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RET遺伝子由来の肺がん(NSCLC)および甲状腺がんに対するBLU-667

登録可能なARROW試験の最新情報

進行RET遺伝子融合陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者、ならびにRET遺伝子に変化を有する甲状腺髄様がん(MTC)および甲状腺乳頭がん(PTC)患者を対象としたBLU-667に関するARROW試験の最新のデータでは、強力で長期持続的な広範囲の抗腫瘍効果が認められ、治療への忍容性も良好であったことが示された。登録を目的として、現在もこの試験の用量拡大パートへの組入れが行われている。このデータは2019年度米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。

RET遺伝子融合は、NSCLCの最大2%に認められる、標的可能な発がん性ドライバーである。RET遺伝子の変化は、進行甲状腺髄様がんの約90%と甲状腺乳頭がんの約20%に認められる、標的可能な発がん性ドライバーである。しかし、これらの適応に対して承認された選択的RET阻害薬はいまだ存在しない。

BLU-667は、RET遺伝子の発がん性の変化(マルチキナーゼ阻害薬(MKI)への耐性をもたらすものを含む)を標的とする、研究中の、非常に強力かつ選択的なRET阻害薬である。2019年度ASCO年次総会で報告された2つの抄録において、研究者らは、RET遺伝子融合陽性NSCLC患者を対象としたBLU-667に関する登録可能なARROW試験と、RET遺伝子に変化を有する甲状腺がんに関するBLU-667の試験の拡大パートについての最新情報を提供した。

国際共同試験であるARROW試験は、切除不能な進行固形腫瘍を有する患者を対象とし、用量漸増パートであるDE(30~600mgを毎日、1回または2回にわけて投与)と、用量拡大パートであるDX(第2相試験推奨用量400mgを1日1回)から構成されている。RET遺伝子の変化の状態は、腫瘍への局所的な検査によって評価される。他のドライバー変異がある患者は除外される。ECOGパフォーマンスステータスが0~1の患者で、進行性腫瘍の患者、あるいは有害事象などにより標準治療を受けられない患者は含められ、それ以外は除外した。主要評価項目は、RECIST v1.1による奏効率(ORR)および安全性である。

進行RET遺伝子融合陽性NSCLC患者におけるBLU-667
RET遺伝子融合陽性NSCLC患者は、既存の治療ではこれまで有意な利益を得られていない。

著者らは、2018年12月19日時点で、進行RET遺伝子融合陽性NSCLC患者79人(用量漸増パート21人、用量拡大パート58人)にBLU-667を投与し、これらの患者における融合パートナーは、44人がKIF5B、16人がCCDC6、19人がその他または不明であったことを抄録で報告した。

前治療の平均数は2個(0~8個の範囲)であり、化学療法(76%)、免疫療法(41%)、およびマルチキナーゼ阻害薬(27%)が挙げられた。全体では、39%がベースライン時に脳転移を有していた。

測定可能な疾患を有し、疾患の経過観察評価を少なくとも1回受けた、奏効評価可能な患者57人の奏効率は56%であり、そのうち32人に部分奏効(PR)(9人の部分奏効は確認待ち)、20人に安定(SD)、5人に進行(PD)が認められた。全体では、奏効が認められた患者の91%(32人中29人)が現在も治療中であり、6人が6カ月以上の奏効持続期間を達成している。疾患コントロール率(DCR)は91%(57人中52人)であった。プラチナベースの化学療法歴を有し第2相推奨用量を投与された患者30人における奏効率は60%(部分奏効18人、7人が確認待ち)であった。奏効は、前治療にもRET融合遺伝子型にも関係なく得られた。頭蓋内活性が、脳転移の縮小とともに認められている。全体では、第2相推奨用量による治療を受けたNSCLC患者の80%が現在も治療中であり、3%のみが関連有害事象により治療を中止した。

NSCLC患者では、治療関連毒性は概してグレードが低く可逆的であり(28%にグレード3以上の事象が認められた)、AST上昇(22%)、高血圧(18%)、ALT上昇(17%)、便秘(17%)、疲労(15%)および好中球減少(15%)が挙げられた。

結果を発表した、米国マサチューセッツ州ボストンにあるマサチューセッツ総合病院のJustin F. Gainor氏は、BLU-667が、RET遺伝子融合陽性進行NSCLC患者において幅広く持続的な抗腫瘍活性を示したと結論づけた。奏効は、治療歴にも、RET遺伝子融合パートナーにも、中枢神経系障害にも関係なく認められた。BLU-667は、脳転移に対して活性を有する。

BLU-667は、プラチナベースの化学療法後に進行したRET遺伝子融合陽性NSCLCに対して、FDAのブレークスルーセラピーに指定されている。

このデータは、ARROW試験の未治療NSCLC患者への拡大と、RET遺伝子に変化を有する他の固形腫瘍グループの登録の継続を支持するものである。

RET遺伝子に変化を有する進行甲状腺がん患者におけるBLU-667
2018年12月19日時点で、RET遺伝子変異陽性甲状腺髄様がん患者60人(融合パートナーは、37人がM918T、8人がC634R/S/W、4人がV804M、および11人がその他または不明であった)とRET遺伝子融合陽性甲状腺乳頭がん患者5人(融合パートナーは、3人がNCOA4、2人がCCDC6であった)にBLU-667を投与した。このうち、37人が用量漸増パート、28人が用量拡大パートであった。全体では、58%にマルチキナーゼ阻害薬による治療歴があった。

奏効評価可能な甲状腺髄様がん患者49人の奏効率は47%であり、2人に完全奏効、21人に部分奏効(4人の部分奏効は確認待ち)、25人に安定、1人に進行が認められた。全体では、奏効が認められた患者の96%(23人中22人)が治療を継続しており、15人には6カ月以上にわたる奏効持続期間が認められている。評価可能な甲状腺乳頭がん患者4人のうち2人に部分奏効が認められ、登録されている5人すべての甲状腺乳頭がん患者が8~11カ月時点で治療を継続している。甲状腺髄様がんでは、マルチキナーゼ阻害薬耐性(カボザンチニブ/バンデタニブによる前治療の奏効率46%(26人中12人))にも、RET遺伝子型(V804M変異を有する患者3人中2人が部分奏効)にも関係なく奏効が得られた。甲状腺髄様がん患者における疾患コントロール率は98%であった。

RET遺伝子変異体の急速な血漿クリアランスと、CEAおよびカルシトニンの著しい低下が認められた。

甲状腺髄様がんおよび甲状腺乳頭がん患者における治療関連毒性は、概してグレードが低く可逆性であり(28%にグレード3の事象が認められ、グレード4または5の事象は認められず、中止の必要がある事象は認められなかった)、全血算の減少(23%)、AST上昇(17%)、ALT、血中クレアチニン、およびリンの上昇、高血圧、ならびに好中球減少(すべて15%)が挙げられる。

この結果は、米国オレゴン州ポートランドにあるオレゴン健康科学大学のMatthew H. Taylor氏が、試験医師らを代表し、ポスターディスカッションセッションにおいて発表したものである。

他のRET遺伝子融合陽性悪性腫瘍におけるBLU-667活性
ARROW試験の研究者らにより、BLU-667による治療を受けた転移膵がん患者2人中2人と肝内胆管がん患者にも部分奏効が認められたことが分かった。安全性プロファイルは同様である。

試験著者らは、参加している患者、試験医師、研究コーディネーター、およびBlueprint Medicines社に謝意を述べた。

参考文献

Gainor JF, Lee DH, Curigliano G, et al. Clinical activity and tolerability of BLU-667, a highly potent and selective RET inhibitor, in patients (pts) with advanced RET-fusion+ non-small cell lung cancer (NSCLC). J Clin Oncol 37, 2019 (suppl; abstr 9008).

Taylor MH, Gainor JF, Hu MI-N, et al. Activity and tolerability of BLU-667, a highly potent and selective RET inhibitor, in patients with advanced RET-altered thyroid cancers. J Clin Oncol 37, 2019 (suppl; abstr 6018).

翻訳串間貴絵

監修吉松由貴(呼吸器内科/飯塚病院)

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原文掲載日

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