NilotinibとDasatinibはPh陽性白血病に有効かも知れない | 海外がん医療情報リファレンス

NilotinibとDasatinibはPh陽性白血病に有効かも知れない

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

NilotinibとDasatinibはPh陽性白血病に有効かも知れない

Nilotinib and Dasatinib Are Safe, Potentially Effective Treatment for Ph-Positive Leukemias
(Posted: 07/12/2007) New England Journal of Medicine2006年6月15日号によると、2つの標的治療nilotinibとdasatinibは、慢性骨髄性白血病とPh陽性の急性リンパ性白血病患者に安全であり、有効かもしれない。


キーワード 慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、nilotinib、dasatinib,イマチニブ(グリベック®)

要約
2種類の新しい標的治療薬―nilotinibとdasatinib―はイマチニブ(グリベック[Gleevec®])の投与を受けられないか、あるいは旧薬剤に抵抗性となった慢性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病の患者に安全に投与できることが臨床試験の早い段階でわかりました。2種類の新薬はまた慢性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病で有望な抗癌活性が見られました。

出典 New England Journal of Medicine 2006年6月15号

背景
慢性骨髄性白血病(CML)のほとんどのケースは骨髄の造血細胞における突然変異染色体と関連しています。フィラデルフィア(Ph)染色体とよばれるその染色体は未成熟で低機能の白血球の過剰産生につながる異常タンパク質を生成します。

フィラデルフィア染色体はまた急性リンパ性白血病(ALL)の患者で見つかっています。これらの患者はPh陽性ALLであると言われています。

イマチニブ(グリベック)という薬はCML治療に大変革をもたらしました。イマチニブは標的治療で、フィラデルフィア染色体によって作られた異常タンパク質に作用し、正常細胞への影響はほとんどありません。しかし、CMLはイマチニブに耐性を示すようになることがあります。nilotinibとdasatinibの二つの標的薬剤はイマチニブ耐性CMLの治療のために開発されました。薬剤は共にイマチニブの標的となる同じ異常タンパク質に対して効果がありますが、作用が少し違っています。

ここに記述する二つの試験は、nilotinibとdasatinibに対する第Ⅰ相臨床試験です。第Ⅰ相臨床試験は患者に投与した場合に重大な副作用を引き起こさない範囲での最大の投与量を見いだすために行われます。この臨床試験を行った研究者たちは新薬が体内の疾患に対して有効であると考えられる予備的証拠も探しています。研究者たちは第Ⅰ相臨床試験での腫瘍反応の高い割合を頻繁に観察するわけではありませんが、CMLに対する標的療法ではそれが見られていました。

試験1
2004年5月から2005年5月までに登録された患者についての第Ⅰ相臨床試験は、安全に投与できるnilotinibの最大量(最大耐量とよばれています)を調べるために行われました。研究者たちはまた、薬剤の効果の予備的見解を得るために、イマチニブ耐性CMLとPh陽性ALLがnilotinib療法に反応するかどうかを観察しました。

臨床試験に登録された116人のうち17人は慢性期CMLで、56人は移行期CML、33人は急性転化期CMLで、10人はPh陽性ALLでした。

患者は順番に9つのグループに割り当てられ、各グループごとに薬剤の投与量を増やしていきました。投与量は1日1回50~1200mg、1日に2回400~600mgに及びました。疾患が低投与量に反応せず、顕著な副作用を発現しない患者は高い投与量を受けることが許可されました。

治療のサイクルは28日間でした。血液と骨髄のサンプルが薬剤への反応を評価するために採取されました。血液学(血液)反応は、血液中の過剰な未成熟白血球循環の減少や排除でした。細胞遺伝学(細胞)反応は、骨髄でのフィラデルフィア染色体の減少や排除でした。

試験1の結果
nilotinibの最大耐量は1日に2回600mgと測定されました。次に続く第Ⅱ相臨床試験では、研究者たちは1日に2回400mgから始めることを推奨しました。

nilotinibに対する反応はCMLの全期、特に慢性期で見られました。

・慢性期CMLの17人において、12人は活動性疾患(異常白血球のが検出可能)   で、5人は正常な末梢血数値でしたが細胞遺伝学的異常がみられました。活動性疾患をもつ患者の92%は完全な血液学的反応があり、慢性期CMLの全患者の53%は細胞遺伝学的反応を示しました。

・移行期CMLの患者の56人中51人は活動性疾患でした。活動性疾患のうち74%は血液学的反応があり、移行期CMLの全患者の55%は細胞遺伝学的反応を示しました。

・急性転化期CMLの患者33人中13人(39%)は血液学的反応があり、9人(27%)は細胞遺伝学的反応を示しました。

これに対して、血液学的再発のALLの患者10人中1人は一部血液学的反応があり、微小残存病変(血液中の異常細胞はみられませんが、細胞遺伝学的異常がありました)の患者3人中1人は完全な細胞遺伝学的反応を示しました。(ジャーナル要旨参照)

試験2(Dasatinib)
dasatinibの最大耐量を求めるために行われたこの第Ⅰ相臨床試験では、2003年11月から2005年4月までに84人が登録されました。Imatinibに耐性あるいは服用できないCMLとPh陽性ALL の患者が登録されました。

40人は慢性期CMLで、11人は移行期CML、33人は急性転化CMLあるいはフィラデルフィア染色体陽性ALLでした。72人はイマチニブ耐性で、12人は不耐性(薬剤に対して容認できない反応を示す)でした。

患者は16グループの1つに割り当てられ、それぞれ薬剤の量を増やしながら投与を受けました。慢性疾患の患者の投与量は1日に1回15~180mg、1日に2回25~70mgでした。さらに進行したCMLあるいはPh陽性ALL の患者の投与量は1日に2回35~120mgでした。

nilotinibの臨床試験と同様に、血液と骨髄サンプルは薬剤に対する血液学的反応と細胞遺伝学的反応の評価に使われました。

試験2の結果
dasatinibの最大耐量は臨床試験において確定されませんでした。血液学的反応が1日に50mgあるいはそれ以上で見られたのに対し、細胞遺伝学的反応にはさらに多くの量が必要でした。毒性によって臨床試験を中止された患者はいませんでした。

Dasatinibに対する反応はPh陽性ALL とCMLの全期、特に慢性期で見られました。

・慢性期CML40人の92%は完全な血液学的反応で、45%はメジャーな細胞遺伝学的反応を示しました。

・移行期CML、急性転化期CML、Ph陽性ALLのうち70%はメジャーな血液学的反応を示しました。25人は細胞遺伝学的反応も示しました。

明らかにdasatinibは、イマチニブに耐性を持つようになった患者に細胞遺伝学的作用を起しました。かなりの数の患者が高度の副作用を発現し、最も見られたのは血液細胞生成の減少でした。しかし、これらの副作用は一般的に治療の中断や投与量を減らすことによって消失しました。イマチニブに不耐性の患者でもdasatinibの副作用は耐えられることがわかりました。(ジャーナル要旨参照)

コメント
一般的に大規模な第Ⅱ相と第Ⅲ相臨床試験は薬剤がきわめて有効でありほかの可能な療法より優れているかどうかがわかる前に行われる必要があります。しかし、nilotinibやdasatinibの場合はこれ以上の臨床試験の必要はないのかもしれません。実際、dasatinibは米国食品医薬品局からCMLとPh陽性ALLの治療薬としてすでに承認を受けています。

「今や私たちはimatinibに耐性となる突然変異体を持つ患者のための薬剤を手に入れました。」と米国国立癌研究所の癌研究センターのJohn Janik医師は言います。「マイナス面はこれらの薬剤が急性転化や移行期症状の患者の多くに対して効果が十分でないことです。」

「これらの薬剤は慢性期にあるCMLの患者にとても効果があります。」とJohn Janik医師は続けます。Ph陽性ALLやCML患者の症状が移行期や急性転化期に進んだ場合は効果が下がります。」と言います。

この点については、この臨床試験結果掲載誌の論説でOregon Health and Science University Cancer InstituteのBrian J.Druker医師も強調しています。「慢性期CMLの患者の反応率はとても高かったのです。しかし、移行期や急性転化期症状での反応は低く再発率が高かったのです。この理由から、CML進行期やCMLが新薬に対する癌抵抗性を作る突然変異体を保有する患者に対してはほかの療法が必要なのです。」

制限事項
nilotinibやdasatinibの副作用を明確にするためのさらなる臨床試験も必要であるとDrucker医師は語ります。「ほかの副作用が長期間でみられないかという問題を解決するには、さらに大規模な臨床試験で長期間の経過観察が必要です。」

(Sugiura 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward