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タモキシフェン治療後エキセメスタン治療で乳癌再発が減少

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タモキシフェン治療後エキセメスタン治療で乳癌再発が減少

Exemestane Following Tamoxifen Reduces Breast Cancer Recurrences
(Posted: 03/10/2004, Updated: 02/22/2006)New England Journal of Medicine2004年3月11日号によると、2年か3年のタモキシフェン後エキセメスタン(アロマシン)に移行した閉経後乳癌女性はタモキシフェンを5年間続けた女性より癌の再発が少なかった。


キーワード  乳癌、エキセメスタン、アロマシン、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤

要約

閉経後の乳癌患者で、2~3年間のタモキシフェンによる治療後、エキセメスタンに治療薬を変更した方が、5年間タモキシフェンのみの治療を続けた場合に比べて、癌の再発が減少することが大規模な国際的第3相臨床試験において明らかになりました。

出典   2004年3月11日発行の論文雑誌「New England Journal of Medicine」 (ジャーナル要旨参照)

背景

癌がエストロゲンホルモンに応答して増殖するタイプの乳癌では、患者の多くは手術後の再発予防を目的として、エストロゲン受容体拮抗薬であるタモキシフェンを5年間服用します。しかしながら、タモキシフェンによってすべての再発が予防されるわけではなく、また、この薬剤に対して乳癌細胞が耐性を獲得することもあります。さらに、タモキシフェンの服用により、子宮内膜癌や重篤な血栓症、脳卒中の危険性が増加します。

タモキシフェンとエキセメスタンは、ともにエストロゲンに応答した癌の増殖を抑制します。しかしながら、両薬剤の作用機序は異なります。タモキシフェンは乳癌細胞に作用して、エストロゲンを増殖に使えないようにします。一方エキセメスタンは、体内でのエストロゲン産生を阻害します。

エキセメスタンは、アロマターゼと呼ばれるエストロゲンを産生する酵素を不活性化します。閉経前では、大部分のエストロゲンは卵巣内で作られます。卵巣内にはエキセメスタンでは阻害しきれないほどのアロマターゼが存在しています。一方、閉経後では、卵巣はエストロゲンの主要な産生臓器ではなくります。エキセメスタンは他の臓器から産生されるエストロゲンは阻害することができます。以上から、エキセメスタンをはじめとするアロマターゼ阻害剤は、閉経後の女性に限って効果を表します。

複数の大規模な国際臨床試験では、5年間のタモキシフェン治療の後にアロマターゼ阻害剤を服用した場合や、短期間のタモキシフェン治療の後にアロマターゼ阻害剤に変更した場合は、再発が少ない傾向が認められていました。これらの臨床試験で用いられていたアロマターゼ阻害剤は、anastrozole(Arimidex R)とletrozole(FenmaraR)といった他のクラスのものでした。タモキシフェンと異なり、アロマターゼ阻害剤では子宮内膜癌や重篤な血栓症、脳卒中の危険性が増加することはありません。

臨床試験

37カ国から合計4742名の、タモキシフェン治療により2~3年間の無病状態が続いている閉経後の女性が登録されました。女性たちは、エキセメスタンに治療を変更する群と、タモキシフェン治療を継続する群にランダムに分けられ、一薬剤もしくは両薬剤による治療期間の合計が5年間に至るまで続けられました。この臨床試験のリーダーは、イギリスのロンドンにあるImperial College and Charing Cross HospitalのR. Charles Coombes医学薬学博士です。

結果

平均経過観察期間が約2年半を経過した時点で、乳癌の再発、もう一方の乳房での発癌、もしくは死亡と診断された割合は、タモキシフェン単剤による治療を受けた場合で2380名中266名(11.2%)、タモキシフェン治療後にエキセメスタン治療を受けた場合で2362名中183名(7.7%)でした。治療後3年間の無病生存率は、タモキシフェン単剤群で86.8%、タモキシフェン→エキセメスタン群91.5%と、統計的に有意な差が出ました。

エキセメスタン服用による副作用は、関節痛、下痢、骨量減少、視覚障害が出る傾向にありました。タモキシフェン単剤では、血栓症、婦人科系の症状、膣出血、筋けいれんが副作用として出ています。

制限事項

関連論文において、ベルギーのブリュッセルにあるJules Bordet InstituteのMartine J. Piccart-Gebhart医学薬学博士は、この臨床試験結果からエキセメスタンを用いた治療によって全生存率が向上すると結論付けるのは時期尚早とコメントしています。また、アロマターゼ阻害剤の補助療法としての、長期にわたる効果を判断するには、2年半という平均経過観察期間では短すぎるとも述べています。

例えば、エキセメスタンを服用した女性は、タモキシフェンのみを服用した場合に比べて骨折が多いということを、メリーランド州Bethesdaにある国立衛生研究所 Clinical Centerの乳癌専門臨床腫瘍医であるJoAnne Zujewski医学博士は注意しています。他のアロマターゼ阻害剤の臨床試験では、全試験で骨量の減少が示されており、中には骨折の増加が報告されているものもあります。Zujewski博士は、エキセメスタンをはじめとするアロマターゼ阻害剤の服用による骨折については、長期間の追跡調査を行ってその危険性を明らかにする必要があると述べています。

コメント

Zujewski博士は、「この臨床試験は、閉経後の初期乳癌患者に対してアロマターゼ阻害剤が無病生存率を向上させるということを示した4番目の試験です。この結果は、2~5年間のタモキシフェン治療後、エキセメスタンをはじめとするアロマターゼ阻害剤への治療薬の変更を後押しするでしょう。」と述べています。しかしながら、骨折している、もしくは骨折の危険性が高い患者には、アロマターゼ阻害剤の服用は避けたほうがよいでしょうと付け加えています。

(追記:この臨床試験の副試験として、二群間でのQOL(生活の質)の比較試験が行われました。イギリスにあるサセックス大学のLesley J. Fallowfield博士は、二群間で有意な差はなく、「エキセメスタンは、QOLに対して悪影響を与えることなく、タモキシフェンの臨床効果を上回ることに成功した」ことを示しました。この副試験の結果は、2006年2月20日に発行される論文雑誌「Journal of Clinical Oncology」に発表されています。)

(こばやし 訳・林 正樹(血液・腫瘍科)監修)

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