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HIF-1放射線の癌殺傷効果を高めるDuke大学の研究/デューク大

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HIF-1放射線の癌殺傷効果を高めるDuke大学の研究/デューク大

原文
放射線の癌殺傷効果を高めるDuke大学の研究
Duke Experiments Boost Radiation’s Cancer-Killing Effects
DukeMed News
2005/8/15

DURHAM, N.C.-研究員らは、癌細胞の中にある癌の増殖を促進する「マスタースイッチ」を阻害することによって放射線照射による制癌効果を大幅に高める可能性があることを明らかにした。放射線治療後、HIF-1と呼ばれるたんぱく質を阻害することによってマウスの中でヒト癌が再び増殖し始めるまでの時間の長さが2倍となったと、Duke Comprehensive Cancer Center(デューク総合がんセンター)の放射線生物学者らは語った。

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個々の治療法のみでは、腫瘍がそれぞれの療法を巧みに回避して新たな増殖方法を見つけるため、治療効果には限界があった、もしくは全く効果がなかった。しかし両者を組み合わせることによって、2つの療法は腫瘍の周囲にある新生血管を増殖させて腫瘍が自らを維持し栄養を与える能力をより強力に阻害した。

 

さらに重要なことは、このようなマスタースイッチである低酸素誘導因子すなわちHIF-1が、腫瘍の増殖を支える血管を増殖させ、栄養を与え、活性化させ、形成するといった癌細胞の能力を、どのようにして促進するのかを研究員らが明らかにしたことである。

 

研究員らが得た答えは、癌患者の今後の治療にとって、複雑だが有望であると、Duke大学の放射線腫瘍学の教授であるMark Dewhirst獣医学博士は語った。

 

Dewhirst博士による指揮のもと医学/医学博士課程の学生であるBen Moeller氏が実施した研究の結果は、2005年8月15日号のCancer Cell誌で発表される。

 

「我々は、治療上タイミングの悪い時に癌細胞のHIF-1を阻害すると効果は得られず、実際に他の癌治療を妨害する可能性があることを確認した。」とDewhirst博士は語った。「しかし、適切な時期にHIF-1を阻害すれば、放射線療法に対する腫瘍の反応は大幅に改善される。」

 

特に、放射線治療直後にHIF-1を阻害すると、新生血管が成長し、照射に耐えて生き残った癌細胞を栄養するのを阻止することが分かった。腫瘍への照射後2日で、検知可能な脈管構造(腫瘍に栄養を与える血管)はほとんどなかった。

 

「2つの大成功を収めた治療戦略、つまり放射線照射で癌細胞を死滅させたあと、HIF-1を阻害することによって血管の生存および再増殖を阻害するという方法を採用した。」とMoeller氏は語った。

 

反対に、研究員たちが照射前にHIF-1を阻害した際には、腫瘍増殖の抑制は全く見られなかった。腫瘍の中心が「壊死状態」になる、つまり死滅した細胞で占められるが、腫瘍の辺縁では増殖が続いた。

 

実際、照射前にHIF-1を阻害すると、照射の効果に悪影響があり、放射線照射が腫瘍の破壊に際して目的としている腫瘍細胞の反応を妨害するとDewhirst.博士は語った。

 

「HIF-1は癌細胞が「アポトーシス」という自殺死の過程を経て死滅していく手助けをする」とDewhirst博士は語った。「照射前にHIF-1が抑制された場合、HIF-1は細胞のアポトーシスに対する感受性を低下させ、その結果、腫瘍細胞がより照射に耐性を持つようになる」。

 

さらに、照射自体はHIF-1レベルを上げるため、活性の絶頂時-照射後-にHIF-1を阻害するのは、最も論理にかなった治療の順序であると、Dewhirst博士は語った。

 

HIF-1は世界中で数々の抗癌治療の焦点になっていると、Dewhirst博士は語った。けれどもHIF-1の癌細胞に対する効果は非常に多岐にわたる-HIF-1は70以上の遺伝子を調節する-ため、無数にある効果を考慮しないで単にHIF-1の活性を抑制すると相反する結果が生じている。HIF-1がもたらす効果の中には、癌を抑制するものもあれば、癌の増殖を促進するものもある。従って、たんぱく質が癌の増殖を促進する境目で、そのたんぱく質を阻害することが重要である。

 

腫瘍内の環境-および実施する治療のタイミング-によって、その治療に対する腫瘍の反応が大きく異なる可能性があると、Moeller氏は語った。

 

「真夏にコートと手袋をつけても何の効果もなく、実際は害になることもあるように、間違ったタイミングと環境下でHIF-1を阻害すると効果は得られない。」とMoeller氏は語った。「しかし,ふさわしい環境下でHIF-1を阻害すると、腫瘍に栄養を与える新生血管の増殖を劇的に阻害することが可能となる。」

 

さまざまな要因が癌細胞におけるHIF-1の作用の仕方に影響する。酸素レベルが低い、すなわち「低酸素」の細胞は放射線療法および化学療法にも反応しない。HIF-1の生成を阻害すると酸素レベルは上昇しないが、低酸素状態によって引き起こされる作用は変化する。

 

同様に、p53として知られる腫瘍抑制遺伝子に変異を持たない腫瘍は、突然変異P53遺伝子を持つ腫瘍よりも、照射またはHIF-1阻害に敏速に反応する。このような要因を理解することによって、研究員らがHIF-1を阻害する最も良い環境を決定する手助けとなる可能性がある。

 

「HIF-1阻害の欠点を最小限にして、その有効性を最大限に活用したい」とMoeller氏は語った。

 

Moeller氏は、研究員が確認した効果はその他のたんぱく質ではなくHIF-1がもたらしたということを裏付けるため細胞のHIF-1を阻害する独特な標的療法を利用した。Moeller氏は、HIF-1の突然変異型を癌細胞に導入し、抗生物質テトラサイクリンにさらすことによって変異HIF-1を活性化させたり不活性化させたりした。

 

この可逆的なスイッチがあったため、チームは、HIF-1が活性化している間および阻害されたときの効果を観察することができた。HIF-1を阻害する薬剤は、以前Duke大学および他の施設で実施された臨床試験で使用されたが、このような薬剤は他のたんぱく質も阻害するため、どの効果がHIF-1に関連するものか、またどの効果が関連していないのかが区別できなかった。

 

チームの次のステップは、化学療法のあとにHIF-1を阻害する効果を試験することである。本研究は米国立癌研究所、ハワード・ヒューズ医療研究所およびAeolus Corporationからの資金提供により実施された。

 

(ポメラニアン 訳・Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修)

 

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