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2010/11/30号「世界との連携」特別号◆科学が文化と出会うところ:保健外交のわざ

  • 2010年12月7日

    同号原文
    NCI Cancer Bulletin2010年11月30日「世界との連携」特別号(Volume 7 / Number 23)


    日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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    ◇◆◇ 解説 ◇◆◇
    科学が文化と出会うところ:保健外交のわざ

    癌への理解や癌患者の治療に関する研究、訓練、コミュニケーション、また癌発症のリスクが高い人々への情報提供という活動において国際的な連携がなされているが、このNCIキャンサーブレティン特別号では、NCIがそれをどのように支援しているのか、その一端をお伝えする。こうした連携はわれわれの成功には不可欠である。癌はきわめて大きな問題なので、できる限り包括的な方法で取り組めるようにあらゆるアイディアを結集させなくてはならない。

    これが、米国にとって臨床研究における国際的連携が何にもまして重要になっている理由の一つである。しかし、研究者や組織は、最優先であるデータの得られる協力関係に加え、驚くほどの、そして永続性のある相互利益を生み出すことができる自分たちのプロジェクトの他の一面について計画する時間を割くべきである。

    途上国では癌のもたらす負担が大きいことが多いが、その途上国の仲間たちと手を組む先進国の代表者たちは、大使の役割を果たしている。われわれが当たり前と考えている技術、制度、情報を得ようと途上国の協力者たちが苦闘しているかもしれないことを、大使としてのわれわれは認識する必要がある。

    もう一つ考えるべき重要な点は、われわれの連携のプロトコルである。米国国立衛生研究所(NIH)や他の米国連邦機関は、臨床研究に参加する被験者を保護するための政策や予防手段を堅持し、データの正確性やそのモニタリングに努めているが、それらの多くは、国境を越えて施行するのは困難かもしれない。われわれは、米国内と同様に、国外での研究においても「ベストプラクティス(最良の医療)」を奨励し、推進しなくてはならない。

    そして、外国の協力者たちとやりとりするとき、彼らの習慣、文化、国全体としての特徴、法律や規則を、地元の地域社会や地方、国のレベルで尊重しなくてはならない。あらゆるプロジェクトにより、彼らの研究の基盤や能力(たとえば生物検体の集積の場など)を強める機会が生み出される。さらに、われわれのやりとりは、プロとしての相互の尊敬の上になりたたねばならず、外国の協力者たちはチームの欠かせない一員である。このことは、計画、実施、データ解析、発表のなかで明らかにするべきである。

    つまり、こうした連携は科学に貢献すべきであるが、また国家間の関係を強化し両国の研究能力を増大させ、他の模範となる必要もある。

    そうした国際的連携はどのようなものだろうか。今月はじめ、米国−ラテンアメリカ癌研究ネットワーク(the United States–Latin America Cancer Research Network)は、新たな乳癌パイロットプロジェクトを開始して、その良い例を示した。

    この研究には、アルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコ、ウルグアイの20以上の病院と研究機関のスタッフが参加し、ラテンアメリカのステージIIまたはIIIの乳癌患者の分子プロファイルの分布を検討することを目的とする。試験担当医師らは、この患者たちの腫瘍の分子プロファイルとネオアジュバント(術前)療法の効果との相関を明らかにしようとしている。

    乳癌には、さまざまな遺伝子的または臨床的特徴をもつ多くの分類型があることはすでにわかっている。また、先進国の女性よりもラテンアメリカの女性に乳癌が少ないことも知られている。この研究の対象者の遺伝的特性、分子プロファイル、臨床効果から学ぶことによって、乳癌の分類法やさまざまな型に対する最適な治療法の決め方などについて理解が深まるだろう。

    このプロジェクトの保健外交は細部に宿っている。研究デザイン、臨床プロトコル、インフォームドコンセントおよび症例報告書の作成は、公衆衛生、国際業務、マネージメント、法律、経済という各分野から集まる委員会を通じて国際的パートナーと協力して行った。協力者たちはワークショップやオンラインセミナーに参加し、生物検体採取、病理学、バイオマーカー評価、治療効果の評価の標準手順の開発に寄与した。

    既にバイオバンク、ITシステムを持つ国も中にはあったが、ラテンアメリカの参加5カ国は、この研究で集める検体の保管のためのベストプラクティスと生物情報工学(バイオインフォマティクス)計画とシステムに基づいて自国内にこうしたインフラを確立することになる。

    要するに、米国や他の先進国で標準となりつつある最新のゲノム技術、応用技術を取り入れた臨床試験を将来、彼らが行えるように、われわれは彼らの研究のインフラを強化しているのである。

    インフラ改善は、国際研究協力における良い外交の一要素でしかない。(他の要素については補足記事を参照)最終目標は、われわれの協力者を同等のパートナーとし、彼らにはまだないかもしれない訓練や応用技術などの分野の発展を強化することだ。

    こうした協力を推進しながら、継続的に重きを置くべきは科学であり、癌患者とその医師たちの利益である。これがエリート主義とリーダーシップの違いであり、このリーダーシップこそが真のパートナーシップをつくる。

    —Dr.Jorge Gomez

    NCIラテンアメリカ癌プログラム開発室(Office of Latin American Cancer Program Development)責任者

    研究パートナーシップの強化法•相手国の文化、保健医療、研究ネットワークについて学び、パートナーの能力を知る。
    •組織としてのコミットメントを深めるために、協力者との個人的関係を培う。
    •文化的特性について意思疎通をはかる。言語は単なる技術的障壁にすぎない。本当の障壁は、相手国の文化、習慣を尊重する方法で意思疎通する方法にある。
    •現場での訓練、分かち合い、教育のあらゆる機会をとらえる。
    •施設、研究者、患者に今後も役立つ仕組みを残す。
    •短期の訪問を通じ、あらゆるレベルで研究者たちが交流できる機会をつくる。
    •相手国の研究者と協力してデータ管理、解析計画をつくる。
    •公表、論文著者、国内外の学会発表などについて、あらかじめ合意しておく。これによって、公平な土壌が確立され、相互の信頼と尊敬を築ける。
    •予算計画だけでなく、他の協力形態のための資金を計画する集まりへの出張も含める。
    •相手国の法律や規制に従う。米国[url=http://www.hhs.gov/ohrp/]被験者保護局[/url](Office of Human Research Protections)や研究先のIRB(倫理委員会)の方針や規則に従う。

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    鈴木 久美子 訳
    井上 進常(小児腫瘍科/首都医校教員) 監修

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