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IL13-PE38QQR/脳腫瘍を腫瘍の部位で攻撃することで生存を延長

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IL13-PE38QQR/脳腫瘍を腫瘍の部位で攻撃することで生存を延長

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脳腫瘍を腫瘍の部位で攻撃することで生存を延長
Duke University Medical Center(デューク大学医療センター)
2005/10/5

ノースカロライナ、DURHAM -John Sampson, M.D.氏はMeredith Hansonさんの頭蓋内に4本のカテーテルを挿入し致命的な脳腫瘍が存在していた腔内に試験薬を注入する準備をする。でなければ、健全な脳組織の中に潜むほんのわずかの逸脱した癌細胞が、彼が最近除去した腫瘍をすぐに再成長させるであろう。

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それから4日間Hansenさんは、小ポンプによって直接脳に徐々に調合薬を送りながら、家族と談笑したり病院のホールを歩いたりする。新しい薬剤とその標的攻撃はHansenさんの多形性膠芽腫を抑制するための現在とりうる最良のチャンスを与える。多形性膠芽腫は診断から1年以内に患者の命を奪う致命的な脳腫瘍である。

すでにこの試験的治療はDuke Comprehensive Cancer Centerの脳腫瘍センターで第1相および第3相臨床試験に登録された24人の患者の生存期間の中央値を,予測される期間の2倍に延長した。

多形性膠芽腫が原発腫瘍のすぐ周りの正常細胞にどのように包まれているかを考えると、腫瘍に到達するということは大変な業である。カテーテルは健全な脳組織を迂回して、MRI(磁気共鳴画像法)によって解明された残存癌細胞まで正確に薬剤を届ける。強力な流れがコンピューター画像を使い腫瘍空間に薬剤を流し込む。そのコンピューター画像によって医師はおのおののカテーテルを配置する。

ひとたび体内に入ると、薬剤は多形性膠芽腫細胞表面の結合部位であるIL13受容体を発現している脳細胞だけを標的にする。正常細胞はIL13受容体を持たないので薬剤は内部に取り込まれないため健全な組織は薬剤の有毒な副作用を免れる。

このような驚くべき手法により、薬剤は意図するターゲットに到達でき、また健全な脳細胞を迂回することを確実にする。従来の化学療法は経静脈的に行なわれ、薬剤の脳内流入を制限するいくつかの関門を通過しなければならない。

「体のほかの部分では腫瘍を縮小させる薬剤も、脳腫瘍への適用となるとしばしばうまくいきません。一つには薬剤が血液脳関門をほとんど通過しないからであり、もう一つには正常細胞と癌細胞の区別なく薬剤が攻撃するためより少ない投与量に制限されてしまうからです。」とDuke Brain Tumor Centerの神経外科医であるSampson氏は述べた。「腫瘍腔に直接薬剤を注入する方法は、経静脈的化学療法よりはるかに高濃度の薬剤で腫瘍部全体を覆い、毒性を起こしません。

Dukeは、原発性脳腫瘍のもっとも一般的で悪性の型である多形性膠芽腫の標的治療であるIL13-PE38QQRやほかの新薬試験を行なっている国内50のセンターのひとつである。この腫瘍はたいてい40歳から60歳の成人にみられる。

Hansenさんは第一子を出産1ヶ月後に30歳の若さで診断された。HansenさんはDuke大学の治療によって子どもの成長を見守ることができる最大限の可能性が与えられたと述べた。

「Dukeの医師たちは『私たちはどうにもならないとわかるまで治療を試みるつもりです。』と言いました。そしてそれが、私たちにとって希望が芽生えたまさにその瞬間だったのです。なぜならそれまでの数週間私達には悪いニュースしかなかったのですから。」とMeredithさんの夫であるKeith Hansenさんは述べた。

積極的治療が彼女の生存を延長するために重要であるが、これまでの治療はこの腫瘍の凶暴性を抑制するのにほとんど効果がなかった。Sampson氏はconvection-enhanced deliveryと呼ばれる、この新しい薬剤送達技術と、その方法で送達される標的薬剤が彼の患者の奏効の可能性を改善するであろうと期待している。単なる薬剤の流入以上に、その技術は薬剤単独の場合より遠く広く薬剤を運ぶための強力な流れを用いている。

正確なカテーテル配置は技術の成功を決めるカギであるとSampson氏は述べている。特別にデザインされたコンピューターソフトが患者の脳画像を解析し注入の最適速度と深度、病気に冒された部分の最適な流体配分、そして重要な血管の最適な近接度を得るためにどこにカテーテルを配置すればよいかを医師に指示する。カテーテルが表面に近すぎる配置の場合漏液することがある。一方で深すぎたり腫瘍腔から離れすぎる配置は目標に到達できないことがある。

「私たちは患者の脳のMRI画像を撮ります。新しいソフトプログラムのおかげで画像からおのおののカテーテルの配置を特定するデータを引き出すことができます。」とDukeでソフトの開発とテストを援助しているSampson氏は述べた。「この治療の最も困難な点は完璧にカバーできるように脳のいたるところで正確な位置にカテーテルを配置することです。それは乾燥部分がまったくないように芝生にスプリンクラーを配置するのと似ています。」

Sampson氏は以前の直接薬剤注入の試みは単に脳からの漏液が原因でうまくいかなかったと述べた。新しいソフトは特に脳腫瘍の治療のために開発された。そして送達される薬剤が実際に腫瘍組織に届くことを医師が確認できるよう劇的に改善したと彼は述べている。

薬剤そのものが癌細胞だけを非常に選択的に標的にするものである。IL13-PE38QQRは癌細胞の表面に付着するIL-13と呼ばれる腫瘍標的分子を含む。そして薬剤が有毒物(Pseudomonas ExotoxinまたはPE)を細胞内で放出する。有毒物は癌細胞のたんぱく質生成を阻害し即刻死滅させる。

両方の薬剤は普通8から12ヶ月であった生存をはるかに上回る延長を約束したとSampson氏は述べた。IL13-PE38QQRを受けたDukeの患者はこの薬剤を受けなかった患者の生存26週に対して44週生存したことをSampson氏は2004年11月トロントでのThe Society for Neuro-Oncology 会議で報告した。

「この試験的な化合物での顕著な成功話は数多くあります。」とSampson氏は述べた。「何人かの患者は予想の5倍長い生存を果たしています。」

もしこの試験的な治療が効果を示し続ければ、Dukeや全国で追加的な臨床試験がより多くの患者で行なわれるであろう。この試験はIL13-PE38QQRの製造元Neopharm社によって資金援助された。BrainLABは画像ガイド下のカテーテル挿入手術のソフトを開発した。Sampson氏はNeopharm社とBrainLABの有給コンサルタントとして奉職している。

(内村美里人 訳・Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修)

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