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プロゲステロン様の薬剤がホットフラッシュを抑える

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プロゲステロン様の薬剤がホットフラッシュを抑える

Progesterone-Like Drug Controls Hot Flashes 
(Posted: 03/13/2006)
Journal of Clinical Oncology2006年3月20日号によると、プロゲステロン様の薬剤を1回注射することで、 抗うつ剤venlafaxine (Effexor)による毎日の治療よりもホットフラッシュが抑えられた。


キーワード  乳癌、閉経、ほてり(癌関連の多くの用語に関する定義はcancer.gov Dictionary を参照のこと)

概要
プロゲステロン様薬剤を単回注射投与した場合、抗欝剤ベンラファキシン(エフェクソール)による治療よりもほてりを抑える効果が高かったとの新たな試験結果が報告された。

出典  Journal of Clinical Oncology(2006年2月27日付オンライン発行版、2006年3月20日付紙面版発行)(ジャーナル要旨参照)より。

背景
「ほてり」とは、ホルモン量の変動により起こる体温上昇のことであるが、閉経に近づいている女性に多く見られる問題である。化学療法(卵巣機能を抑制する)を受けている閉経前の女性もほてりに悩まされており、タモキシフェン(ノルバデックス)やアナストラゾール(アリミデックス)による乳癌治療により起こる主な副作用のひとつでもある。前立腺癌のためホルモン治療を受けている多くの男性患者にもほてりが見られる。
ホルモン補充療法(ホルモン剤であるエストロゲンとプロゲステロンの併用療法、HRT)は閉経に伴うほてりに悩む患者の治療として広く処方されているが、2002年に発表された大規模臨床試験によると、HRTは乳癌および心疾患を引き起こすリスクを高めることが示された。(詳しくはMenopausal Hormone Useを参照。)乳癌の病歴がない患者では閉経症状を緩和するため短期間HRTを受けている女性もいるが、エストロゲンに反応して腫瘍が増殖する恐れがあるためHRTは乳癌患者には推奨できない。
2000年にメイヨークリニック(ミネソタ州ロチェスター)の研究者は、抗欝剤のベンラファキシンによる治療を4週間にわたり行った臨床試験(A New Treatment for Hot Flashes: Antidepressantsを参照)に参加した女性の62%でほてりの頻度および重症度が大幅に軽減されたと発表した。ベンラファキシンは、それ以来特に乳癌患者あるいは乳癌リスクのある患者のほてり症状に対する非ホルモン系代替治療として一般的になった。
ホルモンであるプロゲステロンと化学的類縁物質である薬剤の中にもほてりの抑制に効果を表すものがある。現在実施されている試験ではプロゲステロンの合成剤で長時間効果が持続するメドロキシプロゲステロンアセテート(MPA)の評価が行われた。

臨床試験
本試験ではほてりに悩まされている女性患者227例を3つの治療群(ベンラファキシン錠1日一錠を6週間、MPAの筋肉注射を1回、またはMPAの筋肉注射を2週間毎に全3回)に無作為割付した。
約60%の女性に乳癌の既往歴があり、残りは40%はなかった。タモキシフェン、ラロキシフェンあるいはアナストラゾールをすでに服用していた患者は試験期間中も服用し続けた。しかし、当時乳癌のため化学療法を受けていた患者は試験に参加することができなかった。
患者はほてりの頻度および重症度を毎日日記に記録した。患者はその他の症状(食欲の変化、嘔気、ふらつき、気分の変化、性的衝動の消失など)および総合的な生活の充足度と生活の質などについてのアンケートにも記入した。
6週間後全員に連絡を取り、ほてりの抑制に対してどの程度満足したかについて質問した。満足したと答えた患者に対しては次の5ヶ月間は毎月、その後6ヶ月間は1ヶ月おきに電話連絡を取りほてりの症状が続いているかどうか、続いている場合はその頻度と重症度について調査した。
本試験の主執筆者はメイヨークリニック(ミネソタ州ロチェスター)のCharles L. Loprinzi医師である。Loprinzi医師はベンラファキシンがほてりに有効であることがわかった2000年発表の試験における主執筆者でもあった。

結果
試験への参加者募集開始が遅れたため、研究者たちはMPA注射を3回受ける患者群の試験を中止した。最終的な試験報告書ではベンラファキシン投与を受けた患者とMPA注射を1回受けた患者に関する結果の比較が行われている。MPA注射を3回受ける群に割り付けられた患者は9例であったが、症例数が少ないためこれらの患者に関する結果は報告されていない。
6週間後、MPA単回投与群に割り付けられた患者の74%がほてりの頻度と重症度が半分以下に軽減されたと報告した。これと対照的に、ベンラファキシン投与群の患者ではほてりの症状が同程度軽減されたのは46%であった。
2つの治療に対する効果は、試験に参加した時点で乳癌の既往の有無、タモキシフェン服用の有無またほてりの重症度にかかわらず類似していた。
MPAによる治療を受けた患者は、ベンラファキシンが投与された患者と比較して6週間目でほてりによる苦痛、異常発汗、睡眠障害およびその他いくつかの症状の程度が低かったことが報告された。
その他の症状(嘔気、食欲増進、気分の変化および性衝動消失)の程度は両群で類似していた。全体的な生活の充実度および生活の質もまた両群でほとんど同じであるように思われた。
6ヶ月後、MPA投与群の患者の27%がほてりの頻度および重症度が試験参加当時より90%以上軽減されたと報告した。ベンラファキシン投与群の患者では6ヵ月後に症状が軽減されたと報告したのは10%であった。
多くの患者がほてりを抑えるために毎日錠剤を服用するよりも1回のMPA注射の方が便利であると述べた。

制限事項
何件かの実験結果によるとプロゲステロン(MPAはこのホルモンから由来する)に短時間暴露しただけで乳癌細胞の増殖が刺激されることが示唆されているが、一方他のデータではプロゲステロンは乳癌細胞の増殖を抑制することが示唆されている。

コメント
本試験の所見によるとMPAはベンラファキシンよりほてりを相当程度抑制することが証明された、と執筆者は述べたが、乳癌に関しては「MPA400mg単回投与の安全性については明確な答えは出ていない」ということも認めた。
国立癌研究所・癌研究センターの腫瘍学者であるJennifer Eng-Wong医師は、乳癌患者を治療している医師がこの試験の所見を元にMPAをほてりの治療として歓迎することはありえないと考えている。
「我々には乳癌の既往のある患者のほてりを抑えるために満足な仕事をしてくれる非ホルモン剤のベンラファキシンという薬があります」。「プロゲステロンが乳癌細胞の増殖を促進するというデータが出されているため、この試験のみでこういった患者群における臨床的処置が変わるとは思えません。」とEng-Wong医師は述べた。  

(エリザベス 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

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