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免疫療法薬が胞巣状軟部肉腫に有効

  • 2019年2月7日
  • 発信元:米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる、ある種の免疫療法が希少がんである進行胞巣状軟部肉腫(ASPS)の患者に有用である可能性が、小規模な臨床試験結果で示された。

これまでにASPS患者を対象に試験した治療法で効果が見られたものはほとんどない。この例外がチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)と呼ばれる一群の薬剤であり、ソラフェニブ(ネクサバール)やセジラニブ(Recentin)が挙げられる。一部の患者ではこれらの薬剤を投与すると肉腫は縮小するが、ほとんどの肉腫で最終的には奏効しなくなる。

NCIが主導する最近の臨床試験で、チェックポイント阻害剤であるアテゾリズマブ(テセントリク)を投与すると腫瘍の縮小または増殖の阻止が認められた。

「転移ASPS患者に対して(抗がん)活性を有する全く新しい種類の薬剤が今存在する可能性にとても興奮しています」とミシガン大学の肉腫治療が専門で、本試験に関与していなかったScott Schuetze医師は述べた。

試験の結果は、結合組織腫瘍学会(CTOS)の2018年年次総会で11月16日に発表された。

ASPSは働き盛りの人を襲う

Schuetze医師は、次のように説明した。「ASPSは極めてまれながんであり、米国で毎年診断されている症例は100人未満です。この肉腫は、筋肉や脂肪などの軟部組織の細胞で発生し、他の大半のがん種とは違って、通常20代、30代および40代の若い男女を侵しています」。

「ASPSは働き盛りの人を襲う場合が多いです」といい、「ASPSは明らかに健康面だけでなく、人々のキャリアアップと家族計画にも大きな影響を及ぼします」と続けた。

「ASPS治療の中心は外科手術であり、時には放射線療法と併用します。しかし、ASPSは通常早期に身体の他の部位に転移します。転移ASPSは肺または脳に最も多く見られ、増殖は遅い(低悪性度)方ですが、最終的には症状が出始めます。転移ASPSは常に致命的です」と本試験の共同リーダーであり、NCIのがん治療・診断部門(DCTD)の創薬クリニック(Developmental Therapeutics Clinic)の責任者であるAlice Chen医師は述べた。

転移ASPS患者に化学療法は有効ではない。しかし、過去10年間に、TKIがこの転移肉腫の増殖を遅らす可能性が小規模な臨床試験で示されている。TKIの一つであるパゾパニブ(ヴォトリエント)が、軟部肉腫の治療に対して米国食品医薬品局に承認されている。

しかし、ASPSに対してパゾパニブや他のTKIの有効性は限定的であり、免疫療法など他の治療法の可能性が検討されている。

NCIが資金提供するPediatric Preclinical Testing Consortiumが行った最新のマウスの研究で、アテゾリズマブによりASPSの増殖が抑制される可能性が示唆された。

「免疫療法が奏効する肉腫は非常に少ないが、ASPSは奏効すると思われる肉腫の一つです」と本試験の共同リーダーであり、CTOS総会で試験結果を発表したGeraldine O’Sullivan Coyne医師は述べた。

予想以上に奏効する

マウスの研究に基づいて、2017年初頭にO’Sullivan Coyne医師とChen医師は、転移ASPSに対するアテゾリズマブの第2相臨床試験を開始した。彼らは、対象がまれな疾患であるため、NCIのExperimental Therapeutics Clinical Trials Network (ETCTN)を利用して試験を実施した。(下記参照)

全体として、転移ASPS患者24人が試験に登録された。最初の患者22人の初期の試験結果がCTOS総会で発表された。

患者のほとんどは、転移肉腫に対してTKIなどによる1次治療を受けていた。「アテゾリズマブによる効果は『予想以上に大きかった』」とO’Sullivan Coyne医師は述べた。患者19人にアテゾリズマブが十分な評価期間投与され、そのうち8人の腫瘍が縮小した(部分奏効)。他の患者9人では、腫瘍増殖が阻止された(病勢安定)。

「これらの効果の一部は、データ解析時点で、1年を超えて持続していました。アテゾリズマブが奏効している患者さんは、効果が続く限り投与を継続できます」とO’Sullivan Coyne医師は説明した。

アテゾリズマブに関連した重篤な副作用は、試験中に発現しなかった。1人の患者で試験薬が原因であるかもしれない骨折が認められた。

研究者らは、試験を拡大してより多くのASPS患者と他の二つの希少肉腫を有する患者を加えようと考えている。

研究の今後の方向性

将来的には、「これらの結果により、ASPS(の患者)を対象にした他の免疫療法による試験の検討が活発になるかもしれません。また、(まさに)このまれな肉腫に対してさらに多くの試験が行われると考えています」とO’Sullivan Coyne医師は述べた。彼女は、今回の研究でCTOS若手研究者賞を受賞した。

「CTOS総会では、数カ国の研究者がアテゾリズマブと他の治療法の併用やそれらの投与順序を変えるなどの試験を実施してASPSを治療することに興味を示しました」とChen医師は言及した。

Schuetze医師は、最初に投与するのがTKIか免疫療法かにより良好な転帰が得られるかどうかについて最良の投与順序を明らかにする試験が必要であることに同意した。

「どの投与順序が良いのか、学ぶことがたくさんあります」と付け加え、「しかし、ASPSは非常にまれな疾患なので、課題は(研究上の)疑問点に優先順位を付け、試験が患者さんのために互いに競合しないようにすることです」と結論付けた。

ETCTNは希少がんを対象とする臨床試験を推進する

ETCTNは、新しい治療法のニーズが満たされていない希少がんに対する試験薬の臨床試験を迅速に行う目的でNCIによって構築された。

ETCTNには、米国およびカナダの50を超える病院および治療センターの試験責任医師が参加している。「このことにより、希少がんの試験が急増しても対応できるだけでなく、『患者さんが治療を受ける場合に、自宅近くで可能になります』」とO’Sullivan Coyne医師は述べた。

胞巣状軟部肉腫におけるアテゾリズマブの治験を主導したNCIのDevelopmental Therapeutics Clinic(DTC)は、ETCTNのメンバーである。DTCは、腫瘍の中でも特に変わったものを標的として新薬および新薬の組み合わせを効率的に開発することに焦点を当てている。

 

翻訳金井健一

監修遠藤 誠(肉腫、骨軟部腫瘍/九州大学病院 整形外科)

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