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ビタミンDサプリメントは、がんの発生率を低下させない

がん予防に対するビタミンDの効果を検討したこれまでで最大規模のランダム化臨床試験において、サプリメントはがんの発生リスクを低下させなかった。

これまでの疫学研究の多くは、ビタミンDの血中濃度が高い患者はがんのリスクが低いことを示唆していたとNCIがん予防部門責任者であるBarry Kramer医師は述べた。

しかしながら、そのような研究は原因や効果を証明することなく、関連性のみを強調しているにすぎないと付け加えた。「これが直感や観察疫学研究に対し疑問を持つことが重要である理由であり、大規模試験に資金提供することで治療が、この場合は栄養補助食品ですが、最終的に本当にがん予防に役立つかどうかを示すことが可能となります」と同医師は続けた。

ビタミンDおよび オメガ3試験 (VITAL)と呼ばれる本試験の結果は、11月10日付のNew England Journal of Medicine (NEJM) 誌に発表された。

ビタミンDの効果の特定

ヒトでは皮膚が日光に曝されると、体内でビタミンDが生成される。このビタミンは脂肪の多い魚やキノコ類などの一部の食品の中に自然に存在し、牛乳やシリアルなどにも、添加されていることが多い。

ビタミンDが不足する人々には、骨の健康維持のためにサプリメントの摂取が推奨されている。「VITAL試験の主要な目的は、骨の健康に必要だと考えられている推奨栄養所要量を超える量を摂取することで、利益が得られるかどうかを確認することでした」と、本研究を主導したブリガムアンドウイメンズ病院およびハーバード大学医学部のJoAnn Manson医師は説明した。

観察研究では、ビタミンDのサプリメントを摂取している人々は、多くの疾患のリスクが低い可能性があるとことが示唆されている。しかし「ビタミンDを摂取している人は、ビタミン摂取していない人と重要な点が異なっている可能性があります」とKramer医師は説明した。彼らは高収入で、ほとんどが喫煙せず、肥満ではなく、健康保険に加入していることが多いのだという。これらの全てが心疾患や各種のがんなどの多くの慢性疾患のリスク低下に強く結びついている項目である。

何千人もの参加者を対象に行われた大規模ランダム化臨床試験では、参加者を治療を受ける群と受けない群にランダムに割り付けることによってこれらのバイアスを避けることが可能となる。

VITAL試験はビタミンDとオメガ3脂肪酸の両サプリメントの効果を研究できるようにデザインされた。この試験の主要評価項目(評価の対象になる主な結果)は、がんや心疾患の発生リスクに対するサプリメントの影響であった。さらにがんによる死亡などの、いくつかの副次的評価項目も含まれた。VITAL試験は主に米国国立癌研究所(NCI)および国立心肺血液研究所(NHLBI)から資金提供を受けている。

約26000人の、浸潤がんまたは心疾患の既往歴のない参加者が試験に登録した。研究に登録する条件は、男性患者は50歳以上、女性患者は55歳以上であった。参加者の約半分は女性で、人種は様々であり、20%はアフリカ系アメリカ人であった。

「参加者の人数が多く、黒人の割合が大きいためにこのコホート試験は米国民を代表する構成になりました」マサチューセッツ大学医学部およびメイン・メディカルセンターがん研究所のJohn Keaney医師とClifford Rosen医師は付随論説に記している。

参加者は4つのグループにランダムに割り付けられた。ビタミンDサプリメントとプラセボ摂取群、オメガ3脂肪酸サプリメントとプラセボ摂取群、ビタミンDとオメガ3脂肪酸の両方のサプリメントを摂取する群、および2種のプラセボ摂取群である。研究者らは参加者を5.3年間(中央値)追跡した。

試験開始時に約17000人の参加者が血液サンプルを提供し、1600人が試験1年目に2回目の血液サンプルを提供した。その後、別の5000人から追跡調査のための血液サンプルの提供を受けた。研究者らはこれらの血液サンプルを用いて各グループのビタミンDおよびオメガ3脂肪酸の血中濃度を測定した。

ビタミンDの血中濃度が高くても、より大きな利益とはならない

ビタミンDを摂取した参加者は、試験期間にビタミンDの血中濃度が平均で40%上昇した。しかしながら、この上昇にもかかわらず、群間の浸潤がんの発生率はほぼ同じレベルであった。プラセボ群の824人(6.3%)に対し、ビタミンD群では793人(6.1%)が試験期間中にがんと診断された。心臓血管系の疾患(心発作など)の発生率も両群で同様であった。

追跡期間で341人が、がんで死亡した。ビタミンDを摂取した参加者では154人(1.1%)、プラセボ群では187人(1.4%)であった。この差は有意なものではなかったが、群間のがんによる死亡の差は経時的に拡大していった。

研究者らは、がんによる死亡に有意な差が現れるかどうかを確認するために、更に2~5年間参加者の経過を観察する予定である。研究段階の試験では、ビタミンDの血中濃度が高いとがん細胞の侵襲性や転移の可能性が低下する可能性があることを示唆しているとManson医師は説明した。もしそうであれば、がんによる死亡リスクにおけるビタミンDの影響を評価するために長い追跡調査期間が必要になるであろう。他の研究では、ビタミンDサプリメントの通常の使用で、がんによる死亡リスクが低下する可能性を示唆していると同医師は述べた。

オメガ3脂肪酸の補助療法もがん発症のリスクまたはがんによる死亡を有意に低下することはなかった。その結果は、別の論文として NEJM誌に掲載された。

ビタミンDに対する高血中カルシウム濃度、オメガ3脂肪酸による出血、いずれかのサプリメントによる胃腸障害などの副作用のリスク増加はなかったことが、プラセボ群の発生率と比較して、決められた用量でサプリメントを摂取していた患者で確認された。

ビタミンD研究の今後の方向性

VITAL試験は「適切な試験デザイン」であったとKramer医師は述べた。「正しい答えを得ることが重要であるとき、つまり何十万人、あるいは何百万人に対して提言する可能性があるときには、自分の意見が強力なエビデンスに基づいていることを確信したいものです」。

一部のタイプのがんは他のがんよりもサプリメントの効果に、より感受性を示すかどうかなど、ビタミンDとがん予防に関する別の研究が進められている。

例えばNCIが依頼している臨床試験は、現在のところビタミンD、カルシウム、あるいは両者が、すでに1つあるいはそれ以上の前がん病変の形成を除去した人々に対して、新たな大腸腺がんの発生を予防できるかを調査している。VITAL試験ではさらに新たな大腸腺がんのリスクに対するサプリメントの効果も研究している。

Manson医師らは、今後も少なくとも2年以上にわたって、参加者を追跡調査する計画をたてており、長期のフォローアップをするための助成金を確保したいと述べた。同医師らはビタミンDサプリメントの効果に関する遺伝学的な潜在的影響も研究したいと考えている。

「私たちが本当に調べたいことは、ビタミンD代謝、ビタミンD受容体、結合たんぱく質に関連する遺伝子異変体、あるいは、サプリメント摂取に影響を及ぼし、最も有益であるものを特定するのに役立つであろう全く別のメカニズムに関連する遺伝子異変体があるかどうか、ということです」とManson医師は述べた。

VITAL試験の結果は、医師の推奨でビタミンDを摂取していた参加者に対し、それを止める理由を提示しているものではない、と同医師は続けた。

「もし骨の健康問題や吸収不良、あるいはビタミンDの生体利用効率を妨げる他の薬物治療などにより、臨床上ビタミンD摂取の必要があれば、もちろん摂取を続けてください」と締めくくった。

翻訳白鳥理枝

監修辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター)

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