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高線量放射線によって局所前立腺癌の再発が減少する

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高線量放射線によって局所前立腺癌の再発が減少する

Higher Radiation Dose Reduces Recurrence of Local Prostate Cancer(Posted: 10/03/2005) Journal of the American Medical Association2005年9月14日号によると、高線量の放射線治療を受けた早期ステージの前立腺癌患者は、標準線量の患者に比べ、5年後の再発は2分の1であった。


要約
早期前立腺癌で高線量放射線治療を受けた男性が5年以内に再発する可能性は、従来の線量の放射線治療を受けた男性の半分でした。この臨床試験は、再発リスクの低い患者の治療における高線量放射線治療の有益性を明らかにするために行われた初めての大規模臨床試験です。

出典  2005年9月14日Journal of the American Medical Association(米国医学会)より(ジャーナル要旨参照

背景
早期前立腺癌があり転移はみられないと診断された患者は、一般に、前立腺の切除(根治的前立腺切除術)を行うか、あるいは癌細胞を死滅させるための照射(放射線治療)を行うかを選択することになります。症例によっては、特に患者が高齢の場合は、前立腺癌の進行がきわめて遅いことが多いため経過観察が安全な第三の選択肢となることもあります。

しかし、たとえ治療後であっても、前立腺癌が再発する可能性はあります。高線量放射線治療によって再発の可能性は低下するけれども重症の胃や腸の障害、勃起や排尿の障害といった副作用のリスクが高くなることがいくつかの研究で示されています。このため、通常は再発リスクの高い患者に対してのみ高線量放射線治療が行われます。

進行前立腺癌に関する最近の研究では、「原体」照射法という新しい技術によって放射線科医は高線量の放射線を安全に照射することができ、これによって再発の可能性を減らすことができるかもしれないと示唆されています。原体照射法ではコンピュータを用いて標的領域の3D画像を作成するので、より多くの正常組織を放射線にさらされないようにすることが容易になります。標的をより正確にとらえることができるため、さらに高線量の放射線を安全に照射することもできます。

本稿記載の第3相臨床試験は、原体照射法を用いて従来の線量よりも高線量の放射線を照射した場合に、早期前立腺癌の制御が改善されるか否かを調べるために計画された試験です。

試験

1996年1月から1999年12月までの間に、Loma Linda University Medical Center (カリフォルニア)およびMassachusetts General Hospital (ボストン)の研究者らによって、病期Ⅱの前立腺癌があり前立腺外への転移がみられない患者393人が試験に登録されました。患者は全て陽子線(*)原体照射法による治療を受けました。このうち総線量70.2 Gy(従来の線量)を受けた患者は197人、総線量79.2 Gyを受けた患者は195人でした。

放射線照射期間中、他の治療法による癌治療は全く受けませんでした。原体照射法治療の後、研究者らは5.5年間(中央値)にわたって患者の前立腺特異抗原(PSA)を定期的に検査して追跡調査を行いました(前立腺癌の進行はきわめて遅いため、PSA値の上昇パターンを用いて「生化学的再発」を検出しました。この「生化学的再発」は15年以上経過した後の実際の再発を予測することができます)。局所再発を調べるために生体組織検査を受けた症例もありました。試験では患者の主治医に副作用の重症度および数を問い合わせました。

代表執筆者はハーバード大医学部 およびMassachusetts General HospitalのAnthony L. Zietman, M.D氏です。

結果
5年後、高線量治療群で再発しなかった患者は80.4%でした。これは従来線量群の61.4%と比較すると再発リスクが49%減少したことを意味します。しかし全生存率に差異が出る可能性があると考えるのは時期尚早かもしれません。

この臨床試験が計画された当初に定められた基準によると、試験に参加した男性のうち再発リスクの低い患者は227人でした。この低リスク下位群において生化学的に再発が検出されなかったのは、従来線量照射群が60.1%であったのに対して高線量照射群は80.5%でした。

再発リスクの高い患者は162人いました。この高リスク下位群において生化学的に再発が検出されなかったのは、低線量照射群が63%であったのに対して高線量照射群は79.5%でした。中等度の再発リスクと判定された残りの患者においても、高線量群の結果の方が良好でした。

全体的にみて試験参加者の副作用はほとんどが中等度でした。従来線量群では8人、高線量群では5人のみ、グレード3以上の副作用が認められました。前立腺全摘除術を受けた患者が1人あり、これ以外にも主としてPSAレベルが上昇したため担当医らは20人(従来線量群13人、高線量群7人)をアンドロゲン(*2)抑制療法の処方下に置きました。

コメント
この臨床試験は、再発リスクの程度に関わらず、高線量放射線治療が限局性前立腺癌のほとんどの患者に有益であることを示しています。米国国立癌研究所(NCI)癌研究センターのAnurag K. Singh, M.D氏によれば「臨床医は70Gyより高い線量を用いる方向に進んできています。しかし、今回の臨床試験が行われる以前は、再発リスクの低い患者について考えられる副作用のリスクを正当化するエビデンスがありませんでした。私たちはやっと、高線量放射線治療の方が良いと明言できます」と述べています。

ジョンズ・ホプキンス大学医学部のTheodore L. DeWeese, M.D.氏は同時に掲載された論説において、この試験結果で得た低リスク前立腺癌の男性における生化学的再発の減少は「将来の研究の重要な基礎」を提供するものであり、「注目に値する斬新かつ重要」な結果であると述べています。

制限事項
副作用は患者の主治医によって報告されたものであり、患者が実際に経験した副作用を正確に反映していない可能性があります。患者のクロスセクションによってさらに掘り下げた研究が行われています。

DeWeese氏 と Song氏は、この臨床試験は陽子線治療を光子照射などの他の原体照射技術と比較するよう計画された試験ではないと記していますが、「一般に生物学的効果は同等です。したがって、この知見の影響および潜在的な適用範囲は、(中略)現在陽子線治療を行っている米国の2つの施設にとどまりません」とも述べています。

*1 放射線治療の一種。特殊な装置を用いて発生させた陽子を用いて行います。陽子は、X線とは異なる高エネルギー放射線の一種です。

*2 男性の発達の促進と維持を司るホルモン

(Sionn 訳・平 栄(放射線腫瘍科) 監修)

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