乳房切除術後の放射線治療の質が生存に影響する | 海外がん医療情報リファレンス

乳房切除術後の放射線治療の質が生存に影響する

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

乳房切除術後の放射線治療の質が生存に影響する

Quality of Postmastectomy Radiation Therapy Affects Survival
(Posted: 01/17/2006) Journal of the National Cancer Instituteの1月4日号によると、医師が適切な放射線治療を行えば、乳癌の乳房切除術後の放射線治療は、再発リスクの高い女性の5年後、10年後両方の生存を改善する。


キーワード    乳癌、乳房切除、放射線治療

要約
乳癌に対する乳房切除後の放射線治療が適切に行われると、当該治療によって、再発のリスクが高い女性の5年時および10年時の生存率は共に増加します。 放射線治療で、放射線が少量すぎたり多量すぎた場合、または再発のリスクがあるすべての部位に治療が行えない場合は、生存率は増加しません。 本所見は、乳癌の無作為比較臨床試験の結果36例を組み合わせた分析によるものです。

出典   Journal of the National Cancer Institute, Jan. 4, 2006 (ジャーナル要旨参照)

     
(J Natl Cancer Inst. 2006 Jan 4;98(1):26-38)

背景
乳房全摘出術後の乳癌に対する放射線治療の利点とリスクは、多くの考察が行われています。 放射線治療を行うと、局所(最初に腫瘍が発生した部位付近の)再発のリスクを減らしますが、従来のほとんどの研究では、このような患者におけるそれに伴うべき生存率の増加は示されていません。 実際には、一部の研究で、放射線治療が後に健康へ及ぼす影響によって生存率の増加が相殺される場合があることが示唆されています。

しかしながら、このような従来の研究では、実施される放射線治療の質(適切と現時点で認められている線量および対象を医師が使用したか否か)は考慮に入れていません。 単に放射線治療の有無が検討されるのみの場合に、その利点が過小評価される可能性があります。

試験
研究者が複数の研究からデータを組み合わせる場合、これをメタアナリシスと呼びます。 今回本執筆者は、以前のメタアナリシスおよび放射線治療の系統的レビューに含まれる、すべての無作為比較試験について調査を行いました。

当該研究者によるメタアナリシスに含んだものは、手術可能な乳癌患者に対して乳房切除による初期治療を行い、乳房切除後に放射線治療を行った場合と行わない場合を比較することを研究目的としたもののみとしました。 本試験には、あるグループに化学療法を行い、比較対象グループには行わないというような、交絡因子はありません。

36件の試験が基準を満たし、それらの試験には13,000人の女性のデータが含まれています。 各試験は、3つのカテゴリに分類されました。

・最新の線量および対象ガイドラインに沿うように規定された、最適な放射線療法を行う
・不十分または過剰に放射線治療を行う
・治療対象組織の照射野が不十分である

当該試験の実施方法に伴い、36件の試験では、38件の一貫した放射線治療と放射線治療を行わない場合との比較が認められました。 25の比較例で最適な放射線治療を行い、7例では不十分または過剰に治療を行い、6例では組織照射野が不十分でした。

26件で5年生存の結果を、19件で10年生存の結果が得られ、本研究者は、乳房切除後に行われた放射線治療の質が生存に影響しているかどうかを調べる目的で分析を行いました。

オーストラリアのシドニー大学にあるNational Health and Medical Research Council Clinical Trials CentreのVal Gebski, M.Stat氏が本レポートの主執筆者です。

結果
本執筆者によるメタアナリシスでは、最適な放射線治療を受けている患者の5年生存率において、統計学的に有意な2.9%の明らかな増加が見られました。 この生存率の増加は、放射線治療後の10年生存率で6.4%に達しました。

一方で、不十分または過剰に放射線治療を受けたり、組織照射野を不十分にして治療を受けている患者には、生存率において顕著な増加は見られませんでした。

再発のリスクが高い女性(癌がリンパ節まで拡がっている患者)のみの解析では、適切な放射線治療後の10年生存率で5.2%の増加がありました。

不適切な無作為化体系を持つ3つの試験を除いた、全患者の2次的な分析では、適切な放射線治療後の生存率はより高い増加を示しました。 治療後5年生存率は、3.4%で、治療後10年生存率は7.1%でした。

どのカテゴリの放射線治療を受けているグループでも乳癌以外の癌による死亡の増加が認められますが、適切な治療が行われている場合には、治療による生存率の増加の方がより大きなものとなります。 本研究者は、再発や死亡で異なるリスクを持った仮想的な患者に当該所見を適用して、 適切な放射線治療を受けている高リスクの患者では、死亡のリスクにおいて11%の明らかな減少があり、低リスクの患者では、2.6%の減少があることを割り出しました。

制限事項
いくつかの試験においては5年生存および10年生存のデータが含まれておらず、執筆者が「術後の放射線治療を支持する偏った推定値を導く場合がある」と記述しています。

一方、同じ巻の論説において、Leonard Prosnitz医師およびLawrence Marks医師は、(生存を高める)化学療法やホルモン療法を含まない研究を試験対象にしたり、再発のリスクが低い患者を試験対象にしたことで、放射線治療による延命効果が過小評価される原因になった可能性があると記しています。

また、これらの生存率解析は10年の経過観察後は行われていないとも記しています。 治療後10年以上を経過しても、放射線治療によって遅発的に起こる心臓への影響の可能性があるため、放射線治療に関連した死亡率において過小評価となることもありえます。しかし、 現代の治療計画および治療機器では、治療中に心臓に対して投与される量は、試験が行われる時点で投与される量に比べて大幅に減らすことが可能です。

コメント
本研究には制限があるものの、「本執筆者たちによって、質の問題に取り組むことで価値ある貢献が行われました。また、適切でない放射線治療を受けたり放射線治療を受けなかった患者に比べて、適切な術後の放射線治療が行われた患者では、局所制御だけでなく生存率において、統計的に有意な増加をもたらすことを信憑性をもって立証しています」とProsnitz氏とMarks氏は言います。

「高リスクを持つ患者に対する有意な効果を示した文献はひとつもありませんが、文献を総じて考察した際に、利点があることがこの分析でわかります」、と国立癌研究所Center for Cancer Research(CCR)の放射線腫瘍医であるAnurag Singh, M.D氏は言います。. 「適切に行われる術後の放射線治療によって再発のリスクがある患者には適正にプラスとなります」。

(Yucca 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5がんに対する標的光免疫療法の進展
  6. 6「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  7. 7HER2陽性進行乳癌治療に対する2種類の新診療ガイド...
  8. 8ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  9. 9コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward