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乳癌のハイリスク群において卵巣機能抑制は化学療法と同等に有効

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乳癌のハイリスク群において卵巣機能抑制は化学療法と同等に有効

Ovarian Suppression May Be as Effective as Chemotherapy in High-Risk Breast Cancer
(Posted: 12/06/2006) – 2006年11月1日号Journal of Clinical Oncology誌によると、卵巣機能抑制のための放射線療法によって、閉経前女性の乳癌再発防止は化学療法と全く同等の効果があった。


キーワード
乳癌、卵巣機能抑制/卵巣切除、閉経

要約
ホルモン感受性乳癌をもつ一部の女性は再発の危険性が高く、術後にさらなる治療を行う。この試験では、卵巣機能を抑制するために行う放射線療法に、閉経前女性の再発を予防し存命させる効果が化学療法と同等にみられた。しかし本試験で行った化学療法はもはや標準治療ではないことから、この知見のもつ価値は限られている。

出典
Journal of Clinical Oncology, November 1, 2006(ジャーナル要旨参照)(J Clin Oncol 2006 Nov 1; 31: 4956-62)

背景
乳癌切除術後に、癌再発の危険性が高い一部の女性は、さらに化学療法を受ける。もしもその腫瘍が「ホルモン感受性」である場合(つまり、ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンに反応して腫瘍が増殖する場合)、その女性は抗エストロゲン薬のタモキシフェンや他のエストロゲン抑制薬であるアロマターゼ阻害薬アナストロゾール(アリミデックス®やラロキシフェン(エビスタ®)を服用するよう勧められる。

卵巣はエストロゲンを産生するため、ホルモン感受性腫瘍を有する閉経前女性は卵巣摘出や放射線療法または投薬により閉経を誘発するよう勧められる。この方法は卵巣機能抑制、あるいは卵巣切除として知られている。

試験
スカンジナビアで行われた多施設、第III相臨床試験は、一側の乳房にホルモン感受性の腫瘍が診断された762例の閉経前女性を組み入れた。この女性たちは、腫瘍切除を行ったが遠隔転移はなく、腫瘍のサイズあるいは近位リンパ節に1つ以上の転移があるという理由から、全員が再発の危険性が高い状態にあった。

1990年1月~1998年5月に、この女性達は卵巣機能を抑制する放射線療法か、化学療法のいずれかにランダムに割り付けられた。化学療法はシクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシルの3剤併用(CMF)で行った。

CMFは、この試験を行う時には乳癌の標準治療とみなされていた。しかし1998年の研究で、CMFはドキソルビシン(アドリアマイシン®)のようなアントラサイクリン系薬剤を含む化学療法より劣り、閉経前女性にはタモキシフェンが有益であることが示された。本試験はこの時点で新規患者の登録を中止した。

本試験の研究責任者はデンマークのコペンハーゲン大学病院のDr. Bent Edjlertsen, M.D., Ph.D氏。この試験はデンマークの乳癌共同研究グループ (DBCG)試験89Bとして知られている。

結果
追跡期間中央値8年6ヵ月後に、化学療法群と卵巣機能抑制群の女性の再発率が同等であることが研究者らによって明らかになった。中央値10年6ヵ月後の死亡リスクは卵巣機能抑制群がわずかに高いものの(11%)、統計的有意には至らなかった。つまり、偶然起こりうることであった。

CMF群の副作用は重いものではなかった。57%の患者に血球数の低下が1回以上みられた。中等~重度の悪心や嘔吐は33%でみられ、中等~重度の脱毛は5%のみであった。

卵巣機能抑制群の患者では8例を除いて月経が永久的に止まった。試験開始時に、CMF群では約3分の2の患者に定期的に月経があった。このうちの39%は、最終的には永久的に月経が止まったが、37%では継続あるいは再開し、さらに24%では月経に対するCMFの影響は不明であった。

制限事項
本試験に潜在する制限には、“タキサンとアントラサイクリン系薬剤の時代においては標準治療ではないと一部では考えられるこの化学療法レジメン(CMF)を用いたことと、タモキシフェンを試験に組み入れなかったことが挙げられる”と、ジョンズ・ホプキンス大学のAntonio C. Wolff, M.D.氏ならびにNancy F. Davidson, M.D.氏は論説欄に記す。

彼らはまた、この試験は卵巣機能抑制がCMF化学療法に“劣らない”ことを示すために計画された試験であり、そういった試験デザインでは、正確な数値を示すためには、この試験で登録された例数よりも多くの患者を必要とするだろう。
このことは、CMFは最終解析結果が示唆した結果を上回る有益性を示し得た可能性があることを意味している。

コメント
国立癌研究所にある癌研究センターの臨床腫瘍学者Jennifer Eng-Wong, M.D氏は、出産能力の保持に関心のある女性は、CMFも閉経を誘発する可能性があることを理解しておくべきであると強調した。“われわれは、妊孕性に対するCMFの最終的な影響を調査するため、これらの患者を長期間追跡する必要がある”と彼女は述べたが、CMFはこのような患者らに対してはもはや使われることがまれであることにも言及した。

卵巣機能抑制は、化学療法後に卵巣機能を保持する若いホルモン受容体陽性の患者に対して十分に利益をもたらしうることを、Wolff氏とDavidson氏は指摘した。同氏らは、新しいホルモン抑制剤を使用することは、一時的な卵巣機能抑制を実現するかもしれない、“それによって早期閉経の健康に対する長期的な影響を最小限にすることが可能であろう”と書き記している。

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(Okura 訳・平 栄(放射線腫瘍科) 監修)

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