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コロナウイルス(COVID-19)ワクチンとがん

キャンサーリサーチUK

コロナウイルスワクチンには多くの関心が寄せられており、あなたやあなたの大切な人がワクチンについて疑問を抱くのは当然のことです。

専門家は、がんを有する人がワクチンを接種することは重要であり、また、安全であると述べています。ワクチンを接種していれば、がん治療を進めることもできます。

英政府により優先順位が設定されているおり、最初に接種されるのは、ワクチンを最も必要とする人々です。現在、がん患者などの医学的に極めて脆弱な人たちに対して、ワクチンが接種されています。また、がんの手術を受ける予定があれば、手術の2週間前にワクチンが接種されることもあります。

英国では、ファイザー社・ビオンテック社製ワクチン、アストラゼネカ社・オックスフォード大学製ワクチン、モデルナ社製ワクチンの3つのワクチンが承認されています。現在接種されているワクチンは、ファイザー社・ビオンテック社製ワクチンかアストラゼネカ社・オックスフォード大学製ワクチンのいずれかです。モデルナ社製ワクチンは、今年後半に使用できる予定です。

ワクチンとは?

ワクチンとは、いままで接触したことのない病気と戦うために体の免疫系を鍛える薬剤の1つです。感染症で使用されるワクチンは、病気を治療するものではなく、病気になるのを予防しようとするものです。

ワクチンはがんを有する人にどのくらい有効なのでしょうか?

この初期の段階では、がん患者という特別な集団における、ワクチンの具体的な有効性の情報は十分には得られていません。予防接種・免疫合同委員会(JCVI)によると、免疫系が弱っている人に対するワクチン使用について問題はありません。JCVIは、英国保健省に予防接種に関するアドバイスを行う独立した委員会です。

抗がん剤治療(SACT)を受けている人に対し、ファイザー社・ビオンテック社製ワクチンやアストラゼネカ社・オックスフォード大学製ワクチンを用いた試験は行われていません。しかし、両ワクチンは、抗がん剤治療を受けているほとんどの人にとって安全であると、専門家の意見は一致しています(本ページの下の質問を参照)。抗がん剤治療は化学療法などの治療を含むため、免疫系が弱まる可能性があります。

免疫系が弱まるということは、免疫系が正常に働かないことを意味し、感染症から体を守ることができなくなる可能性があります。

そのため、免疫系が弱っている状態でワクチンを接種しても、体が完全な抗体反応を得られない可能性があります。その結果、ウイルスから体を守るのに十分な抗体が作られないことがあります。

つまり、臨床的に非常に弱い立場にある人(免疫系が弱っている人)は、ワクチンを接種した後も、自分の身を守ったり、感染リスクを減らしたりするための助言に従わなければなりません。

ワクチンや医薬品、食品に対して重度のアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こしたことがある人は、ワクチンを接種しないでください。

コロナウイルス(COVID-19)ワクチンとがん治療

具体的なアドバイスについては、かかりつけの医師または専門の看護師に尋ねましょう。

ファイザー社・ビオンテック社製ワクチンとアストラゼネカ社・オックスフォード大学製ワクチンに関する情報は、下記に述べています。同情報は、あくまでも参考程度のものです。

専門家は、SACTを受けている全員がワクチン接種を検討すべきと述べています。また、ワクチン接種をしてもがん治療を進めることは可能であり、ワクチンを接種したからといってがん治療を遅らせる必要はありません。

現在、免疫療法を受けていますが、ワクチンを接種できますか?

免疫療法によって免疫反応が亢進し、有害反応が起こる可能性があります。しかし、両ワクチンによってそうしたことが引き起こされる可能性があることを示す十分なエビデンスはありません。専門家は、ワクチン接種の利点と、ワクチンを接種せずにCOVID-19に感染するリスクとを比較して考るべきと述べています。

免疫療法を受けている人のワクチン接種は、治療サイクルの中のいつでも可能です。

現在、臨床試験に参加していますが、ワクチンを接種できますか?

試験基準でワクチン接種が許可されていない場合や、ワクチン接種が除外基準である場合以外、抗がん剤治療の臨床試験参加中にワクチンを接種することは可能です。

現在治療中ですが、ワクチン接種はいつが最適ですか?

可能な限り、治療開始前にワクチンを接種しましょう。すでに治療を受けている場合、ワクチン接種の最適な時期について医師に相談しましょう。

白血球の値が低い(好中球減少症)場合でもワクチンを接種できますか?

好中球減少症により不調がみられる場合、白血球の値が正常に戻るまでは接種をしないのが理想です。

慢性好中球減少症を有する場合は、ワクチンを接種しましょう。

血小板数が少ない場合や、出血性疾患を有する場合、ワクチンを接種できますか?

安全な接種時期については医療チームが判断します。血小板数と出血リスクによって判断されます。

最近、自家造血幹細胞移植(自身の造血幹細胞)や同種造血幹細胞移植(ドナーから提供された造血幹細胞)を受けたのですが、ワクチンを接種できますか?

造血幹細胞移植を受けた人は、どちらのワクチンも接種することができます。専門家によると、自家造血幹細胞移植や同種造血幹細胞移植を受けた人は、移植から3~6カ月後にワクチン接種が可能です。

移植片対宿主病(GvHD)を有する人や、ステロイドを高用量で予防投与されている人は、ワクチンを接種できないことがあります。その理由として、こうした人たちの免疫系がまだ弱いということがあげられます。

ワクチン接種の最適な時期について、医療チームに相談しましょう。

CAR-T療法を受けていてもワクチンを接種できますか?

CAR-T療法を受けた場合、ワクチン接種が可能かどうかは医療チームに尋ねてください。

放射線治療を受けていますが、ワクチンを接種できますか?

放射線治療を受けている人に対しもワクチン接種は推奨されており、治療中でも接種することは可能です。放射線治療は、化学療法や他の抗がん剤治療のように免疫系に影響を及ぼすということことがないためです。

手術を受ける予定ですが、ワクチンを接種できますか?

繰り返しになりますが、手術を受けること自体がワクチンを接種しない理由にはなりません。 可能な限り、手術を受ける場合は手術の2週間前にワクチンを接種しましょう。

 

がん患者がワクチンを接種できるのはいつですか?

ワクチン接種を最も必要とする人々のため、英政府は優先順位リストを作成しました。優先順位は以下の通りです。

  1. 介護施設に入所している高齢者、介護施設で働く人
  2. 80歳以上のすべての人、医療や福祉の現場で働く人
  3. 75歳以上のすべての人
  4. 70歳以上のすべての人、医学的に極めて脆弱な人
  5. 65歳以上のすべての人
  6. 重度の疾患リスクや死亡リスクが高まる基礎疾患を有する16歳から64歳までのすべての人
  7. 60歳以上のすべての人
  8. 55歳以上のすべての人
  9. 50歳以上のすべての人

優先度の高いグループのいずれにも入っていない一部のがん患者は、極めて医学的に脆弱な人のグループに分類されます。

> GOV.UKのウェブサイトにある優先順位リストについての詳細を読む

ファイザー社・ビオンテック社製ワクチン

2020年12月2日、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)は、英国でのファイザー社・ビオンテック社製ワクチンの使用を承認しました。

同ワクチンは、mRNAワクチンであり、生ウイルスを含んでいません。mRNAワクチンは、細胞に「遺伝子メッセージ」を伝え、抗原を作るように細胞に指示することで機能します。これにより、免疫系がウイルスと戦う抗体を用意します。

ワクチンは、最大12週間間隔で2回接種します。-70℃での保存が必要です。

他のワクチンでは、ほとんどが弱毒化されたウイルスや無害化ウイルスが使用されており、体内にそうしたウイルスの一部(抗原)が注入されます。これにより、免疫系はウイルスと戦うことができる抗体を産生します。

> このワクチンについての詳細は、ファイザー社のウェブサイトを参照。

アストラゼネカ社・オックスフォード大学製ワクチン

2020年12月30日、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)は、英国でのアストラゼネカ社・オックスフォード大学製ワクチンの使用を承認しました。

このワクチンで使用されるウイルスは、通常、チンパンジーにおいて風邪を引き起こすもので、無害化されたものです。このウイルスがヒトに風邪を生じさせることはありません。

研究者たちは、このウイルスを変化させ、コロナウイルスが持つスパイクタンパク質の遺伝子を含むようにしました。このワクチンを接種すると、体が完全なウイルスに曝露することはなく、免疫系がウイルスを攻撃するよう準備します。

このワクチンは、最大12週間間隔で2回接種します。冷蔵庫での保存が可能です。

アストラゼネカ社・オックスフォード大学製ワクチンを用いた試験は、特にがん患者に注目したものではありませんでした。同試験には、以下の疾患を有する人々が参加しています。

  • ●限局性前立腺がん(がんが前立腺に限局しており、他の場所に転移していない場合)
  • ●治療歴のある非黒色腫皮膚がん
  • ●治療歴のある上皮内子宮頸がん(前がん状態)
  • ●がん再発のリスクや、他の部位への転移のリスクが低い

> このワクチンの詳細については、アストラゼネカ社のウェブサイトを参照

モデルナ社製ワクチン

2021年1月8日、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)は、英国でのモデルナ社製ワクチンの使用を承認しました。ファイザー社・ビオンテック社製ワクチンと同様に、モデルナ社製ワクチンもmRNAワクチンです。

モデルナ社は、28日間隔で2回接種することを推奨しています。ワクチンの保存温度は、家庭用冷凍庫と同様の-20℃です。

現時点では、このワクチンががんを有する人にどの程度効果があるかは分かっていません。また、免疫系が弱っている人を対象にした試験も行われていません。

情報を入手次第、更新します。

> ワクチンについての詳細はモデルナ社のウェブサイトを参照

> 詳細は、Cancer Research UKのサイエンスブログ、COVID-19ワクチンががん患者にとって何を意味するのかを参照

翻訳重森玲子

監修田中謙太郎 (九州大学病院呼吸器科)

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原文掲載日

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