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免疫療法薬アテゾリズマブがトリネガ乳がんの生存を改善

免疫療法により、転移のあるトリプルネガティブ乳がん患者の生存期間が改善したことがIMpassion130試験の最新結果で示された。この結果は、ミュンヘンのESMO 2018学術集会で報告された。

筆頭著者でBarts Health NHS Trustの聖バーソロミュー病院(ロンドン)乳がんセンターの臨床部長であり、ロンドン大学クィーンメアリーのBarts がん研究所のCentre for Experimental Cancer Medicine代表でもあるPeter Schmid教授は次のように語った。「この結果は、トリプルネガティブ乳がんの治療法を変えることでしょう。パクリタキセルとアテゾリズマブの併用は、転移したトリプルネガティブ乳がんの生存期間を改善させた初の分子標的治療です。また、このがんの転帰を改善した初の免疫療法でもあります。生存期間の改善がみられた患者のほとんどはPD-L1陽性患者でした」。

トリプルネガティブ乳がんは最も悪性度の高い乳がんである。比較的まれで、若年女性に多い。転移が生じた場合の生存期間中央値は12~15カ月。トリプルネガティブ乳がんにはホルモンのエストロゲンやたんぱく質HER2の受容体がなく、ホルモン療法やHER2を標的にした薬剤で治療することができない。主な薬物治療は化学療法で、ほとんどの患者は数カ月以内に化学療法に対する耐性を示す。

第3相IMpassion130試験では、転移のあるトリプルネガティブ乳がん患者で転移に対する治療を受けたことがない902人が登録された。患者は、標準化学療法(パクリタキセル)とアテゾリズマブ(PD-L1と呼ばれるタンパク質を標的とする抗体)の併用群、または標準化学療法とプラセボの併用群に無作為に割り付けられた。本試験の2つの主要評価項目は、アテゾリズマブ併用による、全患者とPD-L1陽性患者のがん増殖までの期間(無増悪生存期間)を遅らせ、生存期間(全生存期間)を延長させるかどうかであった。追跡期間中央値は12.9カ月であった。

アテゾリズマブ併用群では、がんの増悪や死亡のリスクが患者全体で20%減少し、PD-L1陽性患者のサブグループでは38%減少した。試験対象の患者全体での無増悪生存期間中央値は、併用群で7.2カ月、化学療法単独で5.5カ月(ハザード比(HR)0.80、p=0.0025)であった。PD-L1陽性患者サブグループでの無増悪生存期間中央値は、併用群で7.5カ月、化学療法単独で5.0カ月(HR 0.62, p<0.0001)であった。

分析時に患者の半数以上が生存していたため、全生存期間については中間解析となった。PD-L1陽性患者では、全生存期間中央値は併用群で25.0カ月、標準化学療法単独で15.5カ月(HR 0.62)であった。患者全体では、併用群で21.3カ月、化学療法単独で17.6カ月で、統計的に差はなかったが、これは追跡期間が短かったためと考えられる。

併用群では、化学療法単独と比較して治療効果を示す患者の割合が高く、奏効率は全患者では56%対46%、PD-L1陽性患者では59%対43%であった。

Schmid医師は、併用療法は忍容性が高いと話す。併用群で悪心と咳がわずかに増加したものの、副作用の多くは化学療法によるもので、両方の治療群に同様の割合で発生した。免疫療法に関連する副作用はまれで、最も多いのは甲状腺機能低下症であり、併用群で17.3%、化学療法単独で4.3%の患者に発生した。

「PD-L1陽性患者では、標準化学療法に免疫療法を上乗せすることで生存期間が10カ月延長した。この併用治療は、転移のあるトリプルネガティブ乳がん患者にとって新しい治療の選択肢となるはずです」とSchmid医師は話した。

アムステルダムのオランダがん研究所の腫瘍内科医であるMarleen Kok医師は、この結果へのコメントとして次のように話す。「この試験は、標準的な化学療法に免疫療法を追加することで、転移のあるトリプルネガティブ、特にPD-L1陽性例での無増悪生存期間を延長し、またPD-L1陽性サブグループでの全生存期間を延長するというエビデンスを示した初のランダム化第3相試験です。無増悪生存期間という観点からはその延長は約3カ月と比較的短いものでしたが、PD-L1陽性サブグループでの全生存期間が10カ月であったことは特筆すべきことです。腫瘍の約40%がPD-L1陽性でした。 IMpassion 130試験のデータは、おそらく転移のあるトリプルネガティブ乳がん患者の治療を変えることになるでしょう」。

さらにKok医師は、抗PD-(L)1治療との併用に最適な化学療法が何であるかは未だ明確ではなく、転移のある乳がんのみならず、早期乳がん患者における化学療法と抗PD-(L)1併用の効果を評価するために数多くの試験が進行中であると述べた。「抗PD-(L)1がどの化学療法との組み合わせで最も有効であるかの疑問に答えを導き出す助けになるはずです。また、この治療で最も利益を受けると考えられる患者を選別するバイオマーカーを決定するには、より多くの試験を実施する必要があります」と述べた。

編集者への注記

レポートには、学会の正式名称:ESMO 2018 Congressを必ず使用のこと。

学会公式ハッシュタグ: #ESMO18

References
1.Abstract LBA1_PR ‘IMpassion130: Results from a global, randomised, double-blind, phase 3 study of atezolizumab (atezo) + nab-paclitaxel (nab-P) vs placebo + nab-P in treatment-naive, locally advanced or metastatic triple-negative breast cancer (mTNBC)‘ will be presented by Peter Schmid during Presidential Symposium 1 on Saturday, 20 October, 16:30 to 18:20 (CEST) in Hall A2 – Room 18. Annals of Oncology, Volume 29 Supplement 8 October 2018

翻訳白石里香

監修田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学第2外科)

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原文掲載日

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