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AURORAプログラムで乳がんの分子解析が進行中

統合的な分子解析が転移性乳がんの病勢進行および治療抵抗性に関連する分子異常に光を当てる

5月2日から4日までドイツのベルリンで開催されたESMO乳がん2019でAURORAプログラムの結果が初めて発表された。

全欧州を対象としたこの大規模な分子スクリーニングプログラムは、乳がんの国際共同試験グループ(Breast International Group、BIG)から資金提供を受けており、転移性乳がんにおける包括的かつ長期的な分子レベルでの疾患の進行を描き出すことを目的としている。

Philippe Aftimos氏はベルギーのブリュッセルにあるジュール・ボルデ研究所(Institut Jules Bordet)の臨床試験開発責任者であり、AURORAプログラムの共同研究責任医師である。このプログラムには転移性乳がんの初回診断を受けた患者および一次治療を受けた患者が登録されている。

中央研究室では、リアルタイムのターゲット遺伝子シーケンシング(TGS)が原発腫瘍、転移腫瘍および全血から採取したDNAとベースラインの血漿から取り出した血中循環腫瘍DNA (ctDNA) を対象に行われた。

また、RNAシーケンシングとコピー数多型 (CNVs) 解析が数回に分けて行われた。

新鮮凍結した検体および逐次採取された血漿および血清を含む全ての試料は将来の研究のためにバイオバンクに保存される。

進行中の分析は、骨転移のみの患者を最大100人までとし、合計1000人の患者を対象とするよう設計されている。

病理学的データ、ベースラインの臨床検査値および経過観察データが収集され、病理検査で使用したスライド標本は高解像度でスキャンされる。

また、評価可能なデータを有する患者に対しては、ターゲット遺伝子シーケンシングのデータを記載した報告書に分子諮問委員会によるコメントが付け加えられ、治療担当医師に提供された。

分子解析結果

Aftimos医師は登録開始から2017年11月までの間に登録された381人の分析結果を発表した。

病理学的サブタイプの分布は、ホルモン受容体(HR)陽性・ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性が228例、トリプルネガティブ(TNBC)が71例、HER2陽性が51例であり、31例については不明であった。

合計292人(77%)の患者が転移がんの治療をまだ受けておらず、そのうち76人(20%)は診断時に既に転移が存在した。

ターゲット遺伝子シーケンシングおよびコピー数多型解析のデータによって、転移腫瘍におけるESR1、PTEN、 KAT6A、MYC、MDM4、AKT3などの分子異常の増加が特定された。

また、転移腫瘍ではRB1とARID1Aを含むコピー数の減少がより多く見られた。

RNAシーケンシングでは、原発腫瘍と転移腫瘍における分子サブタイプの変化が明らかになるとともに、転移腫瘍における免疫シグネチャーの発現の低下が示された。

ベースラインの血漿から採取した血中循環腫瘍DNAのターゲット遺伝子シーケンシングでは、治療の可能性があるにもかかわらず見逃しかねなかった分子異常を複数の患者で特定することができ、その補完的な役割が証明された。

研究者らは新版のESCAT(分子標的の臨床的有効性のためのESMOスケール)を適用し、今回の解析の対象となった転移性乳がん患者のうち、少なくとも一個のTier IまたはTier IIの分子異常を有する患者は52%(HER2増幅を除外した場合は42%)に上ることを発見した。

結論

AURORA プログラムの統合的分子解析(ターゲット遺伝子シーケンシング、RNAシーケンシング、コピー数多型解析)により、転移性乳がんにおいて増加し、病勢進行や治療抵抗性に関連する分子異常が明らかになった。

また、ESCATにおけるTier I と Tier IIの分子異常の発生率は、転移性乳がんの定期的な分子プロファイリングが有望であることを示している。

AURORAプログラムのバイオバンクと臨床データベースは、今なお不治の病であり全世界の女性の死因の第二位である転移性乳がんに関する今後の研究を後押しするであろう。

疾患のライフサイクルにおける分子変化が証明されているにもかかわらず、包括的かつ長期的な臨床分子データを提供する分子プロファイリング研究は現在でもほとんど実施されていない。

利益相反

本研究は乳がん研究基金 (BCRF)から主な資金提供を受けるとともに、 Fondation Cancer (ルクセンブルク)、National Lottery (ベルギー)、Fondation NIF、Family Webbおよび個人からの後援を受けて行われた。

参考文献
152O – Aftimos PG, Antunes De Melo e Oliveira AM, Hilbers F, et al.
First report of AURORA, the Breast International Group (BIG) molecular screening initiative for metastatic breast cancer (MBC) patients (pts).
ESMO Breast Cancer 2019, 2-4 May, Berlin, Germany.
Mateo J, Chakravarty D, Dienstmann R, et al.
A framework to rank genomic alterations as targets for cancer precision medicine: the ESMO Scale for Clinical Actionability of molecular Targets (ESCAT).
Annals of Oncology 2018; 29(9):1895–1902.

翻訳高橋多恵

監修下村明彦(乳腺・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院)

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原文掲載日

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