2010/11/16号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2010/11/16号◆癌研究ハイライト

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2010/11/16号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年11月16日号(Volume 7 / Number 22)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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癌研究ハイライト
・遺伝子変異が急性骨髄性白血病の予後不良に関連している
・ホジキンリンパ腫新規薬剤の腫瘍縮小効果は大きい
・イマチニブ治療を無期限に必要としない慢性骨髄性白血病(CML)患者もいるかもしれない
・ラソフォキシフェン、乳癌リスクを低下させる新たな選択肢となるか
・間質中の一部細胞が、免疫システムの抗腫瘍効果を阻害
遺伝子変異が急性骨髄性白血病の予後不良に関連している

急性骨髄性白血病(AML)患者の1群において頻繁に変異がみられる遺伝子が同定された。このような患者の経過は、正常アレルを持つ患者と比較してきわめて悪い傾向にある。この知見が確認されれば、変異遺伝子を有する患者の早期治療をより強度にすることで生存期間を延長できるかどうかを調べる臨床試験が行えると、セントルイスのワシントン大学医学部のDr. Timothy Ley氏らは述べた。この知見は11月10日付のNew England Journal of Medicine誌電子版で報告された。

この変異はAML患者281人のうち62人(22%)に見つかったものであり、DNAメチルトランスフェラーゼ3A(DNMT3A)遺伝子上に起こっていた。DNAメチルトランスフェラーゼ3Aは胎児の発達に関わっており、その後は造血細胞で働く。変異がどのように発病を促すかはまだ明らかでないが、変異を持たない患者の全生存期間の中央値が41カ月であるのに対し、変異を有する患者では12.3カ月であった。すべての変異が全生存期間の短さと関連があり、「AML細胞に致死性を付与する重要な一般的役割を担っている」と研究者らは書いている。

これらの変異は染色体検査に基づいて分類された「標準リスク」群患者(56人、全患者数166人中33.7%)にもっとも多く認められ、低リスク患者79人には一人も認められなかった。標準リスク群には標準治療の奏効が認められる患者と認められない患者が含まれているが、現時点で医師はこのような患者の区別はできない。今回の新たな発見はDNMT3A遺伝子の変異が予後不良の患者を特定するバイオマーカーとなりうることを示していると研究者らは述べた。

「DNMT3A遺伝子の変異を持つ患者はみな予後不良となることに本当に驚いた」とLey氏は述べた。彼のグループがはじめてDNMT3A遺伝子の変異を発見したのは、初回診断の2年後にAMLが再発して死亡した女性の癌細胞ゲノムを再びシークエンス解析していたときであった。彼らは2008年に報告した研究でこの患者の正常細胞ゲノムと癌細胞ゲノムの配列解析を行っていた。しかし、新たなシークエンス技術を用いて彼女のDNAをふたたび解析するまで、DNMT3A遺伝子の変異を発見することはなかった。

癌ゲノムの塩基配列決定から非常に珍しい変異が判明」も参照

ホジキンリンパ腫新規薬剤の腫瘍縮小効果は大きい

先週、強力な化学治療薬と結合させたモノクローナル抗体からなる臨床試験薬が、第1相臨床試験でホジキンリンパ腫患者の約40%に完全な腫瘍消失もしくは大幅な腫瘍縮小をもたらしたと報告された。結果は11月4日付のNew England Journal of Medicine誌に発表された。

臨床試験では、前治療(幹細胞移植を含む)からの再発もしくは標準治療抵抗性であるホジキンリンパ腫患者42人および未分化大細胞リンパ腫(ALCL)患者3人に対して、ブレンツキシマブ・ベドチン(SGN-35)が投与された。この薬剤の抗体部分はリンパ腫細胞表面上のCD30と呼ばれるタンパク質を標的としている。抗体と結合しているのはモノメチル・アウリスタチンE(MMAE)と呼ばれる強力な試験中の化学療法薬である。

Seattle Genetics社が開発したMMAEは、同社によれば、他の化学療法治療薬と比較して100倍から1,000倍の効力を持つという。抗体はこの薬剤を癌細胞に直接結合させ、吸収され癌細胞核の酵素により変性を受けることで、MMAEを放出し癌細胞を死滅させる。

中等度の奏効が認められた患者17人のうち、11人は治療後に腫瘍は認められなかった(完全寛解)。また、残りの患者には50%以上の腫瘍縮小が認められた(部分寛解)。この試験は第1相試験であるため、患者により投与量は異なっていた。もっとも奏効が高く,重症な副作用がもっとも少ない用量(最大耐量)を投与された12人の患者のうち、6人に中等度の奏効が認められた。全般に試験に参加した患者の86%に少なくともいくらかの腫瘍縮小が認められ、副作用はわずかであった。

これまで30年間にホジキンリンパ腫の新規治療薬の開発はほとんど進まなかった。したがって、このような結果は患者にたいへん期待を抱かせるものであると、試験責任医師のチーフであるテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのDr. Anas Younes氏は述べた。「第1相試験の治療で大多数の患者に腫瘍縮小が認められたことは素晴らしいことだ」と彼は電子メールで述べた。

Seattle Genetics社によれば、同薬剤の同一の患者集団を対象とする第2相臨床試験の初回結果は第1相試験よりもずっと強力であるようだという。同社は9月末に、第2相試験に参加している、全例が再発性・難治性のホジキンリンパ腫患者102人の75%に客観的奏効が認められたと発表した。また、同社は10月上旬に、別のブレンツキシマブ第2相試験に参加しているALCL患者では中等度の奏効率が認められたのは86%であったと報告した。双方の試験に関するよりまとまった結果や詳細は12月上旬に開かれる米国血液学会の年次総会で発表される予定である。

イマチニブ治療を無期限に必要としない慢性骨髄性白血病(CML)患者もいるかもしれない

フランスで行われた小規模臨床試験で、慢性骨髄性白血病(CML)患者のなかにはチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)のイマチニブメチル酸塩(グリベック)による治療を中止しても再発しない患者がいることが示された。この結果から、患者のなかにはイマチニブと類似治療薬による治癒の見込みがあり、永久的に継続治療を行う必要がないと考えられる患者がいることが示されたと、試験を行った研究者らは2010年11月号Lancet Oncology誌に掲載された記事を締めくくっている。

この試験はイマチニブ治療後に分子学的に判定された完全寛解(腫瘍所見なし)を2年間維持している患者で、その後投薬を中止した患者100人を対象に行われた。患者の69人の追跡期間の中央値は24カ月であり、このうちの約40%がイマチニブ治療後に最低1年間の無病生存期間を得た。再発患者については、ほぼすべての症例が投与中止後6カ月以内の再発であり、イマチニブ治療を再開すると奏効がみられたが、このうちのすべての患者が2度目の治療で完全寛解を得られたわけではない。

このような患者は「薬剤に対する感受性を保持し続けており…投与中止によってもイマチニブへの抵抗性は獲得されないため、安全性に関する問題が持ち上がることはない[と考えられる]」とDr. Francois-Xavier Mahon氏らは書いている。続けて著者らは、イマチニブ治療で寛解が維持される患者は多くないため、「イマチニブの投与を受けている患者のうち治療の中断が可能であると考えられる患者はごく少ない」としている。

研究者らは投与中止後も寛解状態を維持できる可能性のある患者を予測する因子をいくつか同定した。このなかには、男性、寛解持続期間4年以上、初回診断時の標準的な予後診断ツールで良好な予後が示されること、がある。

イマチニブと分子標的を同じくするダサチニブ(スプリセル)やニロチニブ(タシグナ)といったCMLの承認治療薬である第2世代チロシンキナーゼ阻害薬によってより優れた成果が生まれるかといったことも含め、この領域の研究は継続している。イマチニブの投与中止は「継続中の臨床試験の場でのみ」行われるべきであると著者らは警告している。

付随記事でウィーン大学医学部のDr. Peter Valent氏は「いま、薬剤によってもたらされるCMLの治癒への希望が生まれた」と同意しつつも、重要な問いに答えていくためにはさらに研究を行う必要があると続けている。「今後、新しいチロシンキナーゼ阻害薬やさまざまな薬剤の組み合わせによる治癒可能性は、臨床試験で明らかになっていくであろう」と彼は述べた。

ラソフォキシフェン、乳癌リスクを低下させる新選択肢となるか

タモキシフェンおよびラロキシフェンと同系統である試験薬が、両薬剤と同じかそれ以上に一部の女性において乳癌リスクの低下に有効である、という大規模な臨床試験の結果が発表された。この試験薬はラソフォキシフェンとよばれ、タモキシフェンおよびラロキシフェンと同様に骨および心臓の健康に重大な利益をもたらすとみられている。また、タモキシフェンおよびラロキシフェンにおいてまれにおこる重篤な副作用がないとみられている。同臨床試験の結果は、11月4日付けのJournal of the National Cancer Institute誌電子版に発表された。

発表されたのは、PEARL試験とよばれるランダム化臨床試験における知見で、同試験には骨粗しょう症をもつ閉経後女性8500人以上が参加し、プラセボまたは投与量の異なるラソフォキシフェン(0.25mgまたは0.5mg)のいずれかを毎日5年間摂取するように割り付けられた。3年間の追跡期間に基づく初期結果によると、プラセボを投与された女性と比べ、0.5mgのラソフォキシフェンを投与された女性において、エストロゲン受容体(ER)陽性の乳癌のリスクが減少した。

5年間の追跡期間に基づいて今回発表された結果によると、プラセボを投与された女性と比べ、0.5mgのラソフォキシフェンを投与された女性において、乳癌全体のリスクが79%、ER陽性浸潤性乳癌のリスクが83%低下した。

フレッドハッチンソンがん研究センターのDr. Andrea LaCroix氏らによる報告によると、0.25mgのラソフォキシフェンを投与された患者においてもリスクの低下は見られたが、統計上有意な減少では無かった。また、0.5mgのラソフォキシフェンを摂取した女性において、脊椎および非脊椎骨折、心血管イベント、脳卒中において統計上有意な減少がみられた。著しい副作用は、血栓がおこるリスクの上昇のみであった。

また、同臨床試験に参加している乳癌患者49人全てとプラセボ投与を受けている156人を含め、コホート内症例対照研究が実施された。臨床試験参加当時にエストラジオールホルモン値の高かった女性が、ラソフォキシフェンからより大きながん予防効果を得ていたとみられる。しかし、これは全乳癌発生率においてのみ統計的に有意であり、ER陽性乳癌においては有意でない。

「ラソフォキシフェンの長期的な有効性については、利益、不利益両方の転帰についてのより完全な情報が必要だ」と Geisinger医療センターのDr. Victor Vogel氏は付随論説で述べた。タモキシフェンとラロキシフェンによる乳癌リスク減少効果を確定づけたSTAR試験に参加した患者に比べ、今回の臨床試験に参加した女性の平均年齢が有意に低かったにも関わらず、乳癌全体のリスクも低かった(参加患者のゲイルモデルによる計算に基づく)。

それにも関わらず、Vogel氏は、PERAL試験において「劇的な」リスク低下がみられたことを前提として、今回の知見は「有望である」と述べる。ラソフォキシフェンはまだ試験薬の段階である。同試験薬を製造するファイザーは、5月、骨粗しょう症の治療薬として販売するためのFDA申請を撤回した。スポークスマンによると、同社は他社への売却を含めたいくつかのオプションを検討しているという。

間質中の一部細胞が、免疫システムの抗腫瘍効果を阻害

臓器の結合支持組織である間質中のある細胞集団が、免疫システムによる腫瘍増殖への攻撃・阻害を妨害している可能性があることがわかった。マウスにおいて、間質細胞にあるこの細胞集団を除去すると、比較的小さい腫瘍の増殖が止まったと、英国ケンブリッジ大学のDr. Douglas Fearon氏らが11月5日付Science誌に発表した

人の免疫システムがしばしば腫瘍微小環境内で抑制されているとみられる理由について、癌研究者は長いこと解明を試みてきた。Fearon氏らは、間質細胞が細胞表面に線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)と呼ばれるたんばく質を発現していることがひとつの要因である可能性を現在提唱している。ヒトにおいて結果を確認する必要があるが、患者の腫瘍免疫反応を刺激するように作られたワクチンが今までほとんど成功しなかった理由の説明がつく可能性がある。

FAPを発現する間質細胞による免疫システムの抑制について、「発生過程でプログラムされた組織保護機能である可能性があるが、腫瘍について考えた場合恐ろしく不適切な機能である」とFearon氏は述べた。

シカゴ大学のDr.Hans Schreiber氏およびDr.Donald Rowley氏は、今回の研究結果が、「腫瘍内の線維芽細胞を免疫化すれば、癌に対する免疫反応を顕すことができる」と示唆する他の研究結果を支持することにもつながると、付随論説において述べた。両氏によると、FAPを発現する細胞を除去すれば、自然発生する小さな腫瘍の増殖を阻害することになり、そうすれば臨床的に検知されないが、原発腫瘍を摘出する前にすでに転移している癌細胞を除去することができる可能性がある。

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窪田 美穂、内田 彩香 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院)、
原 文堅(乳腺科/四国がんセンター) 監修
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