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サリドマイドは新たに診断された多発性骨髄腫患者に有効

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サリドマイドは新たに診断された多発性骨髄腫患者に有効

Thalidomide Effective in Newly Diagnosed Multiple Myeloma
(Posted: 02/15/2006) Journal of Clinical Oncology2006年1月20日号によると、以前に治療を受けたことがない多発性骨髄腫の患者は、治療薬デキサメタゾン導入療法にサリドマイドを加えると、より奏効する。


要約
今回の試験では、多発性骨髄腫と診断され未だ治療を受けていない患者に対して、デキサメタゾンの導入療法にサリドマイドを加えるとより良い反応性がみられました。しかし、サリドマイドを投与した患者に高い割合で重篤な副作用が発現しました。本試験では、サリドマイドの併用により最終的に患者寿命が延びるか否かについては明らかにされませんでした。

出典  Journal of Clinical Oncology、2006年1月20日版、オンライン版2005年12月19日公開、(ジャーナル要旨参照)

     
(J Clin Oncol.2006 Jan 20;24(3):431-6.Epub 2005 Dec 19)

背景
多発性骨髄腫は、形質細胞とよばれているタイプの白血球の増殖が制御不能になったときに発症します。骨髄(大きな骨の内部にある海綿状組織)の中で形質細胞が正常細胞を圧倒するほど異常増殖し、痛みを引き起こし、骨を徐々に破壊していきます。

2005年の推定では、米国民の約16,000人が多発性骨髄腫にかかり、11,000人以上がこの疾患により死亡しています。一般に、多発性骨髄腫は初回治療では奏功しますが長期的な予後は不良とされています。診断後の5年生存率は約29%です。

最近の臨床試験では、幹細胞移植により一部の患者の多発性骨髄腫が寛解するという可能性が示唆されています。幹細胞移植を行うと骨髄から正常細胞が作られるようになりますが、それは移植前に導入化学療法で癌細胞を死滅させるか減少させた場合に限られます。移植前の標準的導入療法では、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾンの3つの薬剤が併用(VAD)で用いられてきました。

サリドマイドを用いたいくつかの試験では、多発性骨髄腫の治療後再発した患者の一部にサリドマイドが有用であることが示唆されています。他の治療で反応を示さなかった再発性の多発性骨髄腫患者にサリドマイドを投与したところ、単独または抗癌剤デキサメタゾンとの併用のいずれでも奏効率が改善しました。

さらに、新たに多発性骨髄腫と診断された患者を対象にした3つの非ランダム化第2相試験でも、サリドマイド+デキサメタゾン投与群で良好な反応がみられました。

試験
今回のランダム化第3相試験では、新たに多発性骨髄腫と診断された患者207名を導入療法としてのデキサメタゾン単独投与群またはデキサメタゾン+サリドマイド併用投与群へ無作為に割付けました。導入療法の後、患者はみな幹細胞移植を受けることになっていました。

疾患が導入療法に反応したか否かを判定するため、血中および尿中の腫瘍マーカーレベルと骨髄に占める形質細胞の割合を測定しました。以下の項目を満たした患者を“治療に反応した”ものとしました。

・血中および尿中の腫瘍マーカーが消失、または半分以上減少

・形質細胞の骨髄に占める割合が3%未満

・新たに腫瘍が生じていない、かつ腫瘍の増殖が見られない

・カルシウムレベルが正常値を維持(カルシウムレベルが高いということは、骨髄中の形質細胞数が過剰になり骨量が減少している徴候といえます)

試験はEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)により実施されました。ECOGは米国国立癌研究所が癌の大規模多施設試験を実施するために資金提供している9つの研究グループのうちの1つです。試験統括医師は、ミネソタ州ロチェスターにあるメイヨークリニックのS.Vincent Rajkumar医学博士が担当しました。

結果
デキサメタゾン+サリドマイド併用群では患者の63%が治療反応性を示し、デキサメタゾン単独群の41%に比べ統計的に有意な結果になりました。

デキサメタゾン単独群では疾患が悪化した患者は5%であったのに対し、併用群では2%でした。

重度の有害事象の発生率はサリドマイド併用群のほうが高くなりました。その中でも血栓症、高血糖、低カルシウム血症、疲労、錯乱、便秘が多くみられました。

制限事項
本試験は幹細胞移植を受ける患者の導入療法を比較することを目的にデザインされました。導入療法は治癒を目的とした療法ではないため、デキサメタゾン+サリドマイド併用投与によりデキサメタゾン単独投与よりも患者寿命が延長されるか否かについては明らかにはできませんでした。

コメント
著者は次のように結論付けています。「デキサメタゾン+サリドマイドの併用投与した患者では奏効率が高いとはいえ、同時に生じる強い毒性を考慮したうえで用いる必要があります。」さらに、デキサメタゾン+サリドマイドの併用治療を受ける患者には予防処置として抗血栓薬の投与を薦めています。

それでも今回の試験結果は「大きな進歩です」とボストンにあるダナファーバー癌研究所のPaul Richardson医学博士およびKenneth Anderson医学博士は編集後記に記しています。

米国国立癌研究所(NCI)癌研究センターのMichael Bishop医学博士も同じ意見を述べています。「今回の結果から、この併用療法はVADにとって代わる(導入療法の)新しい標準的治療だと言えます。」と語った上で「しかしこの標準的治療も、他で実施されているさらに有効だと思われるデキサメタゾンとbortezomib(商品名:ベルケード)を用いた臨床試験の結果によっては塗り替えられる可能性があります。」と付け加えています。   (South 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

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