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肺がん高齢患者への免疫療法薬に関する新たな知見

ELCCプレスリリース

高齢患者は、進行非小細胞肺がん(NSCLC)の罹患率が最も高いにもかかわらずこれまで情報が不足していた。 ELCC2019にて報告が予定されている2つの研究(1)(2)から進行NSCLC高齢患者における免疫療法の有効性と安全性に関する新たな見解が得られることとなる。

免疫阻害経路を標的とし、身体が腫瘍細胞を認識・破壊する機能を高める薬剤を用いた免疫療法は、進行非小細胞肺がん患者の有効な治療選択肢として台頭してきている(3)。NSCLCと新規に診断を受けた人全てのうち約半数は高齢者となっている(4)。それにもかかわらず、臨床試験では高齢者を対象とすることがまれであるため、高齢者群における免疫療法の有効性と安全性に関し限られたエビデンスしか現在のところ得られない。また、高齢患者において、加齢に伴う免疫系の機能低下が免疫療法の有効性に影響を及ぼす可能性についての懸念がある。

高齢者において免疫療法を行った場合に全生存期間が短くなることが、実際の医療現場で行われた試験で示唆される

進行NSCLC患者に免疫療法を行う実際の医療現場のデータを基にした後ろ向き試験(リアルライフ試験)(1)から、高齢患者(70歳以上)の全生存期間は若年患者よりも短くなるものの、同様の毒性が認められることが示唆された。

研究チームは、Hospital Universitario Ramon y Cajal(マドリード、スペイン)で2014~2018年の間に免疫療法剤による治療を受けた進行NSCLC患者全例について後ろ向き評価を行った。この4年間に免疫療法剤による治療を受けた患者98人のうち、4人に1人以上が(27人、27.5%)が70歳以上であった。患者の50%でPD-L1の状態が明らかとなった。

全生存期間は、これらの70歳以上の高齢患者の方が70歳未満の患者よりも有意に短く(中央値で5.5カ月対13カ月、ハザード比[HR]=3.86、95%信頼区間、2.073~77.214、P<0.0001)、無増悪生存期間も高齢患者の方が若年患者よりも有意に短かった(1.8カ月対3.6カ月、HR 2.1、 95% CI 1.181-3.744、P=0.012)。

毒性については、高齢患者と若年患者との間の免疫関連有害事象に統計的有意差は認められなかった(P=0.535)。

免疫療法は、年齢にかかわらず群全体の98人において二次治療(患者の61%)あるいは三次治療あるいはそれ以降の治療(24.5%)として主に実施されたことが研究から示された。患者の半数以上(52%)がニボルマブによる治療を受けていた。

「本研究の結果から、免疫療法を受けると、高齢患者と若年患者で毒性に関する相違は認められないものの、生存転帰については高齢患者の方がより悪い結果となりえることが示唆されました」、と研究著者であるHospital Universitario Ramon y Cajal(マドリード、スペイン)のElena Corral de la Fuente氏およびArantzazu Barquin Garcia氏は述べた。本研究は被験者数の少ない後ろ向き観察分析であるため、制限があることを認めた。「高齢患者における免役療法の利用に関して残された問題に回答するには前向きランダム化臨床試験をさらに行い、実際の医療現場から得られたデータがさらに必要となります」、とElena Corral de la Fuente氏およびArantzazu Barquin Garcia氏は示唆した。

免疫療法を行った場合に全生存率が改善したことが統合解析により示される

2つ目の研究は、ランダム化試験3件から得たデータを統合した研究である(2)。この研究からは、ペムブロリズマブ(免疫療法剤)による治療を受けた進行NSCLC高齢患者は化学療法を受けた進行NSCLC高齢患者と比較した場合、全生存率が有意に向上していることが示された。

本研究では、3つの試験に参加した75歳以上の高齢患者264人の有効性および安全性に関する結果を75歳未満の参加者2,292人の結果と比較した。患者全例のPD-L1腫瘍比率スコア(PD-L1 TPS)が1%以上であり、本解析での高齢患者群の半数のスコアは50%以上であった(5)。

PD-L1腫瘍比率スコアが1%以上でペムブロリズマブによる治療を受けた高齢患者はPD-L1腫瘍比率スコアが1%以上で化学療法を受けた患者よりも全生存率が有意に向上したことが結果から示された(ハザード比[HR]=0.76、95%信頼区間[CI]=0.56~1.02)。PD-L1腫瘍スコアが50%超の患者でも、全生存率はペムブロリズマブを用いた場合の方が化学療法を用いた場合よりもさらに大きな改善が認められた。

高齢患者においてペムブロリズマブを用いた場合の1年全生存率は、若年患者の1年全生存率に匹敵するものであった(PD-L1 TPSが1%未満の患者では53.7%対54.9%、 PD-L1 TPSが50%超の場合は61.7%対61.7%)。

ペムブロリズマブによる治療を受けた場合の方が化学療法による治療を受けた場合よりも治療に関連する有害事象を示す高齢患者は少なかった(68%対94%)。また、高齢患者におけるグレード3~5の治療に関連する有害事象の発現頻度もペムブロリズマブによる治療を受けた場合の方が化学療法を受けた場合よりも少なかった(24%対61%)。高齢患者にペムブロリズマブを用いた治療を行った場合によく認められた治療に関連する有害事象は疲労(17.4%)、食欲減退(12.8%)およびそう痒(12.8%)であった。

高齢者群では免疫介在性の有害事象およびインフュージョンリアクション(投与時反応)はペムブロリズマブによる治療を受けた場合の方が化学療法を受けた場合よりも多く認められた(25%対7%)が、その発生率はペムブロリズマブによる治療を受けた若年患者と比べた場合差異は認められなかった(25%)。

「PD-L1陽性の腫瘍を有する進行NSCLC高齢患者において、ペムブロリズマブ単剤療法は化学療法よりも生存率が高くなります。また、安全性プロファイルもより好ましいものとなります」、と筆頭著者である九州がんセンター(福岡、日本)の野崎 要氏は述べた。また、「本研究のデータによりPD-L1を発現する進行NSCLC高齢患者(75歳以上)におけるペムブロリズマブ単剤療法の使用が裏付けられました」、と野崎氏は付け加えた。

ありうる研究の限界について、野崎氏は、本統合解析に組み入れた高齢患者は個々の研究で独自に設定された組入れ基準を満たしていたが、研究によっては比較的健康な高齢患者集団を選択していた可能性がある、と述べた。

本研究に関し、イタリア国立がん研究所(ミラノ、イタリア)の胸部腫瘍学課長であるMarina Garassino氏は、「複数の臨床試験を対象とした本統合解析から、高齢者において免疫療法を行った場合、若年患者と比較してその有効性および安全性に違いが認められなかったことが判明しました。しかしながら、この実際の医療現場から得たデータを基にした研究(リアルワールド研究)では、高齢患者と若年患者との間の有害事象発生率に差異は認められなかったものの、免疫療法の有効性は高齢患者のほうが低い可能性が示唆されました。これは警鐘を鳴らすものです」、とコメントした。本研究の限界に関しては、今回のリアルワールド研究で組み入れた患者の50%のみでPD-L1の発現状態が判明しており、データ収集が後ろ向きであったことをGarassino氏は認めている。「リアルワールド研究での収集データの対象設定はランダム化試験ほどの正確性はありません」、とGarassino氏は認めた。しかし、臨床試験では一般的に高齢患者が対象となることがまれな点についても付け加えた。

今後について、Garassino氏は、「NSCLC高齢患者における免役療法の有効性と安全性に関しより詳細な見解を得るには、前向き試験かリアルワールド研究を、より大規模に行う必要があります」、と結論付けた。

翻訳三浦恵子

監修稲尾崇(呼吸器内科/天理よろづ相談所病院)

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