[ 記事 ]

HPV陽性中咽頭がん患者はシスプラチン+放射線療法を受けるべき

[ESMO 2018プレスリリース]

ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性咽喉がん患者はセツキシマブと放射線治療を併用するよりも化学放射線療法を受けるべきである。これは、2018年度欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次大会で報告された最新の研究による(1)。

「多くの患者は、セツキシマブ+放射線療法併用は化学療法+放射線療法併用と同じくらい効果があり、副作用が少ないという想定のもとに、セツキシマブ+放射線療法併用を受けています。しかし、この2つの治療法を直接比較したことはありませんでした」とHisham Mehanna教授(英国バーミンガム大学がん・ゲノム科学研究所頭頸部手術部長)は述べた。

咽喉がんは欧米諸国で急速に多くなっている。例えば英国では、1970年から1995年では発生率に変化がなかったが、1996年から2006年では2倍になり、2006年から2010年にはさらにその2倍になった。その上昇は性器感染型HPVが原因である。大部分の咽喉がんは、以前は喫煙やアルコールが原因で、65~70歳の労働階級の男性が罹患していた。今日では、HPVが主因であり、患者の多くは55歳前後、中産階級、働き盛りで若年層の子供の親である。

HPV陽性咽喉がんはシスプラチン+放射線療法併用に対する反応が良好であり、患者は30~40年生存するが、この治療は口内乾燥、嚥下困難、味覚消失という生涯にわたる副作用を伴う。腎機能低下または加齢などのため化学療法に対し忍容性がないとみられる患者たちには、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤であるセツキシマブ投与と放射線療法を合わせて行う。

本試験では、英国、アイルランド、オランダ各国内の32施設から登録されたHPV陽性咽喉がん患者334人を対象として、2つの治療法に伴う副作用および生存率を比較した。患者は、放射線療法とシスプラチンまたはセツキシマブいずれかとの併用群に、無作為に割り付けられた。患者10人中8人は男性であり、平均年齢は57歳であった。

2年間の試験の間に、セツキシマブ併用群では29人が再発、20人が死亡したのに対し、シスプラチン併用群では10人が再発、6人が死亡した。シスプラチン併用群患者はセツキシマブ併用群患者に比べ、2年全生存率が有意に高かった(89.4%対97.5%)[p=0.001、ハザード比(HR)4.99、95%信頼区間(CI)1.70–14.67]。がんが2年間で再発した割合が、セツキシマブ併用群はシスプラチン併用群と比べ3倍以上で、再発率はセツキシマブ併用群16.1%に対し、シスプラチン併用群6.0%であった(p=0.0007、HR 3.39、95%CI 1.61–7.19)。

副作用について、口内乾燥や嚥下困難など急性または後で重症化する(グレード3~5)毒性事象の総数は、両群で差がなかった。腎障害や血液学的疾患など重篤な有害事象は、シスプラチン併用群の方がセツキシマブ併用群より有意に多かった。

Mehanna医師は、次のように述べた。「セツキシマブは、シスプラチンと比べて毒性が低いわけではなく、全生存率が低く、がん再発率が高いという結果でした。これには驚きました。というのも、われわれはセツキシマブがシスプラチンと比べて生存率が同等で毒性が低いと考えていたからです。HPV陽性の咽喉がん患者には、可能であればセツキシマブでなくシスプラチンを投与すべきです」。

スロバキアにあるトレンチーン大学病院の内科放射線腫瘍科部長Branislav Bystricky博士は、ESMOで本試験について次のように述べた。「セツキシマブは副作用が少ないため、HPV陽性咽頭がん患者のうち、数十年生存の見込みがある若年患者および化学療法に対する忍容性が低い患者に対する良い選択肢であると考えられていました。本試験は、HPV陽性咽喉がん患者にはシスプラチン+放射線療法併用が最良の選択肢であることを示しました。この併用療法は、「2倍」有益です。なぜなら、セツキシマブ+放射線療法併用と比べて生存に関する効果が高く、全グレードの毒性が悪化しません」。

Bystricky医師は、本試験の結果が、今月発表予定の米国国立がん研究所RTOG1016試験の中間結果と一致していると述べた(2)。Bystricky医師は次のように言う。「これらの患者にセツキシマブを投与すべきではないことが2件の研究で示されました。今後の試験では、KRAS遺伝子変異に対する遺伝子型決定によりセツキシマブ+放射線療法併用で便益を得られる患者を特定できるかどうかを調べるべきです」。

参考文献
1. Abstract LBA9_PR ‘Cetuximab versus cisplatin in patients with HPV-positive, low risk oropharyngeal cancer, receiving radical radiotherapy‘ will be presented by Hisham Mehanna during the Presidential Symposium 3 on Monday, 22 October, 16:30 to 18:00 (CEST) in Room 18 – Hall A2.
Annals of Oncology, Volume 29 Supplement 8 October 2018
2. Full results presented at the plenary session at the American Society for Radiation Oncology (ASTRO) annual meeting on 22 October

LBA9_PR – Cetuximab versus cisplatin in patients with HPV-positive, low risk oropharyngeal cancer, receiving radical radiotherapy

背景:ヒトパピローマウイルス陽性中咽頭がん(HPV+OPSCC)の発生率が急速に上昇している。若年患者が罹患する特異的疾患で、転帰は非常に良好である。しかしながら、標準療法(シスプラチン+放射線療法)は毒性が有意に高く、これらの若年患者は数十年間耐えなければならない。セツキシマブは上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤であり、標準療法(シスプラチン療法)の毒性を軽減する、治療の段階的縮小として提案されてきているが、ランダム化試験は実施されていなかった。

方法:国際多施設共同ランダム化比較対照試験であり、低リスクHPV+OPSCC患者を対象とした本試験では、放射線療法(70 Gy/35f)と、シスプラチン(100 mg/m2を3回分)またはセツキシマブ(負荷投与量400 mg/m2に続き、毎週250 mg/m2を投与)のいずれかを併用投与する群に無作為に割り付けた。評価項目は、重度(グレード3~5)毒性事象の総数、全生存率および生活の質であった。

結果:2012年11月~2016年10月の間に、英国、アイルランドおよびオランダの3カ国にある32カ所の頭頸部治療センターで患者334人(シスプラチン併用群166人およびセツキシマブ併用群168人)を登録した。無作為化した患者のうち80%が男性で、平均年齢は57歳であった。両群はバランスが取れていた。シスプラチン併用群では10人が再発し6人が死亡したのに対し、セツキシマブ併用群では29人が再発し20人が死亡した。シスプラチン併用群とセツキシマブ併用群では2年全生存率で有意な差異があり(97.5%対89.4%、p=0.001、HR=4.99、95%CI:1.70-14.67)、2年再発率でも有意な差異があった(6.0%対16.1%、p=0.0007、HR=3.39、95%CI:1.61-7.19)。
シスプラチン併用群とセツキシマブ併用群で報告された事象数の平均に差がなく(患者一人あたり5.37件対5.45件)、患者一人あたりの急性または後発の重症(グレード3~5)毒性事象または全グレードの毒性(患者一人あたり29.15件対 30.05件)にも差がなかった。
シスプラチン併用群では、セツキシマブ併用群と比較して重篤な有害事象が有意に多くみられた(162件対95件)。

結論:シスプラチンの代わりにセツキシマブを使用すると、がん抑制において著しい不利益がみられ、毒性の低減に関する便益は認められなかった。シスプラチン+放射線療法併用は、依然として該当患者に対する標準療法である。

臨床試験ID:ISRCTN33522080

本試験の法的責任を有する法人:ウォーリック大学

助成:キャンサーリサーチU.K.

詳細は、原文参照のこと。

翻訳太田奈津美

監修小宮武文(腫瘍内科/トゥーレーン大学)

原文を見る

原文掲載日

【免責事項】

当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。
翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

関連記事