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スタチンの癌防御作用の根拠は統計試験で認められず

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スタチンの癌防御作用の根拠は統計試験で認められず

Statistical Study Fails to Find Evidence That Statins Protect Against Cancer
(Posted: 01/18/2006)Journal of the American Medical Association2006年1月4日号によると、心臓病のリスク減少のためにスタチンを服用していた何千人もの患者におけるさまざまな臨床試験からのデータを研究者らが解析した結果、癌リスクを下げるというエビデンスは発見されなかった。


要約
何千人もの患者が心疾患のリスク減少のためにスタチンという薬を服用した複数の臨床試験のデータ分析が行われ、スタチンには癌のリスクを減少する根拠はみられなかったことが判りました。ただし、別の種類の研究ではスタチンに癌に対する多少の防御作用のあることを示す根拠が得られており、今回の分析はこの件に関しての最終的結論ではありません。

出典  Journal of the American Medical Association 2006年1月4日(ジャーナル抄録参照)

    
(JAMA、2006年1月4日、295(1):74-80)

背景
コレステロールを低下し、心臓病のリスクを少なくするために、何百万ものアメリカ人がスタチンを服用しています。この薬剤はHMG-CoA還元酵素という酵素を遮断することによって機能します。この還元酵素は身体がコレステロールを作る際に必要なものです。

動物研究や、スタチンを摂取している被験者の経過観察によると、こうした薬剤はある種の癌のリスクを下げる可能性があると見られています。研究者たちは、スタチンには、腫瘍が形成され、増殖し、転移するのを助ける細胞の特定のプロセスを阻害する作用のあることを見出しています。これまでのレトロスペクティブ試験では、スタチンが結腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌の危険度を低下させることが示唆されています。

試験
研究者らは、スタチンを使用した臨床試験で、癌の診断と死亡についても報告のある既発表の医学文献を調査しました。彼らは被験者数100人以上、最低1年以上の経過観察を行った無作為化対照試験26本を選びだしました。

メタ分析として知られる統計技術を用いて、こうした臨床試験から癌診断と死亡に関する情報を抜き出してまとめました。6種類の癌(乳癌、結腸癌、前立腺癌、呼吸器癌、消化器癌、黒色腫)に対する、米国で用いることのできる5種類すべてのスタチン薬の効果を評価しました。

本研究の研究責任者は、コネチカット州ストーズのコネチカット大学薬学部薬学博士、C・ミッシェル・ホワイト博士(C. Michael White, Pharm.D.)です。

結果
メタ分析を行った臨床試験26本の総被験者数は86,000人以上でした。そのうち、癌診断は6,600例以上、癌による死亡は2,400例以上の記録がありました。

こうした癌診断数と癌による死亡数には、スタチンを摂取する群と摂取しない群に無作為に割り付けた2つの患者群に統計的な有意差はみられませんでした。この知見は調査した6種類の癌のいずれでも同じものでした。

制限事項
本試験は心疾患に対するスタチンの効果を調べるために設計した臨床試験データを利用している、と国立癌研究所(NCI)のアーニー・ホーク博士(Ernie Hawk, M.D., M.P.H.)は言います。スタチンの癌に対する効果は試験の主眼点ではなかったため、「スタチンを用いた場合の癌発生率の違いというものを検出するには限界があったかもしれない」とホーク博士は説明しています。

博士は、「また、癌が発現するまではふつうは何年もかかるため、スタチンに癌発生率に関する効果があるとしても、それを認めるのに充分な長期的経過観察は今回の臨床試験のいずれでも行われなかっただろう」とも付け加えています。

コメント
「今回の分析はスタチンが癌を予防できるという前提を支持するものではないが、逆にスタチンには癌に対する予防的効果がないことを証明するというものでもない」とホーク博士は述べています。「この問題は未解決のままですね」

もうすぐ始まる、NCIが支援している第2相試験によって、この臨床試験が今回の問題を少しでも解明してくれることでしょう。この臨床試験は、結腸直腸癌のリスクが高く、結腸や直腸の管壁細胞内に異常細胞群を有している患者を登録します。こうした異常細胞は、現在の技術で結腸直腸癌リスクを検出できる最も初期にみられるものです。

この臨床試験では、スタチンであるアトロバスタチン(リピトール)を始めとする3種類の薬剤を試験し、こうした異常細胞群が結腸直腸腫瘍に進行することを効果的に予防できるかどうかを調べます。ミネソタ州ロチェスターのメイヨー・クリニック胃腸科研究員、ポール・リンバーグ医師(Paul Limburg, M.D.)が今回の多施設臨床試験の研究責任者です。

(Snowberry 訳・Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修)

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