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エルロチニブ(タルセバ)は進行肺癌において生存期間を延長する

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エルロチニブ(タルセバ)は進行肺癌において生存期間を延長する

Erlotinib (Tarceva®) Extends Survival in Advanced Lung Cancer
(掲載:2004/06/05、更新:2006/08/30) 2004年ニューオーリンズで開催されたASCO会議での報告によると、エルロチニブ[Erlotinib] (タルセバ[Tarceva®]) は、標準化学療法後進行した非小細胞肺癌患者の生存期間を延長した。


キーワード  非小細胞肺癌、エルロチニブ(タルセバ®)。

要約
エルロチニブ(タルセバ®)により、標準化学療法後も進行し続ける進行非小細胞肺癌患者の生存期間が延長します。

出典  New England Journal of Medicine2005年7月14日号(ジャーナル要旨参照)。

背景
標準化学療法を試みる進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者は、支持療法を選択した患者より数ヶ月長く生存します。

標準化学療法に対する代替治療薬となりうるものとして、エルロチニブ(タルセバ®)が挙げられます。これは標的薬の1つであり、癌細胞を特異的に標的とするため、正常細胞にはあまり障害を与えません。錠剤であるエルロチニブは、上皮成長因子受容体(EGFR)と呼ばれる蛋白質を標的とします。細胞分裂を促進させるEGFRは、非小細胞肺癌の多くの症例を含むさまざまな癌細胞の表面上に異常なほどの高値で認められます。研究者らは、エルロチニブがEGFRを阻害することで腫瘍の増殖を抑制できるであろうと考えています。

2004年に研究者らは、NSCLC治療歴のある患者を対象として第2相試験を行ったところ、12%の患者の腫瘍にエルロチニブ投与が奏効したと報告しました。しかし、エルロチニブにより患者がより長く生存できるかどうかは明確ではありません。

 
本稿に記載した第3相試験は、標準化学療法がもはや奏効しない進行性NSCLC患者を対象として、エルロチニブにより生存期間が延長されるかどうかを調べるために計画されました。

試験
 2001年8月~2003年1月に、1コースから2コースの化学療法後も進行し続ける進行NSCLC患者731人を登録しました。患者を2つの群にランダムに割り付け、1つの群(488人)にはエルロチニブ、もう1つの群(243人)にはプラセボを投与しました。この試験は二重盲検で行いました。二重盲検とは、患者が受ける治療について、患者と医師のどちらにも知らせないことを言います。

総計731人のうち472人が、研究者らが腫瘍の試料を採取して分析すること(組織バンクと呼ばれる)に同意しました。この組織分析の目的は、生存期間および腫瘍の奏効とEGFR(エルロチニブの標的分子)発現の特別なパターンとの関連性について検討することでした(EGFRは癌細胞だけではなく、多くの細胞上にあります。また、これは全ての患者の癌細胞にあるわけではありません)。分子分析の結果は同ジャーナル記事にて別に報告されました。主著者は、オンタリオ州にあるトロント大学のMing-Sound Tsao医学博士です(ジャーナル要旨参照)。

また、この試験の試験統括医師は、トロント大学のFrances A. Shepherd医学博士でした。この試験は、米国国立癌研究所のカナダ臨床試験グループによって調整され、一般的にBR.21試験と呼ばれています(試験実施計画書の要約参照)。

結果
エルロチニブ群における生存期間中央値は6.7ヶ月で、一方、プラセボ群では4.7ヶ月でした。1年経過時点で、エルロチニブ群では31%、プラセボ群では22%が生存していました。

癌が進行するまでにかかった期間はエルロチニブ群で2.2ヶ月で、プラセボ群の1.8ヶ月よりも長期でした。これらの全ての結果は統計学的に有意でした。さらに、エルロチニブ投与を受けたより多くの患者が、咳、疼痛および呼吸困難など、進行NSCLCの重要な症状における改善を報告しました。

細胞試料を提供した患者の半数以上に、EGFRを発現した腫瘍が認められました。この試験から、そのような腫瘍に対してエルロチニブがより良好に奏効したこと(11%、一方、EGFRを発現しない腫瘍を有する患者では4%)が示唆されました。また、EGFR分子の発現が多い腫瘍を有する患者では、さらによく奏効しました。以前実施された試験では、EGFRの特異的変異はエルロチニブに対する良好な奏効率と関連するであろうということが示唆されていました。しかし、BR.21試験ではこの所見を確認することはできませんでした。

研究者らは、ある一部の患者(アジア人、女性、腺癌患者、非喫煙患者)はエルロチニブに対して奏効を示す傾向が強いことを見出しました。これらの結果は、他の多くの試験結果を裏付けました。

エルロチニブ投与を受けた患者は、より強い毒性の副作用を発現しました。例えば、エルロチニブ群の9%は、中等度~重篤の発疹を呈しましたが、プラセボ群では認められませんでした。エルロチニブ群全体で、5%の患者が毒性作用のためにエルロチニブの服用を中止しましたが、プラセボ投与患者では2%に過ぎませんでした。

BR.21試験の結果は当初、米国臨床腫瘍学会の2004年度総会で発表されました。

この試験を元とした「生活の質」分析は、2006年8月20日発行のJournal of Clinical Oncologyに掲載されました(ジャーナル要旨参照)。この分析から、エルロチニブにより腫瘍関連の症状および患者の生活の質に関する重要な面が改善されることが判明しました。

制限事項
関連する論説にて、米国国立癌研究所のDivision of Cancer Treatment and DiagnosisのJames H. Doroshow医学博士は、組織試料は全患者の約半数からしか採取されていないことを指摘しました。このことは、本試験の分子分析部分において「導き出され得る結果の効力を明らかに低下させた」と述べています。

また、研究者らは標準化された方法で組織試料を採取しませんでした。すなわち、初回手術にて採取したときもあれば、その後の生検で採取したこともありました。このことにより、EGFRのどの特性が腫瘍細胞を最もエルロチニブに奏効させるのかということについて確実な結論を導き出すことが困難になりました。

コメント
この試験は重要な試験です。なぜならば、この患者集団において「生存期間に関する有意な有益性を示した、初めてのEGFR標的治療であるからです」とShepherd博士は述べました。今、これらの患者には、「毒性は最小限でありながら生存期間を延長させる選択肢があります」。

(齊藤芳子 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

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