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長期照射による放射線治療が進行性非小細胞肺癌のよりよい緩和をもたらす

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長期照射による放射線治療が進行性非小細胞肺癌のよりよい緩和をもたらす

Longer Course of Radiation Provides Better Palliation in Advanced NSCLC
(Posted: 01/30/2007) Journal of the National Cancer Institute2006年12月20日号によると、進行した非小細胞肺癌の予後不良とみられる患者において、低い分割線量で、より長期間にわたって放射線治療を受けるほうが、患者の余命を延長させ、対費用効果が良好であった。


キーワード:非小細胞肺癌 放射線療法 緩和ケア

要約
予後不良の進行性非小細胞肺癌患者において、線量を抑えた長期照射による放射線治療のほうが、患者の平均余命が10.7週改善したとオランダの研究者らが発表しました。長期照射は、線量を高めた短期照射よりも高価ではありますが、研究者らは新たなコスト分析において、患者の寿命が延ばせるのでこの高コストにはそれだけの価値があると結論づけました。

出典
Journal of the National Cancer Institute 2006年12月20日号(ジャーナル要旨参照)(J Natl Cancer Inst. 2006 Dec 20; 98(24): 1786-94)

Journal of Clinical Oncology 2005年5月1日号 (ジャーナル要旨参照)(J Clin Oncol. 2005 May 1; 23(13): 2962-70)

背景
非小細胞肺癌(Non-small cell lung cancer ;NSCLC)は、米国における肺癌症例の約80%を占めます。腫瘍が肺を越えて組織や臓器に広がってしまった場合には手術で切除することはできず、強化化学療法と化学放射線治療によって生存率とQOL(生活の質)がある程度は改善されます。しかしながら、患者さんの多くは、こうした治療に耐えられないほどに重症です。

放射線療法はこうした患者さんの胸痛、喀血、嚥下痛、息切れなどといった症状を緩和させることができます。しかしながら、低い分割線量で照射回数を多くして照射期間を長くしたほうがいいのか、それとも、高線量で寡分割照射を行い治療期間を短くしたほうがいいのかという点で、こういった緩和照射に対する最適な照射方法については意見が分かれています。そして、それぞれのコストはどうでしょうか?2005年5月、オランダ人研究者らは、症状管理問題を調査するために計画された試験の結果を、2006年12月にはその試験結果のコスト分析を発表しました。

試験
原典の第3相臨床試験の患者297人は、胸腔内や他の臓器に病巣が広がり手術ができない非小細胞肺癌でした。患者はすべて、治療選択肢として可能な化学療法を試し尽くしたか、もしくは全体状態がよくないために化学療法が行えないかのいずれかでした。患者は1999年から2002年の間に試験に登録されました。

患者は、放射線3Gyを週4~5回で10回照射(長期照射)、または8Gyを週1回で2回照射(短期照射)のいずれかにランダムに割り当てられました。その後、1年間の経過観察が行われました。症状の重症度(疲労、食欲減退、息切れ、胸痛、咳嗽、喀血、嗄声、嚥下痛)と、自身のQOL(生活の質)について、患者さんにアンケートを記入してもらいました。研究者らは、各症状のスコアを各患者の総症状スコアに組み入れました。

また、患者56人のサブグループに記入してもらったコストアンケートのデータを用いて、長期照射と短期照射の「生涯社会コスト」比較も行いました。生涯社会コストには、放射線療法そのもののコストに加えて、患者が通院に要した時間と交通費、入院費、「非公的治療費」(家族、友人、ボランティアなどによる患者ケアのための費用など)、「生存率コスト」(患者が疾患を抱えながら生存していく期間に必要とする健康管理にかかる費用など)などが含まれました。

原典試験の臨床試験責任医師は、オランダ・アルンヘム県のアルンヘム放射線療法研究所のGijsbert W.P.M. Kramer, M.D.でした。コスト分析の臨床試験責任医師は、オランダ・ライデン県のライデン大学医療センターのWilbert B. van den Hout博士でした。

結果
どちらの治療群も平均総症状スコアはほぼ同じで、患者の症状を軽減する点で長期照射と短期照射はいずれも等しく効果的だったことが示されました。症状の軽減は、短期照射の患者のほうがより速やかに得られましたが、長期照射の患者では、より長く持続しました。

生存率に関しても、長期照射の患者のほうが有意に改善しました。長期照射の患者は、1年生存率が19.6%だったのに対し、短期照射を受けた患者の1年生存率は10.9%でした。研究者らは、長期照射の患者の平均余命は38.1週間、短期照射の患者では27.4週間という概算値を出しました。

コスト分析では、研究者らは、長期照射患者の生涯社会コストは、短期照射患者のものよりも、患者一人あたりにつき、$5,326高いと概算しました。「質調整生存年(Quality Adjusted Life Year)」という、生存年数とQOL(生活の質)の両方に関して医療から得られる有益性を評価する概念を用いて、研究者らは、「質調整平均余命」を概算し、長期照射患者では20週間、短期照射患者では13.7週間であると見積もりました。したがって、費用としては長期照射のほうが高くなりますが、高い分だけ患者の生存率も向上するので、このコストは許容範囲であり妥当なものであると研究者らは結論づけました。

コメント
長期放射線照射の有意な生存利点という本試験の知見は、「予後不良のこうした患者さんにとって、非常に素晴らしいニュースです」と、国立癌研究所の癌研究センター放射線腫瘍専門医のAnurag Singh医師は述べています。

米国の放射線腫瘍専門医の多くはすでに長期照射を採用しているとSingh医師が言うように、本研究の結果はこうした治療手段の優位性を裏付けるものです。

「短期照射では、より急速な緩和が得られます」と、同医師は言います。「医師はより早急な緩和をとるか、それとも緩和の持続期間が長いほうをとるかの選択をするわけですが、これらのデータ、特に全生存期間の延長をもたらすという長期照射の優位性という点で、医師は誤ってきたのかもしれません。」

制限事項
Singh医師によると、コスト分析の知見は、わずか56人の患者から得られたデータを元にしたものなので、注意して扱わなければならないとのことです。また、オランダと米国での医療制度には違いがあるので、本研究のコスト概算は米国における放射線療法コストを正確に反映するものではありません。

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(Snowberry 訳・平 栄(放射線腫瘍科) 監修)

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