する26個の遺伝子を同定した。

もっとも頻繁に変異が認められたタンパク質群をコードする5個の遺伝子は、ヒストンの化学的修飾に関与するものであり、DNAをパッケージングするクロマチンタンパク質である。ヒストンの修飾が起こると、クロマチンのDNAパッケージングが緩められ遺伝子発現が促進される。一方、ヒストンが脱修飾されると、DNAパッケージングがより高度に凝縮され遺伝子発現が抑制される。このようにヒストン修飾に関与するタンパクがゲノム全体の遺伝子活性を変化させることができる。

その5個の遺伝子のひとつであるMLL2の変異は、濾胞性リンパ腫患者の89%に認められ、NHL患者にもっとも頻発する変異遺伝子のひとつである。著者らは、他の癌種でも同様にこの遺伝子が変異していることに着目し、MLL2タンパクが一般的に腫瘍形成の抑制に関与している可能性があると指摘している。

著者らが注目した2番目に変異が頻発した遺伝子であるMEF2Bは、今まで癌との関連性が認められなかったが、この遺伝子の変異パターンは既知の他の癌関連遺伝子に認められた変異パターンと類似している。これらの結果から、彼らはヒストン修飾に関与する遺伝子変異がある種のNHLの発症における主要現象である可能性があると結論づけた。

これらの結果からNHLのヒストン関連遺伝子変異の最近の報告が確認され、拡張された。(参考文献12)。同様の遺伝子変異は腎臓癌の形成および小児の癌である髄芽腫にもみられる。ヒストン修飾などの細胞内のエピジェネティックな変化に逆行する作用を有する薬剤の投与が可能であるが、最近同定された変異と癌との関連性は明確ではないと警告する研究者もいる。

「この研究は、今まで誰もこれらの疾患に関与するとは考えられたことのなかった遺伝子のリストを研究者らに提示し、極めて多数の新しい道を開いた」と筆頭著者である BC 癌協会のRyan Morin氏は語った。そして特定の変異が限られたある種のNHL亜型にのみ認められることから、その変化を確認できれば、医師がその疾患を診断し、最適の治療法を選択するのに役立つはずであると彼はつけ加えた。

頭頸部扁平上皮癌の複雑な遺伝特性が明らかに

2つの独立した多施設研究チームにより、最も高頻度の頭頸部の癌種である頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)に関連する未知の遺伝子欠失が多数同定された。研究者らは、数十人もの患者の組織検体を用いてDNAのタンパク質をコードしている全領域(エキソーム)の配列を決定し、その結果が7月28日付Science誌電子版に2報の論文として掲載された(参考文献34)。

本研究は MIT(マサチューセッツ工科大学)とハーバード大学の共同施設であるブロード研究所、ピッツバーグ大学癌研究所、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターおよびテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らの主導により実施された。

喫煙、アルコールの過剰摂取、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染は、HNSCCのリスク因子として知られ、口腔咽頭部に発生する癌に関与している。多くの種のHNSCCでは、5年生存率は、過去40年でほとんど改善されていない。

HNSCCの発症に関与していると思われる欠失遺伝子や変異遺伝子を探索するために、研究者らは、腫瘍組織の全エキソーム配列と同一患者から得たそれらに相当する正常細胞のエキソーム配列を比較した。両研究チームは、最も高頻度に認められる遺伝子異常であるTP53腫瘍抑制遺伝子内の変異など、これまでにもHNSCCに関与するとされていた遺伝子異常を同定した。

また、両チームはHNSCCの想定外の遺伝子変異も多数同定した。もっとも特筆すべきはNOTCH1遺伝子内および扁平上皮細胞分化(より未成熟で細胞分裂速度の速い、特殊な扁平上皮細胞へと成熟する細胞による過程)に関与するその他の遺伝子群内に認められた。

「分化の段階、つまり腫瘍細胞のグレードと、HNSCCの臨床的な予後因子は必ずしも一致するわけではない」と2報の論文うちの一方の研究統括著者である、ピッツバーグ大学のDr. Jennifer Grandis氏は述べた。「ゆえに、細胞分化に関与するような一連の遺伝子に変異が見つかったことは驚きである」。

両研究から、HPV陰性腫瘍よりもHPV陽性腫瘍の方が遺伝子変異がかなり少なく、HPV陽性HNSCCの方が予後が良好であるという考えを裏づけるものであり、別々の疾患としてそれぞれに異なる治療を行う必要性を示す。

このような集学的共同研究によって「はじめて頭頸部癌の複雑な生物学を理解できるようになる」とGrandis氏は述べた。「これはひとつの疾患ではないのは明らかだ。顕微鏡下では同一のものに見えても、これは複数の疾患なのである」。

「確かに、慎重ながら楽観的というわけにはいかないが、HNSCCのような生物学的複雑性を模索することによって、最終的には新規の治療標的が明らかになるだろうと確信している」と、Grandis氏は述べた。

「私たちはまだこれらの遺伝子発見の小さな一歩を踏み出したばかりである」とGrandis氏は続けた。次のもっとも大事な段階は、腫瘍形成をおこす変異群の部分集合を同定し、それらを標的化する方法を発見することである。「患者の腫瘍が目の前にあり、私たちに語りかけていることはわかる。でも言っている内容を理解できるかどうかは別の問題である」。

 

その他の医学誌発表―あるタイプの脳腫瘍に主要な遺伝子変異を発見研究者らは、成人の脳腫瘍として2番目に多い乏突起膠腫の形成に重要な役割を果たす2個の遺伝子内の変異を同定した。8月4日付Science誌電子版に掲載された本研究において、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターのDr. Chettan Bettegowda氏と共同研究者らは、7検体の乏突起膠腫を対象にエキソーム(DNAのタンパク質コードする部位全体)の配列を決定し、2つの遺伝子CICとFUBP1の変異が高頻度にみられたことを報告した。彼らはさらに27検体の乏突起膠腫を対象に配列決定を行い、その2つの遺伝子が高頻度に変異していることを再確認した。その遺伝子変異パターンはよくみられる腫瘍抑制遺伝子と一致していた。「われわれが腫瘍の大部分で変異する遺伝子を検出したときはいつも、発生や腫瘍の生物学的機能に重要な遺伝子によって制御される経路と考えられる」と共著者であるDr.Nickolas Papadopolos氏はニュースリリースで述べた。

その遺伝子の変異状態が予後判定に利用できるのか、その遺伝子を治療標的にできるのかを決定するにはさらに研究が必要であるとBettegowda氏は述べている。

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野川 恵子、武内 優子 訳
原 文堅 (乳腺科/四国がんセンター)、石井 一夫(ゲノム科学/東京農工大学) 監修
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