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デキサメタゾンは放射線療法にともなう吐き気と嘔吐の抑制に役立つ

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デキサメタゾンは放射線療法にともなう吐き気と嘔吐の抑制に役立つ

Dexamethasone Helps Control Radiation-Induced Nausea and Vomiting
(Posted: 08/28/2006) Journal of Clinical Oncology2006年7月20日号によると、胃の周辺に放射線治療を受けた患者の標準的支持療法にステロイド剤のデキサメタゾンを加えると、有意に、良好な嘔吐の完全制御と嘔気レベルの低下をもたらし、治療サイクル中の応急的な制吐剤の使用頻度を減少させた。


要約
胃部に放射線治療を受けている患者の標準的治療にステロイド薬のデキサメタゾンを加えることで治療期間中における嘔吐を抑制し、嘔気を軽減し、さらに嘔吐抑制剤の緊急使用頻度が低くなりました。デキサメタゾンの追加はこういった患者の治療に有用である可能性があります。

出典  2006年7月20日発行 Journal of Clinical Oncology(ジャーナル要旨参照)(J Clin Oncol 2006 Jul 20; 24:3458-64)

背景
放射線治療は様々な癌種に対する重要な治療のひとつです。しかし残念なことに、患者の生活の質を阻害する副作用も引きこします。副作用は身体のどの部分に放射線治療を
施しているかによって異なってきます。胃、腹部、骨盤への放射線治療は嘔気や嘔吐を引き起こすことが多いです。

現在、一般的にはオンダンセトロン[ondansetron](ゾフラン[Zofran])という薬剤が放射線治療期間中の嘔気と嘔吐を抑制する目的で使用されています。最近の臨床試験でステロイド薬であるデキサメタゾンも新たな副作用を引き起こすことなく嘔気、嘔吐を抑制する効果があると言われています。下記に記載された試験では、オンダンセトロン単剤と比較してオンダンセトロンとデキサメタゾンの併用療法が放射線療法に伴う嘔気と嘔吐に効果があるかどうか検証しました。

試験
腹部、骨盤、または両方に分割放射線照射療法(少量かつ同量の放射線を数日間にわけて照射する放射線療法)を受ける予定の患者がこの試験に参加することができました。204人の適合患者のうち、研究者らは無作為に103人をオンダンセトロン単剤療法(標準治療グループ)、101人をオンダンセトロンとデキサメタゾンの併用療法(試験グループ)に分けました。

どちらのグループでも、患者は初回5回の分割照射まではオンダンセトロン1錠を1日2回服用しました。試験グループの患者は1日1回、1錠のデキサメタゾンを初回照射から5回目の照射までの間服用しました。標準治療グループはデキサメタゾンの代わりにプラセボ薬を服用しました。

どちらのグループの患者も「緊急キット」と呼ばれるものを受け取っています。このキットは初回5回の分割照射中にオンダンセトロン、デキサメタゾンのどちらか、または両方を服用しているにもかかわらず嘔気や嘔吐が改善しない場合に服用する別の治療薬が入っています。

患者は1~15回目の照射期間中、発現したすべての症状を記録していました。研究者らは、2回にわたって嘔気と嘔吐の抑制について評価を行いました。

・併用療法は初回5回の分割照射期間中、嘔気と嘔吐を抑制するという点においてオンダンセトロン単剤よりも効果がみられるかどうか
・併用療法は分割照射1-15回目の間、嘔気と嘔吐を持続的に抑制するという点においてオンダンセトロン単剤よりも効果がみられるかどうか

研究者らは、副作用、嘔吐抑制剤の使用、QOLについてもグループ間で比較しました。

結果
1-5回目の分割照射における、嘔吐の完全または部分的抑制に関しては2つのグループ間に統計学的有意差は認められませんでしたが、併用療法を受けていた患者では、嘔気の完全抑制について有意な傾向がみられました。1-5回目の分割照射において、嘔吐抑制剤を服用した患者の数に関するグループ間の有意差はみられませんでした。

しかしながら、デキサメタゾンを追加することで嘔吐の完全抑制、嘔気のレベル、緊急時の嘔吐抑制剤の使用については試験の期間中(分割照射1-15回目)有意に改善されました。同じ期間中、嘔吐の部分的抑制、嘔気の完全抑制について有意差は認められませんでした。

デキサメタゾンの追加によって、オンダンセトロン単剤と比較して有意に副作用の発現が増加するということはありませんでした。全体として、最もよく見られた副作用は軽度の便秘、頭痛、胃のむかつきでした。デキサメタゾンを服用していた患者の一人は胃潰瘍を発現しました。デキサメタゾンの投与で、全体的なQOLの改善の傾向がみられました。

制限事項
医師は1-5回目の分割照射期間中にすべての患者に対して機械的にデキサメタゾンを投与することを躊躇するかもしれません、と米国国立癌研究所癌研究センターの放射線腫瘍医であるAnurag Singh医師は述べています。なぜなら、患者の嘔気の多くはオンダンセトロン単剤で完全に抑制できる場合が多いからです。

この研究で答えられていない疑問は、もし患者が「治療の終わりに嘔気を発現した場合、救済措置としてデキサメタゾンを使用することができますか?」ということです、とSingh医師は説明します。この試験では、デキサメタゾンは試験の終わりに嘔気と嘔吐を低減しましたが、この場合デキサメタゾンは放射線治療の開始時から投与されていたのです。

コメント
「私達が実施した試験は主用評価項目(投与1日目から5日目にかけて、患者の嘔吐と嘔気の完全抑制の割合と定義)に関しては統計学的有意差を示しませんでしたが、[QOL]データと同様に副次的評価項目に関する試験結果はデキサメタゾンの併用の有益性を示唆しています。」とこの試験の著者は述べています。
彼らは、絶対的にはデキサメタゾンは15日間の試験期間において嘔吐の完全抑制に11%の有益性を示し、嘔気の完全抑制には6%の有益性を示した、と話しています。

しかしながら、NCIのSingh医師は、患者の中には他の患者よりもステロイド剤対して高い耐用性がある患者もいるため、デキサメタゾンのオンダンセトロンとの併用は患者の一般状態によって患者ごとに検証されるべきであると述べています。

(Terashima 訳・平 栄(放射線腫瘍科) 監修)

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