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回復期患者の血漿は血液腫瘍患者のCOVID-19からの生還を後押しする可能性

COVID-19陽性の血液腫瘍患者に回復期患者の血漿を投与すると生存率の改善がみられたことが、多施設コホート研究において明らかになった。

「これは、COVID-19に罹患したがん患者の大規模集団において何らかの潜在的効果を示した初めてのCOVID-19治療法です」と、Jeremy Warner医師(米国テネシー州ナッシュビル、ヴァンダービルト大学)が、ロイター・ヘルスに電子メールで述べた。「この発見は、妥当な生物学的論拠と組み合わせれば、この非常に感染リスクの高い患者集団に対する回復期患者血漿の投与を真剣に検討すべきであるという説得力のある議論となります」。

「事前に治療群への割り付けをしないあらゆる研究と同様、この研究は慎重に解釈される必要があります」と、同医師は述べている。「これにより仮説が生まれると思いますが、この一つの研究だけでは、おそらく臨床診療は変わらないだろうと思われます。しかし、真のメリットを真剣に検討すべき十分な証拠が出てきています」。

JAMA Oncology誌で報告されているように、Warner医師らは、COVID-19で入院した血液腫瘍患者966人(平均年齢65歳、男性の比率56%)について COVID-​19 and Cancer Consortium(COVID-19とがんコンソーシアム)の記録データを調査した。

研究チームは、回復期患者の血漿を投与した群143人と無治療対照群823人を比較した。主要評価項目は、30日後の全死因死亡率であった。

潜在的交絡因子を調整した後、回復期患者の血漿を投与した治療は、30日後の死亡率の改善と関連していた(ハザード比、0.60)。この関連性は、傾向スコア・マッチング後も変わらなかった(HR、0.52)。

ICUに入院した患者338人のうち、回復期患者の血漿を投与した患者の死亡率は、投与しなかった患者の死亡率と比較して有意に低かった(傾向スコア・マッチングのHR、0.40)。

同様に、人工呼吸器が必要であった患者227人のうち、回復期患者の血漿を投与した患者の死亡率は、投与しなかった患者の死亡率と比較して有意に低かった(傾向スコア・マッチングのHR、0.32)。

Warner医師は、「理想を言えば、入念に計画された前向きランダム化試験により、これらの研究結果が確認できればよいでしょう。今のところそのようなデータはありませんが、臨床医らは今回の証拠を、入院が必要な重篤 COVID-19の血液腫瘍患者に対する回復期患者血漿の投与を支持する方向性を示すものとみなすでしょう」と、述べた。

関連論説の共著者であるGregory Calip医師(ニューヨーク市、Flatiron Health社)は、ロイターズヘルスへの電子メールで、「がん患者への回復期患者血漿の投与に関する臨床的証拠が緊急に必要で、本研究のように、実際のデータを使用した報告は重要な出発点になります」とコメントしている。

「回復期患者の血漿の投与に関する大半の研究には、がん患者、特に血液腫瘍患者がほとんど含まれていませんが、血液腫瘍患者では疾患の病態と治療によって骨髄の予備能が減弱し、免疫反応が低下し、 COVID-19の合併症が生じる可能性がさらに高まる場合もあります」とも述べた。

Warner医師と同様に、Calip医師も、「血液腫瘍患者における回復期患者の血漿の有効性に関する最も決定的な証拠は、前向きランダム化試験から得られるでしょう。複数の統計学的限界にもかかわらず、この研究で一貫した効果がみられたことは心強いです」と述べている。

同医師は、「血液腫瘍が希少であることに加えて、すでに重篤な病気があってCOVID-19にかかった患者の臨床試験登録が困難であることから、完全に設計されたランダム化試験が短期間内に実施される可能性は低い」ことを認めている。

それでもなお、彼は、「COVID-19のがん患者を研究するためには、例えば、時間に関連したバイアスや選択バイアスの軽減につながるような研究と統計解析がさらに必要です」と述べた。

出典:https://bit.ly/3xC7Nby   https://bit.ly/3j0A5Iw  JAMA Oncology誌 オンライン版2021年6月17日

翻訳畔柳祐子

監修吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

原文掲載日

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