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BRCA欠損乳がんにおける免疫への反応予測

この対象患者の治療における免疫チェックポイント阻害薬の役割のより良い理解のために

BRCA1/2が変化している乳がんは比較的高い変異負荷を有していることから、免疫チェックポイント阻害薬が治療選択肢になり得ることが示唆されている。しかしながら、この既存の知見とは反対に、一連のがんゲノムアトラス(TCGA)のゲノムデータでは、高いゲノム不安定性は低い免疫原性(*抗原が抗体の産生や細胞性免疫を誘導する性質、免疫への反応のしやすさ) と関連していると、Clinical Cancer Research誌の2019年7月号で報告された。つまり免疫チェックポイント阻害薬はそのような腫瘍を有する患者にはあまり効果がないことを意味している。

米国ペンシルベニア州フィラデルフィアのペレルマン ペンシルベニア大学医学大学院の研究チームは、免疫細胞浸潤の程度は大きく異なることを研究背景で説明しており、この変動に寄与する分子特徴は依然として不明である。彼らは、ゲノムシグネチャーがBRCA1/2乳がんの免疫への反応を予測するかもしれないと仮定した。

この研究では、がんゲノムアトラスのゲノムデータを用いて、生殖細胞系列または体細胞系列のBRCA1/2変動を有する乳がん89サンプルおよびBRCA1/2変動のない乳がん770サンプルを比較した。また、全エクソームシークエンシング(WES)および免疫組織化学染色(IHC)をもちいて、ペンシルバニア大学の生殖細胞系列BRCA1/2変異を有する乳がん35サンプルについて研究した。

研究チームは、BRCA1/2変異陽性乳がんにおいて、相同組換え修復不全(HRD)スコアが、高変異/新生抗原量と相関しているにもかかわらず、発現に基づく免疫指標と負の相関があることを見出した。

さらに、対立遺伝子特異的なヘテロ接合性の喪失(LOH)の非存在、または生殖細胞系列および体細胞系列BRCA1/2変異のサブクローン性の非存在により、細胞溶解活性の上昇が予測された。

遺伝子セット解析は、NF-κBに収束する複数の自然免疫および適応免疫経路がこの高められた免疫原性に寄与し得ることを見出した。

ペンシルバニア大学の乳がんサンプルの免疫組織化学染色は、相同組換え修復不全低スコアまたはヘテロ接合性の喪失陰性がんにおいて、CD45陽性およびCD8陽性浸潤巣の増加、ならびにPD-L1発現の増加を示した。

相同組換え修復不全低スコアを示すトリプルネガティブがんは、ホルモン受容体陽性、相同組換え修復不全高スコアがんを上回るCD8陽性T細胞およびパーフォリン1発現を有していた。

著者らは、相同組換え修復不全スコアとホルモン受容体サブタイプは、BRCA1/2乳がんの免疫への反応の予測因子であり、最適な免疫療法戦略の設計に役立つ可能性があると結論付けた。この発見は、免疫チェックポイント阻害薬がBRCA1/2関連乳がんの治療に効果的かどうかを理解するのに役立つ可能性がある。

この研究は今日までのこのような解析で最大のものの1つであるが、著者らはさらに大きなサンプルサイズの試験を実施すれば、BRCA1/2変異関連乳がんの分子特徴が免疫応答にどのように関連しているかを理解するのに役立つだろうと示唆した。

References

Kraya AA, Maxwell KN, Wubbenhorst B, et al. Genomic Signatures Predict the Immunogenicity of BRCA-Deficient Breast Cancer. Clinical Cancer Research 2019; 25(14):4363-4374.

翻訳中野駿介

監修上野直人(乳がん・幹細胞移植・細胞療法/MDアンダーソンがんセンター)

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