2010/10/19号◆特集記事「末期癌と診断された後も、癌検診が実施されている」 | 海外がん医療情報リファレンス

2010/10/19号◆特集記事「末期癌と診断された後も、癌検診が実施されている」

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2010/10/19号◆特集記事「末期癌と診断された後も、癌検診が実施されている」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2010年10月19日号(Volume 7 / Number 20)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

末期癌と診断された後も癌検診が実施されている

進行した不治の癌患者の多くが医学的なメリットが望めない癌検診を受け続けている、とスローンケタリング記念がんセンターのDr. Camelia Sima氏が率いる研究チームはJournal of the American Medical Association(JAMA)誌10月13日号で発表した。この研究の目的は、「治療を改善すると同時にメディケア(公的保険)プログラムの無駄な支出を回避しうる可能性を特定すること」であった。

Sima氏とその研究チームは、進行癌と診断された患者で実際にこれらの検診から効果がもたらされる可能性はないにもかかわらず、ごく一部では原発腫瘍以外の癌検診が施行されているだろうと予測した。しかし、予想に反して、かなりの割合の進行癌患者がこうした癌検診を受け続けていることが明らかになった。

NCIのSurveillance, Epidemiology, and End Results (SEER)データベースに記載されている、進行した肺癌、大腸癌、乳癌、胃食道癌、もしくは膵臓癌を患う65歳以上のメディケア受給者87,736人のうち、女性患者のほぼ9%がマンモグラフィ検診を、また6%が診断後のパップテストを受け、男性患者の15%が前立腺特異抗原(PSA)検診を、全患者の1.7%が内視鏡による大腸癌検診を受けていた。これらの検査は患者の原発癌腫の診断もしくは経過観察と関連したものではなかった。

「癌検診による明確な延命効果が明らかになるまでには数年かかります」とNCIの応用癌スクリーニング研究支部(Applied Cancer Screening Research Branch)長のDr. Stephen Taplin氏は説明した。「乳癌の場合、例えば、検診実施群の女性患者の死亡数が、実施しなかった群よりも少なくなるまでには、検診後少なくとも3〜5年かかります。つまり、乳癌検診が患者の寿命に有意に影響を及ぼすには、患者は少なくとも3〜5年以上生きている必要があります」。

JAMA誌掲載の研究における患者の生存期間中央値は、癌腫にもよるが、4.3カ月〜16.2カ月の範囲であり、その値では「いかなる癌でも検診の効果を得るために必要な期間には遠く及びません」と同氏は述べた。

進行した癌患者の検診率と癌を患っていない人の検診率とを比較して理解するために、研究者らは、年齢、性別、人種、および地理的位置について癌患者とマッチングさせ、SEERから無作為抽出した癌でない87,307人のメディケア対象者の癌検診実施率も調べた。 各対照者に対して、対応する癌患者と同じ期間の経過観察が実施された。

対照群では、女性患者の22%が研究期間中にマンモグラフィを12.5%がパップテストを受け、男性患者の27.2%がPSA検査を、全対照者の4.7%が内視鏡による大腸癌検診を受診していた。癌患者の検診率は、癌のない対照者における検診率の35%〜55%であった。

全群において、社会経済的地位が高いことおよび既婚であることが癌検診実施の可能性がより高いことと有意に関連していた。癌患者で検診を行う可能性が最も高いのは、癌の診断を受ける以前に癌検診を受けていた人たちであった。

「われわれのデータから、癌検診の受診継続を助成してきたことで、検診が習慣として深く根付いていると解釈するのがもっとも説得力があります」と著者らは記した。「定期的に癌検診を受ける習慣がある患者および医療関係者は、進行癌の競合リスクにさらされて効果が得られなくても検診を受け続けます。”自動操縦”的に検診を受けることが身についているのです」。

このような状況を悪化させているのは、不要な医療項目をチェックし再検討させるような電子カルテやその他「知的」技術の普及の遅れである、と著者らは続けた。 もう一つの要因は、患者および医師の双方にとって、予後不良や終末期問題を話し合うことの難しさにあるかもしれない。「余命が長くないことを認識していても、医師は予後に関する話合いを必ずしも行わず、患者は迫り来る死に向き合う対処方法として否認という手段を用いる可能性があるというかなりのエビデンスがあります」と著者らは記した。

しかし、この論文で明らかになったコミュニケーションの不備は、終末期についての話し合いだけではない、とNCI癌生存者オフィスの責任者であるDr. Julia Rowland氏は説明した。「この種の医療行為の利益と不利益についてのコミュニケーションの欠如が、医者と患者の間でクローズアップされ始めています。各個人に対して、期待できる効果に沿った提言をしなければなりません」と同氏は説明した。

「リスク-効果の均衡を保つ重要な部分は、これらの検査を実施することで、患者がより良い生活を送るもしくはより長生きすることになるか?ということです」とRowland氏は述べた。「このような状況での答えは、まれな症例でない限り、ノーということになるでしょう。いかなる検診においても、検診を紹介しようとしている患者個人の健康と豊かな生活を考慮に入れなければなりません」。

転移した乳癌女性患者の何人かは、治療後5年以上生存する場合も多く、これらの患者においては他の癌腫の検診を継続することで効果がもたらされる可能性もあるが、このようなことは医者と患者の間で話し合いが行われるべきである、とRowland氏は述べた。 「医師と患者の双方に対する定期的な検診の普及促進については、全国的に大きな成功を収めてきました」と同氏は締めくくった。「しかしながら、患者と医者の話し合いについてはそれほどうまくいっていません。」

—Sharon Reynolds

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豊 訳
後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)監修
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