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非小細胞肺がんに新たな遺伝子解析法ー進化するリキッドバイオプシー

[Annals of Oncology誌プレスリリース]

主要ながん雑誌であるAnnals of Oncology 誌(1)で3月20日発表された新たな研究によると、DNA分子の配列を決定する新たな方法を使用して、肺がん患者由来の血液試料中からがん遺伝物質の小断片を高精度で検出することが可能である。

非小細胞肺がん(NSCLC)患者における「リキッドバイオプシー」と呼ばれる解析の結果から、がんの発生や増殖を引き起こす、または治療に耐性をもらす遺伝子変異を特定可能であることがわかる。このため、リキッドバイオプシーを使用することで、医師が、患者の腫瘍の遺伝子的構築に基づいて最良の治療を選択する可能性が開かれた。

米国の研究者らは、「ウルトラディープ次世代シークエンシング」と呼ばれる、患者の血液試料を解析する方法を使用した。この方法では、肺がんに関与することが多い37種の遺伝子のいずれかから変異体を確実に最高精度で検出するために、セルフリーDNA(cfDNA)として知られる、腫瘍から血流中に放出されたDNA断片の読み取りを平均50,000回行う。

血中では、腫瘍由来のcfDNAの割合は、非がん細胞由来のcfDNAと比べて非常に小さい。したがって、腫瘍cfDNAからの微小なシグナルを検出し、これらのシグナルを、あらゆる非腫瘍由来のcfDNAによる大量のバックグラウンドノイズから区別できることが重要である。このため、患者の白血球についてもシークエンシングを実施して、骨髄由来の非がんシグナルの除去に使用する。この方法は「クローン性造血フィルタリング」と呼ばれる。ウルトラディープ次世代シークエンシング(2)からの情報は、価値のあるものとそうでないものを選別する機械学習を使用する、新たに開発されたコンピューターアルゴリズム(3)に取り込まれる。

ニューヨークのスローンケタリング記念がんセンター(MSK)、テキサスのMDアンダーソンがんセンター、ボストンのダナファーバーがん研究所の研究者らは、身体の他の部位に広がった(転移した)進行NSCLCと新たに診断された、または転移の再発を有する、127人の患者から血液試料を採取した。患者を以下の3群に分けた。1)がんの発生や増殖を引き起こす、または治療に耐性をもたらす遺伝子変異が、腫瘍組織試料から同定された(組織生検)患者91人、2)組織生検ではそのような変異が検出されなかった患者19人、および3)組織生検ができない、または解析には不適であった患者17人。

リキッドバイオプシーの性能を組織生検と公平に比較するために、リキッドバイオプシーの試験を「盲検化」して、組織生検によりすでに検出されている変異についての情報を与えられることなく行った。これにより、研究者らは、試験に適した組織のない患者において、リキッドバイオプシーが変異を正確に検出するということの有用性を推測することができた。

「組織生検でがんドライバー変異が発見されていた患者91人のうち、リキッドバイオプシーの解析によって68人が検出され、真陽性率は75%であったことが分かりました。組織生検で変異が検出されなかった患者19人にはリキッドバイオプシーでも変異は検出されず、このことは、偽陽性が認められず、真陰性率が100%であったことを意味しています」と、アクショナブルゲノムコンソーシアムを代理して研究を主導したスローンケタリング記念がんセンターの腫瘍内科医であるBob T. Li博士は語った。

同氏は、肺がんドライバー変異を検出する他のデジタル方式と比較しても、真陽性率75%は遜色のないものであると語った。

組織生検ができなかった第3群の患者17人のうち、cfDNA解析によって4人の患者にがんドライバー変異が検出された。このうち1人の患者については、その後、組織生検によって変異が確認されたが、他の3人については、その後組織生検は実施されなかった。残りの患者13人のうち、その後実施された組織生検によって2人に変異が確認されたが、他の患者11人については、その後生検は実施されなかった。

「われわれの結果は、肺がん治療において、リキッドバイオプシーが組織生検と相補的な役割を果たせることを示唆しています。リキッドバイオプシーの特異度は100%と高く、このことは偽陽性が認められなかったことを意味しています。そのため、特に組織生検が不適であるとき、または実施不可能であるときには、リキッドバイオプシーをまず実施して、治療の指針として使用することができます。注意すべきは、リキッドバイオプシーの真陽性率は75%と中程度であるため、リキッドバイオプシーが陰性の場合にも、依然として組織生検が必要であるということです」と、同氏は語った。

スローンケタリング記念がんセンターの先行研究では、組織生検が20日間かかるのに比べて、リキッドバイオプシーは約9日間で実施および解析が可能であることが示された。この時間差は、急速に衰弱するおそれのある重症患者にとって重要なものとなりうる。

組織生検およびリキッドバイオプシーによって検出された、がんの発生や増殖を引き起こす、または治療に耐性をもたらす変異としては、EGFR、KRAS、ALK、ROS1、BRAF、HER2、RET、およびMET遺伝子の変異が挙げられる。これらの変異に対しては既存の標的治療が存在し、新薬や併用薬も開発中である。

「リキッドバイオプシーは、患者のケアの改善に寄与する可能性のある有望な技術開発です。われわれはこの新たな試験に関してさらなる研究を実施しており、これらの最新の結果は、リキッドバイオプシーの領域において正しい方向への一歩となるものです」と、Li博士は結論づけた。

注釈
(1)“Ultra-deep next-generation sequencing of plasma cell-free DNA in patients with advanced lung cancers: results from the Actionable Genome Consortium”、B.T. Li氏ら、Annals of Oncology誌、doi: 10.1093/annonc/mdz046
(2)Illumina Inc社がウルトラディープ次世代シークエンシングを実施した。
(3)機械学習アルゴリズムは、米国カリフォルニアのGRAIL社と呼ばれる会社によって開発された。

Annals of Oncology誌は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)を代理してOxford Journalsから発行される月刊誌である。

どの報告書においても、Annals of Oncology誌を参照していることに留意されたい。

本研究はIllumina Inc社(サンフランシスコ、カリフォルニア)から支援を受け、試料採取およびシークエンシングを同社で実施した。著者らは、米国国立衛生研究所のComprehensive Cancer Center Core Grantsから支援を受けた。

翻訳串間 貴絵

監修廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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