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NTRL融合遺伝子陽性の全固形がんにエヌトレクチニブ、世界に先駆け日本で承認

ロシュ社は2019年6月18日、日本の厚生労働省がエヌトレクチニブ(販売名ロズリートレク)を、成人および小児の神経栄養因子受容体チロシンキナーゼ(NTRK)融合遺伝子陽性の進行再発固形がんの治療薬として承認したと発表した。エヌトレクチニブは、NTRK融合遺伝子を標的として日本で承認された、がん種を問わずに適応となる初めての薬剤である。NTRK融合遺伝子は膵臓、甲状腺、唾液腺、乳房、大腸、肺などのさまざまながんで確認されている。エヌトレクチニブは厚生労働省より先駆け審査や希少疾病用薬品の対象薬品に指定されていた。

エヌトレクチニブはさらに、局所進行または転移性のROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療薬として日本で承認申請中である。

今回のエヌトレクチニブの最初の承認は、中心となる第2相STARTRK-2試験、第1相STARTRK-1試験、第1相ALKA-372-001試験と、小児の第1/2相STARTRK-NG試験の結果に基づいている。これらの試験には15カ国の150を超える臨床試験施設から患者が登録された。これらの試験で評価されたがんには、乳がん、胆管がん、大腸がん、婦人科腫瘍、神経内分泌腫瘍、肺がん(NSCLC)、唾液腺がん、膵臓がん、肉腫、甲状腺がんが含まれていた。

STARTRK-2試験はNTRK1/2/3, ROS1 またはALK融合遺伝子陽性の固形がん患者をひっくるめて対象とした国際多施設共同、非盲検第2相試験である。主要評価項目は、奏効率(ORR)であり、副次的評価項目は奏効期間(DoR)である。他の副次的転帰指標は、効果発現までの期間、臨床的有効率、頭蓋内病変に対する効果、無増悪生存期間(PFS)、中枢神経系(CNS)病変についての無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などがある。この重要な試験で、エヌトレクチニブはNTRK融合遺伝子陽性患者の56.9%に奏効を示した。エヌトレクチニブによる奏功は、ベースライン時の中枢神経系転移の有無にかかわらず10種類にもわたる異なる固形がんに認められた。奏効期間の中央値は、10.4カ月であった。重要なことに、エヌトレクチニブは患者の50.0%において頭蓋内病変に効果をもたらした。

STARTRK-1試験は米国と韓国でNTRK1/2/3, ROS1 またはALK融合遺伝子を有する固形がん患者を対象に行われた、第1相多施設非盲検の用量漸増試験で、連日投与スケジュールでの用量が評価された。この試験では、標準的な用量漸増法を用いてエヌトレクチニブの安全性および忍容性が評価され、第2相試験において推奨される用量が決定された。

ALKA-372-001試験は、イタリアのTRKA/B/C, ROS1 または ALK 融合遺伝子を有する進行および転移性固形がん患者を対象として行われた第1相多施設オープンラベル用量漸増試験で、間欠的投与や連日投与スケジュールでの用量が評価された。

中枢神経系転移を伴う固形がんを有する成人患者に対するエヌトレクチニブの有効性を評価した、第2相STARTRK-2試験、第1相STARTRK-1試験、第1相ALKA-372-001試験の統合解析の当初の結果が、2019年ASCO年次総会で発表された。また、ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者に対する、臨床試験におけるエヌトレクチニブと実臨床におけるクリゾチニブの有効性を、薬剤投与中止までの期間と無増悪生存期間を評価項目として比較する”リアルワールドデータ”研究の結果も同年次総会で発表された。

STARTRK-NG試験は、TRK, ROS1 または ALK融合遺伝子の有無に関わりなく、根治的な初回治療の選択肢がない再発および難治性の頭蓋外固形がんまたは原発性の中枢神経系腫瘍の小児と青年期の患者に対し、エヌトレクチニブの安全性と有効性を評価する非盲検第1/2相用量漸増および拡大コホート試験である。今月初め、2019年ASCO年次総会でこの研究の結果が発表された。この研究には、生後4.9ヵ月から20歳までの小児から青年期の29人が登録された。有効性が評価された28人のうち、11人の患児にNTRK, ROS1 または ALK 融合遺伝子を有すさまざまながんが認められ、また別の1人の患児にはALK F1174L変異を有する神経芽細胞腫が認められた。NTRKやALK融合遺伝子陽性がんの2人に完全奏効が認められた。このうち1人はNTRK融合遺伝子陽性 の原発性中枢神経系腫瘍で、他の1人はALK 融合遺伝子陽性の炎症性筋繊維芽細胞腫瘍であった。他にも、ALK遺伝子変異(F1174L)陽性の神経芽細胞腫1人に完全奏効が認められた。部分奏効は、NTRK、ROS1およびALKのいずれの融合遺伝子にも、そして中枢神経系原発(4例)および頭蓋外原発(5例)を問わず、合計9例の患者に認められた。尚、このうち3例では、臨床データのカットオフ時点で、部分奏効の確定はされていなかった。奏効が確定された融合遺伝子陽性固形がんに対する治療の継続期間の中央値は10.51カ月、奏効までの期間の中央値は1.89カ月であった。エヌトレクチニブの安全性に関するプロファイルは以前の解析と一致していた。

エヌクレトチニブ治療において最もよく報告されている副作用には、便秘、味覚異常、下痢、めまい、疲労、浮腫、体重増加、貧血、血中クレアチニン上昇、呼吸困難、嘔気などがある。

NTRK遺伝子融合に対するバイオマーカー検査は、エヌトレクチニブを用いた治療に適した患者を特定する唯一の方法である。ロシュ社は、Foundation Medicine社と共同で、がんのプレシジョン医療や先進的診断法の開発に関する専門的知識を活用し、現在承認審査中のコンパニオン診断を用いてNTRK遺伝子融合をもつ患者の特定をする。

米国食品医薬品局(FDA)は最近、エヌトレクチニブに、NTRK融合遺伝子陽性の局所進行あるいは転移を有する小児および成人の固形がんで、前治療後に進行を認めた場合や適切な標準治療がない場合の初回治療として、優先審査を許可した。さらに転移性のROS1融合遺伝子陽性NSCLCの治療に対しても同様の許可を与えた。これらの新薬承認申請は、第2相STARTRK-2試験、第1相STARTRK-1試験、および第1相ALKA-372-001試験の統合解析の結果、さらにSTARTRK-NG試験のデータに基づいている。FDAは2019年8月18日までに承認が決定されるだろうと予測している。

エヌトレクチニブは欧州医薬品庁によるPriority Medicines(PRIME)にも指定されている。

翻訳白鳥理枝

監修田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)

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