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ASCOアドバンス・オブ・ザ・イヤー(2020)は「がん外科治療の洗練」

優先研究課題では、がん臨床の進歩を加速する機会を明示し、報告書「Clinical Cancer Advances」(がん臨床の進歩)では、政府資金の影響の大きさを強調

新たな、より良い方法で組み合わされた革新的な全身療法の出現により、がんの外科手術の役割は大きく変わった。

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、「Clinical Cancer Advances 2020」の報告書において、過去1年間にこの分野で行われた実質的な進歩を認め、アドバンス・オブ・ザ・イヤーとして「Refinement of Surgical Treatment of Cancer(がんの外科治療の洗練)」を選出した。がんに対する研究の進捗状況に関するこのASCOの年間報告書は、1年間の注目すべき研究の進歩をカタログ化することで、期待される研究分野を明示し、がん研究に対する米国政府の資金提供の重要性を強調している。

「がん治療は手術から始まったと言っても過言ではありません。その記録は古代にまで遡ります。近年、全身療法(化学療法)のような他の治療法が登場し、がん治療における手術の役割は変わりました」と、FACP(米国内科学会フェロー)、FASCO(米国臨床腫瘍学会フェロー)でもある2019-2020年ASCO会長のHoward A. Burris III医師は述べた。「2020年のASCOアドバンス・オブ・ザ・イヤーでは、がんの全身療法が手術の有効性を改善し、多くの患者において必要な手術の範囲を最小限に抑え、さらに一部の患者においては手術の必要性を排除したことを讃えます」

同報告書では、過去1年間の主な進歩を特定するだけでなく、がん治療における満たされていないニーズや研究機会を特定したASCOの優先研究課題のリストの中で、最も進歩が期待される分野を強調している。

本レポートは現在15年目で、asco.org/CCA や the Journal of Clinical Oncology (ascopubs.org/jco)で閲覧できる。

アドバンス・オブ・ザ・イヤー:がん外科治療の洗練

全身療法の理解と開発は長年にわたってかなりの進歩が見られたが、これらが外科的治療に影響を及ぼしたのはごく最近になってからである。これら全身療法の有効性により、一部の患者では必要な手術の量が減ったり、手術の必要性がなくなる患者も現れたりするようになった。同時に、全身療法の進歩により、必要となれば手術を受けることができる患者の数も増加した。

黒色腫と腎臓がんおよび前立腺がんの全身療法の進歩により、外科的治療の役割が再編され、今年の最も印象的な研究成果の一部となった。

・黒色腫:取り上げられた2つの研究では、手術前の複合免疫療法や分子標的療法の有効性と安全性が検討されました。これらの研究はすでに実臨床を変えており、多くの場合、局所進行した黒色腫の患者が手術を回避するのに役立っている。

・腎臓がん:外科的切除は以前より、腎細胞がんを含む多くの固形がんの主要な治療法であった。2つのランダム化比較試験の結果から、転移性腎細胞がんの一部の患者では、分子標的療法をベースとした治療を行うことにより、先行手術の役割を減らす可能性があることが見出された。

・膵臓がん:膵臓がん患者にとって、外科的切除は生存期間延長のチャンスを最も見込め治療だが、外科的に完全に除去することが困難であったり、まったく切除ができなかったりする場合が多い。2020年の本レポートで取り上げられた2つの予備研究では、より多く膵臓がん患者が、前治療により手術適格となる可能性が高くなることを示唆している。

「Clinical Cancer Advances」で強調されている他の研究の成果としては、がん予防や、バイオマーカーによる治療、および副作用を増加させることなく生存期間の延長が期待される治療の組み合わせ,などの進歩が含まれている。

この進歩は、がん臨床研究に対する米国政府の支援なしには実現できなかっただろう。

がん治療の進歩を加速するための優先研究課題

ASCOは、進歩が期待される研究分野を明示し、また最も必要とされる研究分野の推進を刺激するため、優先研究課題のリストを作成した。これらの優先課題は、順不同でリスト化されており、満たされていないニーズの分野に対処し、患者のケアと結果の改善に不可欠な分野の知識格差を埋めるのに役立つ。

・免疫療法に対する効果と薬剤耐性をより良く予測する戦略を特定する

・全身療法を最適化し、手術範囲を縮小する

・小児およびその他の希少がんにおけるプレシジョン医療の研究や治療アプローチを促進する

・高齢のがん患者に対するケアを最適化する

・がんの臨床試験への公平なアクセスを促進する

・がん治療の有害な影響を軽減する

・肥満を減らすことで、肥満が影響するがんの発生率や転帰を減らす

・前がん病変をより適切に識別し、治療が必要な時期を予測する

「予防から治療、そしてサバイバーシップまで、がんについてわれわれが知っていることは急速に変化しています。次世代のがん治療法を見つけ、がんが患者の生活に与える影響を減らすという私たちの展望も進化させる必要があります」と、FACP、FSCT、FASCOでもあるASCO副会長兼最高医学責任者のRichard L. Schilsky医師は述べた。「これらの優先課題の発表は、臨床医、患者、およびその他の関係者が、急速な進歩の機会において最も有望な分野で遅れをとることがないようにする狙いがあります」

政府が研究に資金提供する理由

この半世紀の間、米国政府の研究投資は、最も重要ながんの予防および治療における進歩の多くの原動力となった。報告書「Clinical Cancer Advances」で取り上げられた研究成果の約4分の1は、米国国立衛生研究所(NIH)およびその他の米国政府機関から資金提供を受けたものである。米国政府の資金提供による研究は、新たな経済活動で数十億ドルの新たな経済活動を生み出し、数十万の雇用を支えている。ASCOの2018年National Cancer Opinion Survey(米国がん世論調査)によると、アメリカ国民の67%は、米国政府は、税金の増額や赤字の増加を意味する場合でも、がんの治療法と治癒法の探究のためにより多くの資金を使うべきであると答えている。

過去数年にわたり、米国連邦議会は、NIHの年間資金の連続増加を可決することで、超党派的なリーダーシップを発揮してきた。2020年度、連邦議会はNIHに26億ドルの資金調達を提供した。ASCOは、科学的発見のペースを維持し、がんに対する医療の進歩を継続するために、がん研究への投資を基盤とするよう連邦議会に奨励し続けている。

現在、第15版である「Clinical Cancer Advances」は、asco.org/CCA で公開されており、「Journal of Clinical Oncology」はascopubs.org/jcoで公開されている。報告書に含まれる研究の約3分の1は、ASCO財団のConquer Cancer(がん撲滅基金)からYoung Investigator AwardsまたはCareer Development Awardsを通じて資金を受け、腫瘍学研究でのキャリアを続けている研究者によって実施された。

翻訳河合加奈

監修中村泰大(皮膚科/埼玉医科大学国際医療センター)

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