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適度なウエイトトレーニングは乳癌後のリンパ浮腫を悪化させない

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適度なウエイトトレーニングは乳癌後のリンパ浮腫を悪化させない

Moderate Weight Training Won’t Worsen Lymphedema after Breast Cancer
Journal of Clinical Oncology2006年6月20日号によると6ヶ月のウェイトトレーニングのレジメンを行った群は、行わなかった群に比べて乳癌治療後のリンパ腫を患うことがより少なかった。


キーワード  乳癌、克服、リンパ浮腫、運動

要約
腋窩リンパ節が除去または放射線照射された乳癌治療をした人は、痛みを伴って腕が腫脹するリンパ浮腫が起こる危険性があります。現時点でのガイドラインでは、それらの人々に状態を悪化させるかもしれない上半身の運動を避けるよう強く勧めています。しかし、この臨床試験では、ウエイトトレーニングをしなかった女性と、6ヵ月のウエイトトレーニング療法を行った女性では、リンパ浮腫になる可能性は同等でした。

出典 Journal of Clinical Oncology(臨床腫瘍学)2006年6月20日号(ジャーナル要旨参照)(J Clin Oncol. 2006 Jun 20;24(18):2765-72. Epub 2006 May 15)

背景
リンパ液は、感染やその他の疾患と戦うのを助けるために全身を駆け巡る透明の液体です。腕、肩、首、胴体にあるリンパ節は、乳癌の手術中や放射線中に切除されたり傷つけられたりすることがあります。もし上腕から流れるリンパ液が、血流にうまく流れ込むことができない場合、不可逆的かつ痛みを伴う腫張(リンパ浮腫)が起こることがあります。乳癌克服者の4人に1人、つまり米国では50万人以上の女性は、多少のリンパ浮腫が起こります。

小規模のパイロット試験が上半身の運動はリンパ浮腫を悪化させることはないと示唆しているにもかかわらず、現時点での臨床ガイドラインでは、子供を抱き上げたり食料品を持ち上げたりしないことまで、上半身の運動を避けるように乳癌克服者に対し強く勧めています。実際のところ、運動は、癌治療からの回復や慢性疾患の防御を含めて、多くの利益があることが示されています。

試験
ここで記載されたランダム化比較介入臨床試験は、身体組成とインスリン・レベルについて主な結果が2005年に報告されました(ジャーナル要旨参照)乳癌克服者のBreast Cancer Survivors Study (WTBS)に対するウエイトトレーニングのサブスタディです。

ミネアポリス地域の85名の乳癌克服者が2001年10月と2002年6月の間にWTBSに登録しました。すべての登録者は、その臨床試験に参加する少なくとも4ヵ月前に乳癌の初期治療を完了しました。多くの試験参加者らは、再発を予防する補助にタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害剤の投与を受けていました。運動に関して、’適度に積極的’以上の人はおらず、試験以前にウエイトトレーニングを試した人はいませんでした。

平均年齢は52歳で、そのほとんどは閉経後女性で、一人を除いて白人でした。

その臨床試験での女性は、2つのグループのうちの1つに無作為に割り当てられました。対照グループ(43名の女性)がウエイトトレーニングを行わなかったのに対し、介入グループ(42名の女性)は、6ヵ月の特定のウエイトトレーニングを行いました。それ以外、両方のグループは、その臨床試験中、日常の食事または運動のパターンを変更してはいけないとされました。

リンパ浮腫のサブスタディに関し、研究者らは、ある程度またはすべての腋窩(脇の下)リンパ節を切除した女性にのみ的を絞りました。つまり、ウエイトトレーニング・グループの23名と対照グループの23名です。リンパ浮腫は、その臨床試験開始時に評価され、6ヵ月後に再び評価されました。医師からの臨床的診断、患者自身からの症状の報告、参加者らの腕の外周、の3つの重複した測定が使用されました。

対照グループで6名の女性がリンパ浮腫の臨床診断でその試験に登録したのに対し、ウエイトトレーニング・グループでは、7名の女性がリンパ浮腫の診断でその試験に登録しました。対照グループで7名が症状の自己報告で登録したのに対し、ウエイトトレーニング・グループでは10名の女性が登録しました。各グループでそれぞれ4名の女性が2センチ以上の腕の腫張がありました。

ウエイトトレーニング療法は、フリーウエイトとマシンで上半身と下半身の運動を含んでいました。各セッションでこのグループの女性は、リンパ浮腫の症状がない場合に、できる限り軽量での上半身トレーニングを増やしました。下半身のエクササイズに関し、各セッションでできる限り重量でのウエイトを使用しました。フィットネスの専門家が女性のトレーニングを監督しました。

リンパ浮腫の部分試験の主執筆者は、現在はフィラデルフィアに所在するペンシルベニア大学の臨床疫学と生物統計学センターのKathryn H. Schmitz博士、M.P.H. (Master of Public Health、公衆衛生学修士)です。

結果
研究者らは、腕の外周が少なくとも2センチ(1インチ弱)の増加をリンパ浮腫の悪化と定義しました。ウエイトトレーニングの6ヵ月後、1名の患者だけがこの測定を上回り、その女性は対照グループでした。全体で、ウエイトを持ち上げた人たちや持ち上げなかった人たちの間で、腕の外周変化に統計的な差異がなかった、または症状の自己報告はありませんでした。

コメント
WTBS臨床試験は、Schmitz博士と同博士の共同著者らによると、「リンパ浮腫に関する上半身の運動の影響を調査するこれまでで最も大規模でかつ長期のランダム化対照試験です」とのことです。同博士らによる知見は、これまでの試験と一致しており、「2週間に一度の連続的なウエイトトレーニングは、今回の乳癌克服者におけるリンパ浮腫の発現あるいは悪化を増加させない」ということを示しました。

「われわれは、この試験のように症状管理を調査するさらに優秀な試験が必要です」と米国国立癌研究所のCancer Control and Population Sciences 部にあるOffice of Cancer Survivorship の責任者であるJulia Rowland博士は述べました。少人数の患者であるにもかかわらず、その試験は、腋窩リンパ節の損失がある、あるいは腋窩リンパ節の損傷があるにかかわらず、適度のウエイトトレーニングは乳癌克服者に有害でないことを原則証明するため厳密に企画されました、とRowland博士は説明しました。

「身体的活動の有益性について多くのエビデンスが報告されつつあり、そして克服者らが、克服者自身らの回復と健康増強のために何ができるのか尋ねているため、この試験は重要です。」とRowland博士は述べました。「そして、われわれは、身体的運動は、実際に乳癌を防ぐ重要な役割を持つかもしれないとすら考え始めています。」

制限事項
この試験は、運動とリンパ浮腫との間の因果関係を示してはいませんが、全面的に上半身のウエイトリフティングを推奨するのは時期尚早です、とRowland博士は述べました。過剰な運動からの急性損傷は、時としてリンパ浮腫の原因となる場合があります。

その試験は、「有害ではない」と立証することに成功しましたが、これらの結果がより一般化できたかもしれないいくつかの方法がありました、とRowland博士は述べました。腕の外周を測定することは、体積を測定することよりもやや信頼性が低いと考えられます。症状は、この試験で使用した単に患者の自己報告よりも、実際に臨床的測定による方がより正確な目録が作れたかもしれません。また、より頻繁な症状と外周評価は6ヵ月より長期の追跡期間であった場合、この試験で見られなかった傾向が得られるかもしれません。

(湖月みき 訳・平 栄(放射線腫瘍科) 監修)

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