2010/10/05号◆特集記事「タバコ中毒を減少させるためニコチン含有量低減の研究をさらに推進するよう専門家らが要請」 | 海外がん医療情報リファレンス

2010/10/05号◆特集記事「タバコ中毒を減少させるためニコチン含有量低減の研究をさらに推進するよう専門家らが要請」

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2010/10/05号◆特集記事「タバコ中毒を減少させるためニコチン含有量低減の研究をさらに推進するよう専門家らが要請」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年10月5日号(Volume 7 / Number 19)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇
タバコ中毒を減少させるためニコチン含有量低減の研究をさらに推進するよう専門家らが要請

タバコ規制の専門家らは、タバコおよびその他のタバコ製品に含まれるニコチン量の低減に関して、研究をさらに追加することを要請している。ニコチン量の低減については、この専門家らが10月1日付けTobacco Control誌の電子版で発表した記事のとおり、米国で喫煙率に多大な影響を与える可能性がある。しかし、多くの懸案事項が残されているため、集中的で協力的な研究努力が求められている。

2009年の家庭禁煙・たばこ規制法(Family Smoking Prevention and Tobacco Control Act 、FSPTCA)の発効とともにニコチン低減(タバコあたりのニコチンの法的許容量を中毒性が惹起または持続しない程度にまで減らすこと)試験に対する認知度が高まった。この法令により、FDAはアメリカ合衆国におけるタバコ製品の製造、出荷、販売における行政権限を得たが、この行政権限には、ニコチン(タバコの中毒性の原因である主成分)も含みタバコ製品の成分に関する規準を設定することが盛り込まれている。

「FSPTCAで行われる全対策のうち、タバコによる死亡率を大幅に減らす可能性が最も高いのはタバコの中毒性を下げることです」この記事の筆頭著者でNCIの資金援助によるミネソタ大学のTransdisciplinary Tobacco Use Research Center(TTURC:タバコ喫煙超域研究センター)の研究責任者であるDr.Dorothy Hatsukami氏はこう述べている。

続けてHatsukami氏は「中毒性を下げれば喫煙を始めた人を依存症に陥ることから守ることができるでしょうし、すでに依存症である人に対しては禁煙を促すことになるでしょう」と述べている。

NCIのタバコの有害性低減ネットワーク(Tobacco Harm Reduction Network)とミネソタ大学のTTURCが後援して2007年と2009年に行われた2つの会議で、様々な分野の専門家らが一堂に会し、ニコチン低減における科学的な証拠を再考し、今後の研究の優先順位を確認した。これら推奨案は10月1日の記事に発表された(下の囲み記事参照)。

「研究の必要性を認識するためには、人々に私たちと同じ土俵に上がってほしかったのです」。NCIのタバコ制御研究支部の主任で本稿の共同執筆者であるDr.Cathy Backinger氏はこう述べている。「タバコに含まれるニコチンを減らすにはどのようなアプローチの仕方が最も効果的なのか、またそれによってどういった影響が出るのかはいまだ明らかでないため、私たちがこの度特定した疑問に対する答えを得るには多分野に渡ったグループが必要です」。

現在まで、ニコチン低減に関する研究により、ニコチン低減でタバコの中毒性が抑制される可能性があるという概念を裏づける証拠がいくつか示されている。ニコチン濃度が非常に低いタバコを吸うことでそれに切り替えた喫煙者の禁断症状を最小限にでき、また、タバコを吸ってもあまり害がない程度に喫煙本数を長期にわたって減らせることが、研究によって示された。

ある研究では、たとえ禁煙を目的とした試験に参加しなくとも参加者の25%がタバコをやめていた。(この臨床試験の目的は、タバコに含まれるニコチン含有量を徐々に減らすことによって発癌物質の暴露量がどのように変化するか、を検討することであった)また最近公表された別の臨床試験からの予備的データによれば、禁煙支援としてニコチン含有量が0.05mgのタバコを与えられた参加者のうち36%が治療後3カ月禁煙を続けられたのに対し、4mgのニコチンを含む薬用キャンディーを与えられた参加者では20%であった。

未解決のまま残されている重要な疑問といえば、中毒に陥るようなニコチン量の許容限界値はどこか、ということであろう。問題を複雑にしているのは、この境目の量というのが成人と青年とでは異なる可能性があるということである。これは、青年における脳の発達はニコチンの中毒作用の影響をより大きく受けることによる。「男性と女性では閾値が異なる可能性もありますし、人種間で違うことすら有り得ます。明らかにこの分野においてはさらなる研究が必要なのです」と、Hatsukami氏は述べている。

さらにニコチン以外の化学物質がタバコの中毒効果を強めるものを産生しているかどうかについて確認する必要もある。ノルニコチン、アナバシン、モノアミン酸化酵素阻害剤などのタバコに含まれる化学物質は、ニコチンの強化作用を仲介する、あるいはそれ自身に作用がある可能性がある。

「結局のところ、私たちはタバコに含まれるニコチン濃度を減らすことだけを考えるのではなく、タバコ全体の中毒性を評価して減らすことを考えないといけないのでしょう。つまりタバコに含まれるニコチン以外の中毒の原因となる多くの成分や化学物質を念頭におく必要があります」とHatsukami氏は述べている。

「本記事の主なポイントの一つは、ニコチンを減らすということに賛成の立場をとるにせよ反対の立場をとるにせよ、いずれにしても戦略的かつ包括的に研究を進めないといけない、ということを人々に気づいてもらうことです。ニコチン低減は公衆衛生に計り知れない影響を与える可能性があるので、この分野を検討するため研究が必要でありそのための支援が必要でもあるのです」と同氏は述べている。

—Sharon Reynolds

ニコチン低減研究に対する疑問Tobacco Control誌10月1日号に発表された記事で、禁煙の専門家らはニコチン低減研究に関する多くの未解決となっている疑問について特定し、提案された研究課題に対する質問を区分けして以下のようにまとめた。

•異なる集団(例:青年と成人)における中毒症状を示すニコチン量の閾値はどれだけであるか。
•他にどのような影響(例:環境要因)がニコチン量の閾値に関連するのか。
•ニコチン量を減らしたタバコの影響は、ニコチン受容体を含め成人と青年の脳内でどのようなものであるか。
•ニコチン量を減らしたタバコは代償的喫煙(例えばより多くのタバコを吸う、あるいは煙を深く吸い込む)を起こし得るのか、またもしそうであればこのような行為をニコチン代替療法や他の介入治療の併用使用で減らせることができるのか。
•喫煙者の中でも脆弱的集団(例:精神疾患のある人、タバコ製品に対し依存性が高い人)において、ニコチン量を減らしたタバコはどのような影響があるのか、またこのような人々において考えられるマイナスの結果をどうすれば安全に管理できるか。
•ニコチンに加えあるいはニコチンと協調して依存性に影響するタバコ製品の成分やデザイン的特徴とはどのようなものであるか。
•ニコチン量を減らしたタバコのみが販売されることに対し一般の人々はどう反応するであろうか。
•どのようにすればニコチン量を減らしたタバコが公衆衛生上有益であるかを一般に向けて最も効果的に伝えられるか。
•ニコチン量を減らしたタバコを広く普及させた場合に起こりうる予期せぬ出来事にはどのようなものがありうるか、またそのようなリスクをどのように監視して減らすことができるのか。

画像原文参照
【画像下キャプション訳】
ニコチンに対する神経細胞の受容体
(ニコチン性アセチルコリン受容体)
ニコチン
受容体サブユニット
回路が開く
細胞膜
ニコチンは脳の神経細胞の細胞膜上に存在する受容体に結合し、一連の電気的および化学的シグナルを発生することにより、他の脳細胞からのドパミン放出を促す。ドパミンは脳でニコチンの作用を強化する役割を果たす。タバコやタバコ製品のニコチン量を低減することは、その依存性を下げることになる。(出典:NIDA Notes Vol.20, No.2 August 2005

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山下 裕子 訳
田中 文啓(呼吸器外科/兵庫医科大学病院呼吸器外科)監修

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