サリドマイドは高齢の多発性骨髄腫患者に有効 | 海外がん医療情報リファレンス

サリドマイドは高齢の多発性骨髄腫患者に有効

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

サリドマイドは高齢の多発性骨髄腫患者に有効

Thalidomide Beneficial for Older Multiple Myeloma Patients
(Posted: 03/27/2006) Lancet2006年3月11日号によると、この第3相臨床試験で、以前に未治療の、より高齢-大半が65歳以上-の多発性骨髄腫患者は、標準的な化学療法メルファラン+プレドニゾンにサリドマイドを追加した場合比較対照群より有意に優れていた。


キーワード  多発性骨髄腫、サリドマイド、メルファラン、プレドニゾン(多くの癌関連用語の定義はCancer.gov Dictionaryで見ることができます。)

要約
今回の第3相臨床試験では、未治療の高齢の多発性骨髄腫患者(ほとんどが65歳以上)を対象に、従来のメルファラン+プレドニゾン(MP)を用いる化学療法にサリドマイドを加えたところ、加えなかった対照群に比べ有意に経過良好でした。この結果から、サリドマイドが高齢の多発性骨髄腫患者で有効であるという最初の確かなエビデンスが示されました。

出典  Lancet誌の2006年3月11日号(ジャーナル要旨参照)(Lancet. 2006 Mar 11;367(9513):825-31)

背景
多発性骨髄腫は、形質細胞とよばれているタイプの白血球の増殖が制御不能になったときに発症します。骨髄(大きな骨の内部にある海綿状組織)の中で形質細胞が正常細胞を圧倒するほど異常増殖し、痛みを引き起こし、骨を徐々に破壊していきます。
多発性骨髄腫の標準化学療法として、メルファラン+プレドニゾン(MP)の組み合わせが長年用いられてきました。1990年代の後半以降、骨髄腫を再発した患者でも、新たに骨髄腫と診断された患者でも、MP療法へのサリドマイドの追加は有効であることが分かってきました。サリドマイドは、腫瘍細胞への血液供給に影響することで癌と戦うと考えられていますが、他の方法でも癌と戦っている可能性があります。サリドマイドは、この疾患治療を目的として米国食品医薬品局(FDA)に承認されています。かつては胎児に障害を与えるということで有名になりましたが、承認されている用い方ではそのようなリスクはありません。
別の治療法として幹細胞移植で寛解する多発性骨髄腫患者もいますが、高齢患者の多くは移植で行われる高用量、高線量の抗癌治療に耐えられず、感染症や貧血が引き起こされたり、肝臓などの生命維持に必要な器官が損傷したりするというリスクが出てきます。そのため、多発性骨髄腫患者の大部分を占める高齢患者や医学的に幹細胞移植を受けられない患者に比べて、若年患者の5年生存率は高くなっています。
臨床では一般に、新たに多発性骨髄腫と診断された高齢患者はサリドマイド+MPを投与されますが、この治療を裏付ける臨床試験からのエビデンスは不十分なままでした。

臨床試験
2002年1月から2005年5月にかけて、新たに多発性骨髄腫と診断された患者のうち、65歳以上の患者または医学的に幹細胞移植を受けられない患者の第3相試験への登録が行われました。患者は、MP+サリドマイド群またはMP単独群のいずれかに無作為割付されました。試験はイタリアの複数の地域で、患者および医師の両方が治療内容を知らされる非盲検で実施されました。
試験データの予備解析では、MP+サリドマイド群の奏効率が統計的有意に改善されたため、倫理的な理由から試験は2005年5月に中止されました。最低6カ月より長い追跡期間を経過した患者255例のデータをもとに最終結果を出しました。
MP単独群72例およびMP+サリドマイド群129例のうち、65歳未満は7例のみでした。
両投与群とも、4週間毎に1週間毎日、トータルで24週間MPの錠剤を投与されました。サリドマイド併用群は、これに加えてサリドマイド錠剤を24週間毎日投与され、その後も再発するまで投与が続けられました。MP単独群の患者も、試験が終わるまでに疾患が再発した場合、サリドマイド投与を受けることが許可されました。サリドマイド併用群では高い割合で血栓症が起こったため、2003年12月以降に登録した患者は抗凝固剤のエノキサパリンの投与も受けました。
本試験は、Italian Multiple Myeloma Network (GIMEMA)により実施されました。臨床試験統括医師は、イタリアにあるトリノ大学のAntonio Palumbo医師が担当しました。本試験では、Pharmion Corporationから無償提供されたサリドマイドを用いました。

結果
生存者の追跡期間の中央値は、サリドマイド併用群では17.6カ月、MP単独群では15.2カ月でした。2年経過後の無再発または無進行の生存率(イベントフリー生存率)は、MP単独群では27%と低かったのに対し、サリドマイド併用群では54%でした。
体内には多発性骨髄腫の存在を示すタンパク質がありますが、その量を観察することで治療反応性を測定しました。完全奏効またはそれに近い奏効が得られたのは、MP単独群では9例(7.2%)であったのに対しサリドマイド併用群では36例(27.9%)にもなりました。
試験が早期に中止されたため、サリドマイドを追加することで全生存率が上昇するか否かを確実に断定することはできません。しかし、全生存率に関してサリドマイド併用群で統計的に有意ではないものの、全生存率が高くなる傾向はありました。
有害事象発生率はサリドマイド併用群のほうが高く、死亡数はMP単独群の6例であったに対し、サリドマイド併用群では11例(8%)となりました。深刻な毒性の発現率は、MP単独群では25%に対し、サリドマイド群では半数(48%)近くにもなりました。
サリドマイド併用患者は、6カ月間の初期治療の後も投与延長を許可されましたが、毒性が強かったためサリドマイドの全投与期間は平均8カ月となりました。初期治療期間中、患者の約3分の1がサリドマイドを中止し、さらに3分の1以上が投与量を減らしました。
サリドマイド併用群で有意に多くみられた毒性として、下肢の血栓症、末梢神経障害、肺炎および他の感染症、便秘が挙げられます。

コメント
「サリドマイドはすでに多発性骨髄腫の一次治療として高齢患者に広く用いられていますが、本試験結果からサリドマイドの併用が標準治療になるという確かなエビデンスが得られました。」とメイヨークリニックのShaji K. Kumar医師は述べ、ジャーナルのコメントではこのことを「骨髄腫治療の歴史的瞬間」とよびました。
米国国立癌研究所(NCI)癌研究センターのMichael Bishop医師は、「本試験は、初めて高齢患者でのサリドマイドの有効性を明らかにした試験です。そして、イベントフリーの結果というのは大きな励みになります。」「できれば、データの蓄積とともに全生存率にも明らかな効果が認められるようになればと思っています。」と述べました。

制限事項
上述の通り、サリドマイドをMP療法に追加すると毒性が有意に増加します。さらに、サリドマイドの効果は時とともに弱くなります。
「最近の多発性骨髄腫の最良の治療というのはどんどん変わっていっています。60歳から70歳の患者の多くは、薬剤に対して忍容性があり自家幹細胞移植がもちろん有効であるというエビデンスがあります。」とBishop医師は言いました。一次治療患者を対象にしたbortezomib(商標、ベルケード)単独あるいはデキサメタゾンの併用の試験でも、有望な初期試験結果が出ています。そして、lenalidomideとよばれるサリドマイドを改良した化合物も現在試験が実施されています。

(South 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward