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2010/10/19号◆特別リポート「ホルモン療法と乳癌死亡率のわずかな増加との関係」

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2010/10/19号◆特別リポート「ホルモン療法と乳癌死亡率のわずかな増加との関係」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年10月19日号(Volume 7 / Number 20)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇
ホルモン療法と乳癌死亡率のわずかな増加との関係

過去に行われたWHI(女性健康イニシアチブ)スタディの実施中に、更年期障害の治療としてホルモン補充療法のエストロゲン・プロゲスチン併用投与を受けた女性は、補充療法を受けなかった女性よりも浸潤性乳癌の発生率が高く、またその場合、リンパ節転移が起こりやすい傾向にあることが、研究に参加した女性への11年間に及ぶ追跡調査の結果から明らかになった。さらに、併用ホルモン補充療法を受けた女性は、プラセボ投与群の女性に比べて乳癌および他の原因による死亡率が若干高かったことが本日付のJournal of the American Medical Association (JAMA)誌に掲載された。

今回のWHI研究の報告には、乳癌の分類ごとの発生率だけではなく死亡率も初めて取り入れられた。「驚いたことに、乳癌の発生率はどのタイプの癌においても上昇しているとみられます」と、ハーバーUCLA医療センターロサンゼルス生物医学研究所の試験責任医師であるDr. Rowan T. Chlebowski氏は述べた。

当初のWHIスタディには、50歳から79歳までの閉経後女性16,600人以上が参加し、併用ホルモン補充療法群とプラセボ投与群に無作為に割り付けられた。今回の解析は、過去の参加者のうち生存している12,700人(83%)以上から追加追跡調査の再同意を得て行われた。長期間に及ぶ追跡調査によって、今まで未解決だった例えばホルモン剤の使用により乳癌死亡率が増加するかどうか、あるいは発生する乳癌のタイプに影響を与えるかどうか、などの疑問に対する答えが明らかになった。

「今回の解析により、ホルモン剤の使用が死亡率にも影響することが確認されました」と、付随論説にも書いているが、スローンケタリング記念がんセンターのDr. Peter B. Bach氏は語った。「またこれにより、ホルモン剤は生命予後に関係しないおとなしいタイプの癌と関連するという過去の報告が否定されたのです」。

一部の研究では、ホルモン補充療法によって乳癌の発生が増加するかもしれないが、ホルモン剤を使用しなかった場合の乳癌に比べれば、性質がおとなしいタイプの癌が多く、早期癌であり、良好な予後を示すと報告されていた。しかしバイアスがかかりにくいランダム化対照臨床試験で行われたWHIスタディの結果はこれらの見解を否定したのである。

「これまでもWHIスタディの結果では、全てのタイプの乳癌で発生リスクが上昇することが常に示唆されてきました」と、共著者でフレッドハッチンソン癌研究センター所属のDr. Garnet Anderson氏はEメールで述べた。「そして今このデータは、エストロゲンとプロゲスチンの併用投与の影響を受けた癌のほうが、進行癌であることが多く、おそらく致死的な癌である可能性を強く示唆しているのです」。

プラセボ群に比べて、エストロゲン+プロゲスチンの併用投与群では、統計学的に有意に浸潤性乳癌の発生数が増加していた(295人対385人)。ただしつけ加えれば、ホルモン剤投与群における乳癌の発生率は全分類にわたって増加していたものの統計学的には有意差は無く、有意差はリンパ節転移の有無のみに認められた(43人対81人)。

死亡率に関しては、併用ホルモン補充療法群では、プラセボ投与群に対し、乳癌による死亡数がより多く(女性1万人あたり年間2.6対1.3)およびすべての死亡原因を含む全死亡数も多かったのである(女性1万人あたり年間5.3対3.4)。

「死亡率に影響することはわれわれ全員が予想していました。おそらくこの影響はわれわれが示した乳癌発生率に近づいていくだろうと思われます」と、Bach氏は述べた。

ホルモン剤使用者における乳癌死亡率の増加はわずかではあるが、増加していることには変わりはないと、NCIの癌予防部門に所属し、同研究所のWHIの渉外担当者であるDr. Leslie Ford氏は指摘した。「これが通常の癌なのです。すなわち生命に関わる腫瘍です。今、このデータは皆さんがこの癌により死亡するかもしれないことをはっきり示したのです」。

WHIの試験責任医師らによる昨年の報告によると、併用ホルモン補充療法による肺癌発生率の増加は認められなかったものの、肺癌での死亡数は増加したとのことである。今回の結果と合わせると、女性の更年期障害に対する治療によって、女性における2つの主要な癌による死亡数は増加する可能性があると、Chlebowski氏は述べた。

「併用ホルモン療法を新薬に例えるならば、おそらくその薬は承認されないだろうと思います」とも述べている。

肺癌および乳癌の死亡リスクが軽減されない限り、他に症状が改善する治療法がない女性に対して行われる短期補充療法を除いて、併用ホルモン補充療法の使用は保証されないと、本研究の著者らは記した。また併用ホルモン補充療法に対する安全な投与期間を正確に定めることは不可能であるとも述べている。

Bach氏は、論説で同じ見解を繰り返し述べている。つまり、短期のホルモン補充療法を行っている医師は、この治療が厳密に臨床試験による検証がなされているわけではないこと、さらに患者に対する将来的な悪影響についてはまだ不明であることを認識するべきであるということである。患者にホルモン補充療法のリスクとベネフィットについて説明したとしても、その根拠は推測の域を出ないと述べた。

「これらのホルモン剤の短期投与が安全であるという見解は、エビデンスあるいはデータに基づいたものではありません」と、Bach氏はインタビューで答えた。

この治療法が有害ではないかとの可能性は2002年から明らかにされてきたが、米国だけでも毎年何千万という併用ホルモン補充療法が行われてきた。Chlebowski氏は、既にホルモン剤を服用している女性は、時に起こったり起こらなかったりする更年期症状が本当に改善されているのかどうかを確かめるために、一時ホルモン剤の休薬を主治医に相談する必要があるだろうと述べている。

一方、更年期障害に対するホルモン剤補充でない療法の開発が行われている。2008年、米国国立衛生研究所(NIH)は、有望な治療法についての臨床試験を実施するためのリサーチネットワークを結成した。Anderson氏によると、エスシタロプラムに関する臨床試験の初の中間結果が、最近ある学会で発表され、現在投稿中であるとのことである。さらに2つの臨床試験が計画されている。

2002年にWHIスタディから最初の報告がなされてから、米国における乳癌発生率が大幅に減少しているが、研究者らによると、それは併用ホルモン療法を控えたことに起因するのではないかと考えられている。今回の結果から、研究者らは、将来米国では乳癌の死亡率も低下するだろうとも予測している。

— Edward R.Winstead

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栃木 和美 訳
大渕 俊朗(呼吸器・乳腺内分泌・小児外科/福岡大学医学部)監修

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