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高齢や虚弱な胃食道がん患者に有効な低用量化学療法

ASCOの見解

「がん治療の一部の領域では、“少量がより好ましい”ということが一般的に言われ始めており、患者の生活の質の向上に成果をあげています。本試験は、胃食道がんの緩和的な化学療法を受けている高齢および虚弱(フレイル)な患者の生活の質と生存率の向上のバランスを取ることを目的としており、この患者集団に対してきわめて必要性の高いデータを提示しています。これらのデータは、患者に腫瘍の増大を遅らせるための見込みのある新しい選択肢を提供するために重要です」とASCO会長のMonica M. Bertagnolli医学博士(FACS、FASCO)は述べた。

英国の高齢や虚弱な進行胃食道がん患者514人を対象とした第III相GO2ランダム化試験において、オキサリプラチン(エロキサチン)とカペシタビン(ゼローダ)の最低試験用量が、腫瘍増大の遅延および副作用の最少化という点で高用量に匹敵することが判明した。本研究は、まもなくシカゴで開催される2019年ASCO年次総会で発表される予定である。

「これまでの胃がんおよび食道がんに対する緩和化学療法の試験には、虚弱あるいは高齢患者は含まれていませんでした。従って、これらの患者群における化学療法の有用性は不明でした」と試験の筆頭著者で英国エジンバラ大学腫瘍内科医のPeter S Hall博士は述べた。「低用量の化学療法が有効であると証明されており、腫瘍の増大を遅らせつつ、ある程度の生活の質の維持が可能であるという内容を知らされたうえで、患者が低用量の化学療法を行うか、まったく化学療法を行わないかを選択する際に、われわれの発見が患者の助けになることを望んでいます」。

毎年、米国では17,000人を超える人々が食道がんと診断される。その大部分は高齢または虚弱であり、3剤併用化学療法に耐えられない。食道がんは通常進行した段階で診断され、世界中でがんによる死亡の6番目に多い原因となっている。患者は男性および高齢者に多く見られ、診断時の年齢中央値は68歳である。米国における進行胃食道がんの5年相対生存率は5%である。

試験について

進行胃食道がんの高齢および虚弱の患者群を対象とした同様の第II相試験では、DNA複製を阻害するオキサリプラチンと腫瘍細胞分裂を阻害するカペシタビンとの併用が、カペシタビン単独より病勢コントロールにより有効であることが判明した。この併用療法は、オキサリプラチン、カペシタビン、およびエピルビシン(Ellence)を含む併用療法よりも有効であった。この3剤併用は毒性が強すぎて耐え難くもあった。エピルビシンはDNAおよびRNA合成を阻害し、その結果、がん細胞死をもたらす。

本試験は、高齢および虚弱な患者への使用を目的に、カペシタビンとオキサリプラチンの至適用量を見出だすために設計された。2剤併用療法のための最適な臨床上の有用性、忍容性、生活の質、および患者の満足度を判定するために、これらの要因やその他の要因を総合治療効用(Overall Treatment Utility : OTU)と呼ばれる評価ツールに組み入れた。

2014年から2017年の間に、51~96才までの患者を3つの用量レベルに無作為に割り付けた。レベルAでは、オキサリプラチン130mg/m2(体表面積)を21日毎に1回とカペシタビン625 mg/m2を連日で1日2回投与した。レベルBではレベルA用量の80%とし、レベルCはレベルA用量の60%とした。腎機能が低下した患者には、カペシタビンは推奨用量の75%量を投与した。9週間後、患者の総合治療効用を評価した。治療の継続は医師の判断に基づいて行った。

重要な知見

レベルCの投与を受けた患者は、レベルAやBと比較して薬に対する毒性反応が少なく、総合治療効用の結果も良好であった。レベルCは、年齢層が低めで虚弱度の低い患者においても最良の総合治療効用を生み出した。高用量レベルがより有用であった患者群はなかった。

いくつかの副次的評価項目についても評価した。全生存期間はすべての用量で同等であった。生存期間中央値はレベルAで7.5カ月、レベルBで6.7カ月、レベルCで7.6カ月であった。無増悪生存期間(腫瘍増大の徴候がみられない期間)についても3つのレベルで同様であることが明らかになった。無増悪生存期間中央値はレベルAの患者で4.9カ月、レベルBで4.1カ月、レベルCで4.3カ月であり、いずれも病勢悪化の徴候は見られなかった。

しばしば重篤となるグレード3以上の副作用は、レベルAおよびBでは56%に見られたが、レベルCではわずか37%であった。総合治療効用スコアについては、レベルAおよびB(それぞれ35%および36%)と比較し、レベルCで良好なスコア(43%)であった。

次の段階

GO2試験は、高齢および虚弱な患者の試験結果に総合治療効用を使用した英国で3番目の試験である。1番目は結腸直腸がん患者のFOCUS2試験で、2番目は胃食道がん患者の321GO試験であった。著者らによると、総合治療効用の使用は、高齢の進行がん患者集団における効果を評価する方法について新しいパラダイムを提示する可能性がある。

研究者らは、得られた知見の副次的解析に取り組んでいる。さらに、総合治療効用を構成する9つの要因のいずれの要因が、患者の健康に関して支配的であるか、あるいはより決定的であるかどうかを判断したいと考えている。

本研究はCancer Research UKから資金提供を受け、リーズ大学が後援した。

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翻訳橋本奈美

監修野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)

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