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パクリタキセル維持療法は転移性乳癌の進行を遅らせない

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パクリタキセル維持療法は転移性乳癌の進行を遅らせない

Maintenance Paclitaxel Does Not Delay Progression of Metastatic Breast Cancer
(Posted: 10/04/2006) Journal of Clinical Oncology2006年8月20日号によると、パクリタキセル(タキソール)の初回化学療法後に病勢の進行が止まった転移性乳癌の女性において、その後のパクリタキセルを継続することによってさらに利点が上乗せされることはない。


キーワード 乳癌、パクリタキセル(タキソール®)、維持療法

要約
第3相臨床試験によれば、パクリタキセル(タキソール®)による初回化学療法後に病勢の進行が止まった転移性乳癌の女性は、その後パクリタキセルを継続することによってさらに利益を得ることはありませんでした。「維持」療法を受けた患者の再発率は、初回化学療法が成功した後に化学療法を中止した患者と同じでした。

出典 Journal of Clinical Oncology2006年8月20日号(ジャーナル要旨参照)(J Clin Oncol 2006 Aug 20; 24: 3912-18)

背景
乳癌が他部位へ広がった(転移した)場合、治療によって治癒することはまれですが、時に症状が軽減し、患者の寿命が一般的な生存期間の中央値18~24ヵ月を超えて延長されることもあります。病気の性質によっては、癌の広がりを抑制し、遅延させる方法として、化学療法がしばしば推奨されます。そのような化学療法には通常、パクリタキセルまたはドセタキセルなどのタキサンが含まれます。

初回化学療法によって癌の進行が止まった場合、患者は化学療法を継続すべきでしょうか? これまでの試験で得られた知見からは結論が出ていませんでしたが、多くの医師は再発のさらなる遅延に望みをかけて、この維持療法を推奨しています。しかし、その後の毒性が維持療法を続けるほどのものかどうか明らかにするには追加研究が必要です。

試験
この第3相臨床試験は、転移性乳癌に対する第1選択(初回)化学療法によく反応した患者が、パクリタキセルを継続的に使用することによって利益が得られるのかどうかを試験するためにデザインされました。1998年4月~2003年10月に、転移性乳癌と診断された女性459名が、パクリタキセルとエピルビシンまたはドキソルビシンの併用投与を5ヵ月間受けました。

この初回化学療法後、病状が安定し、癌がそれ以上進行しなかったため、患者255名が本試験に適格となりました。これらの患者は、パクリタキセル単独継続投与(維持療法)群または再発まで無治療となる観察群のいずれかに無作為に割り付けられました。維持療法では、3時間の点滴を3週間に1回、8コース実施しました。

研究者らは、全患者を対象として3ヵ月ごとに診察を行い、副作用について評価し、いつ癌が再発したかを記録しました。
2003年9月、データの中間解析により、パクリタキセル維持療法から利益が得られる可能性がきわめて低いことが示されたため、本試験は早期中止となりました。

試験責任医師は、国立癌研究所(イタリア、ジェノヴァ)のAlessandra Gennari医学博士でした。試験は通称MANTA1試験と呼ばれています。

結果
試験が早期中止となったこともあり、研究者らは無作為に割り付けた患者255名中215名に基づいて最終結果を出しました。
パクリタキセル維持療法群109名では癌進行までの時間の中央値は8ヵ月であるのに対し、観察群106名では9ヵ月となり、統計的有意差は認められませんでした。2年目の死亡リスクでも有意差は認められず、両群とも57%でした。

パクリタキセル維持療法群の3分の1にみられた主な副作用は感覚神経障害で、疼痛、しびれ感、および全身脱力として発現しました。パクリタキセルによって、109名中25名に白血球数減少が起こりました。
全患者を対象として、生活の質に基づく評価が現在実施されているところであり、まだ発表されていません。

コメント
「転移性乳癌患者に対しては、第1選択療法が成功した後、化学療法を継続することが一般的な治療方針となりました。」と国立癌研究所の癌治療診断部門(National Cancer Institute’s Division of Cancer Treatment and Diagnosis)の乳癌専門医Jo Anne Zujewski医師は述べています。

「しかし、以前の試験ではこの方針を支持する明確な証拠は得られず、これらの結果はむしろ患者には化学療法の「休薬期間」を安全に与えられるということがより強く示唆されています。われわれは毒性の低い、より優れた治療法を開発する必要があります」と、彼女は述べています。

制限事項
Zujewski医師は、現在のパクリタキセル維持療法は通常週1回投与されており、本試験より3倍も多いと指摘しています。
「これはもはや最適な投与スケジュールとは言えないと考えていますが、本試験がデザインされた時点で入手可能であったエビデンスに基づいて決定しました」と、研究者らは書いています。

また、Zujewski医師は、この分野の研究は対象集団を明確に定義する必要があると述べています。「最初の患者のうち維持療法に無作為割り付けするのに十分な反応を示した患者がわずか55%であったという事実から、この結果が当てはまるのは予後がより良好な患者に限定されます」

(Oyoyo 訳・Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修)

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