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ゾレドロン酸は閉経前ホルモン+早期乳がんの無病生存期間を延長

[ESMO 2018プレスリリース]

ホルモン受容体陽性(HR +)早期乳がんの閉経前女性において、術後療法として骨吸収抑制剤ゾレドロン酸(ゾメタ)およびアロマターゼ阻害剤レトロゾールによるホルモン療法の併用は、タモキシフェンと比較して、無病生存期間を有意に延長することが、ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2018で報告された。これは、閉経前乳がんにおけるこの特定の組み合わせを評価する初めての試験であり(1)、卵巣機能抑制療法を受けている閉経前女性を対象としたゾレドロン酸およびアナストロゾールの過去の観察研究の追加結果である(2)。

これまで複数の試験で、閉経後女性のHR陽性乳がんにおいてゾレドロン酸+ホルモン療法による再発率および乳がん死亡率の低下が示されているが(3)、閉経前女性における有用性はそれほど明確には示されてなかった。 ゾレドロン酸は、骨代謝回転率を抑制するビスホスフォネートであり、 骨粗鬆症の治療、 および、骨に影響を及ぼす進行がんでの骨損傷やがんにおける高カルシウム血症の抑制を目的として承認されている(4)。エストラジオールがエストロゲン受容体に結合するのを阻害するタモキシフェンとは異なり、レトロゾールはエストラジオール値を大幅に抑制するアロマターゼ阻害剤であるが、これまで閉経前乳がん患者では評価されていなかった。

第3相HOBOE-2(Hormonal BOne Effects-2)試験には、無作為化の1年以内に最後の月経があったエストロゲン/プロゲステロン受容体陽性早期乳がん患者1,065人が参加した。患者らは性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)放出ホルモン作動薬トリプトレリン(4週間毎に3.75mg)を用いて5年間、55歳まで卵巣機能を抑制する治療を受け、そのうちの約2/3(63%)が無作為化前に化学療法を受けていた。

5年の計画治療期間、ホルモン療法としてタモキシフェン(20mg/日)を投与する群、レトロゾール(2.5mg/日)を投与する群、またはゾレドロン酸(6カ月毎に4mg 静注)+レトロゾール(2.5mg /日)併用療法(ZL)群に患者を無作為に割り付けた。 この試験は、独立モニタリング委員会がEarly Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)国際研究チームの2018年概要とのデータ共有を推奨したことから、追跡期間中央値65カ月経過後の2018年5月初めに中止した(5)。

ESMO 2018で報告された結果によれば、ゾレドロン酸+レトロゾール治療群において、乳がん再発、二次性の乳がんまたは乳がん以外のがんの発生、死亡が32例あり、5年間の無病生存率(DFS)は0.93であった。 タモキシフェン治療群においては58例、レトロゾール治療患者群おいては44例があり、5年DFS事象率はそれぞれ0.85および0.93であった(p = 0.008)。

無病生存率は、ゾレドロン酸+レトロゾール治療群でタモキシフェン治療群と比較して有意に改善し、5年間のDFSにおいて差の絶対値は8%であった。 乳がんの再発またはがん以外の原因による死亡のリスクに関して、ゾレドロン酸+レトロゾール治療群はタモキシフェン治療群と比較してほぼ半減した(ハザード比[HR] 0.52、95%信頼区間[CI] 0.34-0.80、p = 0.003)。

ゾレドロン酸+レトロゾール治療群のタモキシフェン治療群と比較したDFS改善は、タモキシフェン群でより有効な結果であったHER2過剰発現のグループを除くすべての患者サブグループにおいて認められた(相互作用p = 0.002)。

レトロゾールとタモキシフェンを比較した場合(HR 0.72、95%CI 0.48-1.07、p = 0.06)と、ゾレドロン酸+レトロゾールとレトロゾール単独を比較した場合(HR 0.70、95%CI 0.44-1.12、p = 0.22)では、DFSに統計学的有意差はなかった。

予想通り、副作用はゾレドロン酸+レトロゾール治療群でより多く認められ、グレード3~4の毒性を経験した患者が9%であったのに対して、タモキシフェン治療群では4%、レトロゾール治療群では7%であった。 ゾレドロン酸+レトロゾール群患者のおよそ5人に1人(17%)が、毒性または拒否のために5年経過前に治療を中止したのに対して、タモキシフェン治療群では7%およびレトロゾール治療群では7%であった。治験薬に関連する最も懸念された副作用として ゾレドロン酸+レトロゾール群における顎骨壊死4例があった。

「HOBOE-2試験は、アロマターゼ阻害剤+ビスホスフォネート+トリプトレリンの併用療法が閉経前HR陽性乳がん患者の予後を改善するという仮説を強く支持しています」とIstituto Nazionale Tumori(イタリア、ナポリ)の臨床試験ユニット部長である筆頭著者Francesco Perrone氏は語った。

「われわれは、レトロゾールがトリプトレリンとの併用で閉経前患者のエストラジオール値をタモキシフェンよりも大幅に抑制することをすでに示してきました。 エストラジオール値を抑制することは、内分泌依存性乳がんへの燃料をカットすることを意味します」と、Perrone氏は続けて述べた。

ゾレドロン酸については、「この薬物が、乳がんの微小転移が休眠状態にあるニッチな骨微小環境を潜在的に長年にわたって変化させるという仮説を立てています。 微小環境の変化は、単離されたがん細胞にとって致死的であり、遠隔転移の危険性を経時的に減少させる可能性があります。この2つのメカニズムは部分的に独立しているため、総じて相加的な利益をもたらすかもしれません」と、Perrone氏は述べた。

臨床に対する潜在的な影響を検討した結果、「われわれが見た有益性の大きさをより長い追跡期間で確認できれば、ゾレドロン酸+レトロゾール治療は閉経前HR陽性乳がんに対して非常に費用効果が高い治療法となるかもしれません」と、Perrone氏は示唆した。ゾレドロン酸とレトロゾールはどちらも非常に安価な薬なので、広く使用することができると、同氏は指摘した。

シェフィールド大学(英国)の腫瘍内科名誉教授であるRobert Coleman氏はESMOで発表された本研究へのコメントとして、次のように述べた。「この知見は、リンパ節転移、高悪性度または径の大きい腫瘍のいずれかにより再発のリスクが高い女性に対するアロマターゼ阻害剤およびビスホスフォネートによるより強力な治療の使用について、既存の情報に追加して裏付けています。両方の治療法はタモキシフェン以上の毒性をもたらすため、リスクベネフィットが容認できる可能性が高い、中リスクから高リスクの女性に限って使用することが最善です」。

Coleman氏は、本試験は結果において統計的に信頼できるイベント数に達しておらず、試験は症例数不足であると警告した。 「この試験は決定的ではありませんが、これら2つの治療アプローチに関する情報を追加しており、現在行われているEBCTCGメタアナリシスに寄与するでしょう」と同氏は付け加えた。いまや、他の分子標的療法薬の追加に焦点があてられていることから、アロマターゼ阻害剤およびビスホスフォネートを用いた臨床試験がこれ以上行われる可能性は低いと同氏は考えている。

参考文献

1. Abstract LBA14_PR ‘The HOBOE-2 multicenter randomised phase 3 trial in premenopausal patients with hormone-receptor positive early breast cancer comparing triptorelin plus either tamoxifen or letrozole or letrozole + zoledronic acid’ will be presented by Francesco Perrone during the Poster Discussion session on Saturday 20 October, 15:00 to 16:15 (CEST) in Room 15 – Hall A1. Annals of Oncology, Volume 29 Supplement 8 October 2018
2. Gnant M, Mlineritsch B, Schippinger W et al. Endocrine therapy plus zoledronic acid in premenopausal breast cancer. NEJM 2009; 360: 679-691
3. Early Breast Cancer Trialists’ Cooperative Group. Adjuvant bisphosphonate treatment in early breast cancer: meta-analyses of individual patient data from randomised trials. Lancet 2015; 386: 1353-1361
4. National Institute for Health and Care Excellence. 2018. Zoledronic acid.
5. Early Breast Cancer Trialists’ Cooperative Group.

LBA14_PR – The HOBOE-2 multicenter randomized phase 3 trial in premenopausal patients with hormone-receptor positive early breast cancer comparing triptorelin plus either tamoxifen or letrozole or letrozole + zoledronic acid

背景: 閉経前ホルモン受容体陽性乳がん患者に対する術後療法としてのアロマターゼ阻害剤+ゾレドロン酸の役割については議論がある。レトロゾールはこの臨床状況では検証されたことがなかった。

方法: 手術および術前化学療法または術後化学療法の後、閉経前患者(最後の月経が1年以内にあった人)を、トリプトレリン3.75mgを4週間毎に加え、タモキシフェン20mg/日(T群)、レトロゾール2.5mg /日 (L群)、またはゾレドロン酸4mg静注を6カ月毎+レトロゾール2.5mg /日(ZL群)のいずれかに1:1:1 の割合で無作為に割り付け、5年間投与した。主要評価項目は無病生存率(DFS)であり、イベントには局所再発または遠隔再発、二次性乳がんまたは乳がん以外の浸潤性がん、がんに拠らない死亡が含まれる。 解析はITT(intention-to-treatment:治療意図)の原理に基づいていた。 試験全体が統計的に有意であれば、ペアワイズ比較(Bonferroni-Holm補正あり)が可能であった。独立データモニタリング委員会(IDMC)は、事象数に関わらず、最終解析を追跡期間中央値5年経過後に行うことを提案した。

結果:2004年3月から2015年8月まで、イタリアの16施設で患者1,065人を無作為に割り付けた(T:354、L:356、ZL:355)。 年齢中央値は45歳であった。 68%がpT1腫瘍を有していた。 55%はリンパ節転移陰性であった。 63%が化学療法の治療歴があった。 追跡期間中央値65カ月経過後、DFS事象がそれぞれT群で58例、L群で44例、およびZL群で32例あり、5年無病生存率はそれぞれ0.85、0.93および0.93であった(P = 0.008)。ペアワイズ比較はZL群対T群(HR 0.52、95% CI 0.34-0.80、P=0.003)では統計的有意差があったが、L群対T群(HR 0.72、95% CI 0.48-1.07、P=0.06)、およびZL群対L群(HR 0.70、95% CI 0.44-1.12、P=0.22)では統計的有意差がなかった。ZL群は、HER2陽性症例(相互作用P = 0.002)を除けば、すべてのサブグループにおいてT群よりも高い効果がみとめられた。 T群の患者26人(7%)、L群の患者26人(7%)、ZL群の患者59人(17%)は、毒性または拒否のため5年経過前に予定の治療を中止した。 グレード3~4の副作用は、T群の4%、L群の7%、およびZL群の9%で報告された。 ZL群においては顎骨壊死が4例あった。

結論: HOBOE試験は、閉経前の早期乳がん患者において、DFSに関してZL +トリプトレリンの組み合わせが、T +トリプトレリンより有効であることを示している。

臨床試験ID:NCT00412022

本試験に責任を有する法人:Istituto Nazionale per lo Studio e la Cura dei Tumori IRCCS Fondazione G. Pascale(イタリア、ナポリ)

資金援助:ノバルティス社が治験薬を提供した。

詳細は、原文ページ参照のこと

翻訳有田香名美

監修尾崎由記範(臨床腫瘍科/虎の門病院)

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原文掲載日

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